投稿者: webshufu

  • 終身医療保険の「保険料は一生上がりません」はメリットではない。若い間は保険料が割高。

    連載:医療保険は不要 第26回です。

    前回は、定年後に医療保険は必要? という話をしました。

    今回は、終身医療保険のCMで有名な「保険料は一生上がりません」にケチをつける回となります。

    2016-07-28-04
    終身医療保険は老後の保険料を先払いする医療保険

    「保険料は一生上がりません」は、素晴らしくもなんともないものなんですよね。

    老後に支払うべき高い保険料を、若いうちに前払いしているだけです。

    将来の保険料を前払いすることによるデメリットも大きいです。

    (さらに…)
  • 定年後や老後に備えた終身医療保険加入はオススメしません

    連載:医療保険は不要 第25回です。

    前回は、母子家庭(シングルマザー)に医療保険は必要? という話でした。

    今回は、老後の医療保険の必要性を考えます。

    老後に平均的な年金収入を得ている場合、医療費の自己負担額はかなり低く済みます。

    老後の医療費に備えて若いうちから終身医療保険に入る方もいますが、それって必要でしょうか?

    私としては、終身医療保険はあまりおススメしません。

    (さらに…)
  • 母子家庭(シングルマザー)に医療保険は不要!ひとり親への公的支援は充実している

    連載:医療保険は不要? 第24回です。

    前回は、 子供に医療保険は不要 という話でした。

    今回は、母子家庭(シングルマザー世帯)の医療保険について考えます。

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    ひとり親は「もし私が病気になったら、この子はどうやって生活すれば…」という悩みを持つものです。

    ついつい医療保険に入りたくなるかも知れませんが、医療保険に入るべきかどうかは慎重に判断してください。

    「不要な保険に敢えて入る意義」を考えることが大事

    連載:医療保険は不要 の冒頭で書いたように、医療保険加入は自由(任意)、つまり不要です。

    「自分にとっては入る意義がある」と思うなら医療保険に入ればいいし、そうでないなら医療保険に入らなければいいのです。

    そこを意識しながら、以下をお読みください。

    まず、ひとり親家庭の医療費への公的支援を抜きにして、考えてみる

    ひとり親家庭の医療費に対する公的支援はとても充実しています。

    しかし、ひとまず、ひとり親への公的支援を抜きにして考えてみます。

    親御さんが、サラリーマンである場合と、自営業である場合で入院費用を試算してみます。試算の方法は次の記事を参照してください。

    月収30万円程度の方について、入院月数ごとの入院費用(単位:万円)を、保険診療しか受けない前提(差額ベッドなどは使わない前提)で試算すると以下の様になります。

    入院月数3612182436
    会社員168112200301415657
    会社員2234588131173379
    公務員-16-32-46-60-94-161
    自営業11262304386598051,111
    自営業23650781198531
    • いずれも入院前の月収は30万円。
    • 会社員1は一般会社員(協会けんぽに加入する会社員)
    • 会社員2は大企業社員(シャープ社員)
    • 公務員は三重県教職員の場合
    • 自営業1は入院中に無収入となる自営業
    • 自営業2は入院中もいつも通り収入がある自営業

    公務員の入院費用はマイナスです。つまり、公務員が入院すると、お金の出入りの上では儲かってしまいます。これはシングルマザー公務員でも同じことです。

    会社員や自営業者については、ケガや病気が長引くと大変なケースもありますが、医療保険はいざというときに助けてくれません。

    あえて医療保険に入る意義はあるでしょうか。

    ひとり親の医療費への支援は手厚い

    次に、ひとり親の医療費に対する公的支援を考慮してみましょう。

    ひとり親の医療費に対しては、福祉医療費助成制度という手厚い公的支援があります。

    ひとり親にかかる保険診療費用をすべて助成してくれます。

    窓口ではいったん通常の自己負担分(診療費用の3割)を支払わなければなりませんが、自己負担分は後日すべて還付されます。

    子供が二人いるひとり親は、給与収入が500万円程度で他の収入がなければ、福祉医療費助成制度の対象となる

    私の住む伊賀市の場合、ひとり親に対する福祉医療費助成制度の対象者は、以下のように決められています。

    以下の1.~3.のすべてに該当する方。

    1.次のア~エいずれかに該当する人

    • ア.母子家庭で養育されている18歳未満の子(*)とその母
    • イ.父子家庭で養育されている18歳未満の子(*)とその父
    • ウ.父または母のいない18歳未満の子(*)とその養育者
    • エ.父または母が重度の障がい(国民年金の障害等級1級程度)にある18歳未満の子(18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子)とその父または母

    2.健康保険に加入している人
    3.本人および養育者および扶養義務者などの所得が、制限額表の所得額未満の人(伊賀市役所/福祉医療費(一人親家庭等)助成制度

    ※条件に「健康保険に加入している人」とあるので「国民健康保険や共済組合に加入している人はだめなんだ‥」と思って、電話で問い合わせたところ、国民健康保険や共済組合に加入していても対象となるようです。紛らわしい‥。

    上記対象者は、以下の所得未満であれば、福祉医療費助成制度の対象となります。

    子供一人親所得
    0人192万円
    1人230万円
    2人268万円
    3人306万円
    4人344万円
    5人382万円

    例えば、子供が二人いるひとり親の場合、1年間の所得が268万円以下であれば、保険診療の費用が無料になります。

    1年間の所得が268万円になる給与収入は、色々考えられますが、おおむね500万円台から600万円台です。

    ひとり親の多くは福祉医療費助成制度の対象となるでしょう。

    福祉医療費助成制度の対象となれば、入院による損害はさらに少なくなります。

    先程の「入院月数ごとの入院費用」のうち、医療費(保険診療費用自己負担分のみ。単位:万円)は以下の通りです。

     3612182436
    一般会社員364976116143210
    シャープ101833486393
    公務員247101319
    自営業1364976116143210
    自営業2364976116143210

    ひとり親が福祉医療費助成制度の対象となった場合は、これを全く負担しなくてもいいのです。

    そのため、ひとり親が福祉医療費助成制度の対象となると、入院費用(単位:万円)は次のようになります。

    入院月数3612182436
    一般会社員3263124185272448
    シャープ13275583111286
    公務員-18-35-52-69-106-180
    自営業190181362543662901
    自営業20123-58-179

    大した損害金額ではないと思いますが、いかがでしょう。

    損害が大きかったとしても、ケガや病気に対して医療保険で備えたところで、いざというときには助けてもらえないことが多いんですけどね。

    ひとり親には、医療保険よりは、就業不能保険

    結局、ひとり親が医療保険に加入する意義は、薄いと言わざるを得ません。

    どうしても不安だから保険で備えたい‥という方には、医療保険よりは、就業不能保険(または所得補償保険)をすすめます。

    入院による損失額の大半は、就業不能によるものです。

    入院医療費を補償する医療保険よりも、入院による収入減少を手当てする就業不能保険(または所得補償保険)の方がいいと思います。

    とはいえ、就業不能保険(または所得補償保険)も必要とまでは言えず、保険金をもらうためにはかなり厳しい条件をクリアしなければならないものも多いです。

    就業不能保険(または所得補償保険)への加入は、慎重に検討して下さい。

    母子父子寡婦福祉資金制度でお金を借りることもできる

    ひとり親の場合、かなり高所得の方を除いて、母子父子寡婦福祉資金制度でお金を借りることもできます。

    かなりの低利融資ですから、医療保険に入るより有利です。

    ひとり親の入院対策は、お金以外をメインとするべき

    ここまでは、入院費用を賄うための資金手当に焦点を当てて話してきました。

    ひとり親が入院した場合の金銭的な損害は大したことがありません。

    入院時の資金手当ては、保険よりも、貯蓄や借入を優先して考えるべきです。

    ただ、万一に備えたリスクマネジメントで、資金手当から考えるのは間違っています。

    • そもそもリスクが発生しないようにする(リスクの回避)
    • それが無理でも発生頻度を下げる対策をする
    • 発生した場合の被害を抑える対策を取る

    こういったリスクコントロールから考えるのが普通です。

    ひとり親家庭で親の入院に備えて何か手を打つなら、お金の手当以外のことからするべきです。

    子供に家事能力を身につけさせる

    子供に任せられる家事を増やせば、その分、親の入院によるダメージも減ります。

    私の母は、私4歳・妹3歳の時に、2か月ほど入院しました。

    母は、妹が小学生に上がると同時に、私たちきょうだいに家事ノルマを与え始めました。

    風呂トイレ掃除、洗濯ものの取り込み・畳み、布団の上げ下ろし、夕食分のお米とぎ…などをきょうだいで分担・協力してすることになりました。

    父にも、毎朝の掃除機かけ、洗濯物干しのノルマが降ってきました。

    母親なりに「私がいなくなっても家事が回るように…」とリスクコントロールをしたわけです。

    入院うんぬんは抜きにしても、子供に家事をさせるのは悪くないですよね。

    いざというときに助けてもらえる人を作る

    家事能力を子供に身につけさせると言っても、子供があまりにも小さなうちは無理です。

    その場合は助けてくれる人を確保することが大事です。

    一番良いのは、ひとり親自身の父母、子供にとっての祖父母に助けてもらうことです。

    しかし祖父母を当てにできない場合はちょっと大変です。

    児童相談所や乳児院の一時保護などを利用することになるかもしれません。

    医療保険に入る前に、こういった制度を利用する準備をすることから始めてはいかがでしょうか。

    事前に役所に出向いて手続き・相談しておく

    さて、リスクコントロールとして打つべき手を打ったら、次は資金の手当てです。

    保険も資金手当の一つですが、保険料という高いコストがかかるので、他の手段から検討するべきです。

    ひとり親の入院リスクに備えた資金手当ては、先ほど話した福祉医療費助成制度の利用が一番重要です。

    しかし、手続きをしないことには、この制度は利用できません。

    ひとり親が病気になってしまってから手続きをするのはとても大変です。

    元気なうちに役所に出向き、万一の際には福祉医療費助成制度を利用できるよう、必要な手続きを済ませておきましょう。

    ついでに、ひとり親家庭が利用できる福祉資金貸付制度についても聞いておくと、万一の際にとても役立ちます。

    まとめ

    途中、医療保険から脱線気味だったのでまとめます。

    福祉医療費助成制度を利用する手続きをしておけば、ひとり親が入院しても入院費用そのもので家計が破たんするようなことはありません。

    もしそれでも心配でどうしても保険に入りたいなら、入院費用に備えて医療保険に入るのではなく、就業不能による収入減に備えて就業不能保険に入るべきだと思います。

    しかし‥

    しかし、保険でカバーできる原因による家計破綻よりは、他の原因による家計破綻のほうを心配すべきであり、そのあたりのバランスをとることが重要です。

    というわけで、シングルマザーなどのひとり親が医療保険に入る必要はありません。

    あと、シングルマザーの方の入院体験記も見つけました

    是非是非参考にして下さい。

  • 子供に医療保険は不要。

    連載:医療保険は不要 第23回です。

    前回は、 専業主婦(主夫)にも医療保険は不要 という話でした。

    今回は子供の医療保険について書きます。

    子供が生まれると「子供を医療保険に入れた方がいいのかしら…」と迷われる親御さんがいらっしゃいます。

    我が家でも子供が欲しいと思っていたので、子供の医療保険加入の意義について調べました。

    その結果、子供を医療保険に加入させる意義は乏しい、という結論に達しました。

    我が家は夫婦ともアラフィフとなり、子供はもうあきらめましたが、これから子供を授かるご夫婦の参考になれば幸いです。

    (さらに…)
  • 専業主婦(主夫)に医療保険は不要。入院による収入減少はありませんよね。

    連載:医療保険は不要 第22回です。

    前回は、 月間所得30万円の自営業者にも医療保険は不要 という話でした。

    今回は、専業主婦(主夫)にとって、医療保険に加入する必要があるかどうかを考えます。

    (さらに…)
  • 月収30万円の会社員に医療保険は不要

    連載:医療保険は不要? 第20回です。

    前回は、教師や公務員に医療保険は不要!充実の福利厚生で医療費の自己負担はかなり安く済む でした。

    今回は、サラリーマンにとっての医療保険加入の意義を考えます。

    サラリーマンは医療保険に入っていても救われません。

    医療保険に入るくらいなら、所得補償保険や就業不能保険に入るべきです。

    その理由をお話します。

    (さらに…)
  • 教師や公務員に医療保険は不要!加入のメリットは小!福利厚生は手厚いです。

    連載:医療保険は不要 第19回です。

    前回は、「入院費用の平均は1日23,000円」に騙されてはいけない ということについて書きました。

    今回からは、シチュエーション別に、医療保険に加入する意義を検討していきます。

    今回は、教師や公務員にとっての、医療保険加入のメリットを考えます。

    (さらに…)
  • 「入院費用の平均は1日23,000円」はウソ

    連載:医療保険は不要 第18回です。

    前回は、入院による家計へのダメージを計算する方法 について書きました。

    今回は、保険を売る人たちが出した入院データを見るときに、気をつけるべきことを書きます。

    生命保険文化センターが、次のように 「入院1日あたりの自己負担費用の平均は23,300円」と主張しています。

    自己負担費用の総額を入院日数で除した1日あたりの自己負担費用*は、平均で23,300円となってい る。 (中略)*サンプルごとに算出したものの平均値

    生命保険文化センターの令和元年度生活保障に関する調査

    しかし、このレポートの「入院1日あたりの自己負担費用の平均は23,000円」 は、医療保険に加入するかどうかの判断にはほとんど役に立ちません。

    以下でその理由を説明します。

    (さらに…)
  • 入院による家計へのダメージを計算する方法

    連載:医療保険は不要 第17回です。

    前回は、患者申出療養について書きました。

    今回は、入院による家計へのダメージを計算する方法を考えます。

    入院による家計へのダメージ=支出増 + 収入減

    入院による家計へのダメージは、入院時の支出全額(下の図の赤い部分)ではなく、 普段より支出が増える部分(上の図の緑矢印) です。

    普段収入がある方は、入院したばっかりに普段より収入が減ってしまう分(下の図の緑矢印)も、 入院による家計へのダメージ となります。

    結局、 入院による家計へのダメージは、次のような計算で求めることになります。

    入院による家計へのダメージ
    =入院による支出増
    + 入院による収入減

    入院による家計へのダメージを計算するなら、入院による支出と収入を変化を調べないといけません。

    入院による家計へのダメージを、実際に見積もってみましょう

    入院による家計へのダメージ 見積もるには、支出増と収入減をそれぞれ求めて合計しなければなりません。

    支出増は次の4つに分けて考えると計算しやすいです。

    • 医療費の支出増
    • 食費の支出増
    • お小遣いの支出増
    • 交通費の支出増

    この4つを計算して合計し、そこにと収入減を上乗せすると、 入院による家計へのダメージが分かります。

    以下、同一月に30日間入院した場合の、入院による家計へのダメージを計算してきます。

    医療費の支出増を計算

    医療費の支出増は、入院医療費から普段の通院医療費を差し引いて求めます(下の図の緑矢印)。

    入院医療費の見積もり方が重要です。

    現役世代の場合、医療費の自己負担割合は3割です。残りは公的医療保険が支払ってくれます。

    自己負担割合が3割になるのはありがたいですが、それでも入院医療費が高額になったら大変です。

    そこで、総医療費が一定額を超えると、自己負担割合が1%または0%に引き下げられる制度が用意されています(これを高額療養費制度と言います)。

    例えば、月収30万円の一般企業サラリーマンでは「一定額」は267,000円です。

    自己負担割合は、一ヶ月の総医療費うち267,000円までの部分は3割、267,000円を超えた部分は1%です。

    教師や公務員・大企業社員は自己負担がさらに少なくなる

    なお、公務員・教師・優良企業社員の場合、高額療養費制度をさらに充実させる付加給付制度があるため医療費の自己負担額は更に下がります。

    ひと月あたりの医療費自己負担額は、三重県公立学校の正規教員では5,100円未満、シャープ社員の場合は25,000円未満に収まるようになっています。

    差額ベッド代の計算

    入院による家計へのダメージを計算する際に、差額ベッドを考慮する必要はありません。

    自ら進んで差額ベッドの利用を希望しない限り、差額ベッド代はかかりません。

    差額ベッドしか空いていないと言われれば差額ベッドを使うしかありませんが、その場合でも差額ベッド代の支払いは不要です。

    食費の支出増を計算

    入院中の食費についての自己負担額は1食あたり460円です。

    1ヶ月(30日間)の食費は、1日3食で41,400円(460円✕3食✕30日)となります。

    41,400円から入院した人の普段の食費を差し引いた金額が、入院による食費の支出増です。これは入院による家計へのダメージとして計上します。

    例えば、入院した人の普段の食費がひと月あたり3万円だとすると、支出増は以下のようになります。

    支出増(円)=41,400-30,000=11,400円

    ちなみに、普段の食費が41,400円/月を上回っている人は食費の支出減が発生します。支出減は「負の支出増」として、入院による家計へのダメージに計上します。

    例えば、入院した人の普段の食費がひと月あたり5万円だとすると、支出増は以下のようになります。

    支出増(円)=41,400-50,000=-8,600円

    お小遣いの支出増を計算

    お小遣いについても、入院によって支出が増えるかどうかをチェックしていきます。

    お小遣いは入院すると支出減となるはずです。 支出減は「負の支出増」として、入院による家計へのダメージに計上します。

    例えば、普段のお小遣いが3万円で入院中のお小遣いが5,000円だとすると、お小遣いの支出増は次のようになります。

    支出増(円)=5,000-30,000=-25,000円

    交通費の支出増を計算

    交通費についても支出増を計算します。

    付き添い家族の交通費支出から入院した人の普段の交通費支出を引いて、支出増の金額を求めて、入院による家計へのダメージに計上します。

    下の図のようになれば支出減が発生します。 支出減は「負の支出増」として、入院による家計へのダメージに計上します。

    例えば、入院した人の普段の交通費が15,000円/月で、付き添い家族の交通費が10,000円/月ならば、支出増は以下のようになります。

    支出増(円)=10,000-15,000=-5,000円

    入院による支出増合計を計算

    さて、ここまで計算してきた支出増を合計しましょう。

    1ヶ月(30日間)の期間で、入院時の支出と普段の支出を比べて支出増をまとめると便利です。以下のような、表にまとめると簡単です。

    費目入院時普段支出増
    保険医療費87,930087,930
    食費41,40030,00011,400
    小遣い5,00030,000-25,000
    交通費10,00015,000-5,000
    合計144,330
    65,00069,330

    ここまでの説明で例示した数値を表に記入してみました。

    こうしてみると、入院による家計へのダメージは、そう大きくないですよね。

    入院による収入減を計算

    最後に、入院による収入減少をチェックしましょう。

    サラリーマン、公務員、教師の収入減

    サラリーマンや公務員などの給与所得者は、入院で働けなくなると給料をもらえなくなります。

    しかし、月給の2/3以上(勤務先によって異なる)の傷病手当金が、公的医療保険から支給されます。

    見舞金を貰える場合もあります。

    普段の収入と入院時の収入(傷病手当金・見舞金等の合計)との差額が、収入減として入院による家計へのダメージに計上されます。

    例えば、月収30万円の一般企業サラリーマンが30日間入院し、傷病手当金を20万円貰えるなら、収入減は10万円です。

    収入減(円)=200,000-300,000=100,000円

    なお、教師・公務員や大企業サラリーマンは、傷病手当金の水準も恵まれています。普段の月給の8割以上が傷病手当金として支給されるケースもあります。

    自営業者の収入減

    自営業者が加入する国民健康保険では、多くの場合、傷病手当金の制度がありません。

    入院すると収入のすべてを失う自営業者が入院した場合、収入減はとても大きくなります。

    それでも、入院しても普段と同じレベルの収入を確保することができる自営業者は、入院時に収入減が発生しません。

    自営業者の入院時の収入減は人それぞれです。

    普段収入がない人が入院しても、収入減は発生しない

    一方、専業主婦(主夫)や子供など収入のない人が入院した場合、入院してもしなくても収入はゼロです。入院しても収入減は発生しません。

    老後の入院でも、収入減はあまり発生しない

    老後の収入の中心は年金です。年金は入院中も普段と変わりなく支給されます。

    収入の100%を年金に頼っている場合、収入減はゼロです。

    支出増と収入減を合計して、入院による家計へのダメージを求める

    収入減の計算ができたら、既に計算してある支出増の金額を加えれば、 入院による家計へのダメージ金額を求めることが出来ます。

    もう一度、支出増の集計表を眺めましょう。

    例えばこの記事では、月収30万円の一般企業サラリーマンが30日間入院した場合について、次のような表を作っていました。

    費目入院時普段支出増
    保険医療費87,930087,930
    食費41,40030,00011,400
    小遣い5,00030,000-25,000
    交通費10,0005,000-5,000
    合計144,33065,00069,330

    一方、月収30万円の一般企業サラリーマンが1ヶ月(30日間)入院し、傷病手当金を20万円貰える場合の収入減は100,000 でした。この場合…

    入院による家計へのダメージ (円)
    = 69,333 + 100,000

    となります。

    このペースだと、半年間続けて入院しても、 入院による家計へのダメージ は100万円余に過ぎません。

    それでも、医療保険に入ったほうがいいんでしょうか?

  • 患者申出療養制度登場。治療費高額化に備えるべき。

    連載:医療保険は不要 第16回です。

    前回は、先進医療について書きました。

    今回は、患者申出療養という、先進医療に似たシステムについて書きます。

    患者申出療養とは?

    2016-11-23-kanja-moshide-definition2

    患者申出療養は、先進医療と同様、まだ保険適用となっていないような高度な医療技術を用いた治療で、国が指定しているものです。

    先進医療は、医療機関などが申請した診療を国が指定したものです。申請手続は患者ではなく医療機関の主導で行われます。

    それに対して、患者申出療養の申請手続きは、患者自身の強い希望をきっかけに行われます。

    これが先進医療との違いですね。

    申出手続きの流れ

    患者申出療養の申請手続きをもう少し詳しく見てみましょう。

    患者申出療養として実績のない治療法については、以下のような手続きを踏みます。

    1. 一定レベル以上の病院に対して、患者が自ら受けたい治療法を申し出る。
    2. 病院が、安全性・有効性・実施可能性について検討し、患者の自らの意志でその治療法を希望したことを証明する書面を添えて、国に申請。
    3. 原則として6週間程度で国が治療実施の可否を判断
    4. 患者からの申出を受けた病院で治療

    一方、患者申出療養としてすでに実績のある治療法についての手続きは、以下のように簡素化されます。

    1. 患者が自ら受けたい治療法を申し出る先は身近な医療機関でも可。
    2. 患者から申し出を受けた病院は、国ではなく治療実績のある病院に対して申請。
    3. 原則として2週間程度で治療実施の可否が判断される
    4. 身近な医療機関で治療することも可。

    2016年10月に患者申出療養の第1例目が実施された模様

    患者申出療養の第1例目が条件付きで承認され、2016年10月にも東大病院で実施される運びとなりました。

    治療内容は、胃がんが腹膜に転移して腹膜播種となった患者に対して、抗がん剤パクリタキセル等を腹腔と静脈への投与し、抗がん剤S-1の内服と組み合わせるもので、8か月間の治療が予定されています。

    自己負担額は、保険適用分(3割自己負担)が444,000円、保険適用外(10割自己負担)となる部分が446,000円と、そこまで高額ではないです。

    詳細は厚生労働省のページからご覧ください。

    患者申出療養による患者のメリット

    先進医療には、病院の規模、医師数、専門医数、治療実績など厳しい基準があります。そのため限られた大病院でしか受けることができませんでした。

    一方、患者申出療養は、比較的身近な医療機関でも受けることができる可能性が高くなります。

    治療法の選択肢が広がるのが患者申出療養のメリットです。

    患者のデメリット(懸念事項)

    まだ制度が始まって間もないですが、患者申出療養については、識者から様々な懸念が表されています。

    医薬品や医療機器が保険承認されなくても商売として成り立つようになる

    医薬品や医療機器は、保険診療の対象とならないと商売にならないのが普通です。

    しかし、患者申出療養として未承認の薬や医療機器が販売できるようになると、話は違ってきます。

    手間暇かけて保険承認を勝ち取らなくても、製薬会社や医療機器メーカーは十分に商売ができるようになります。

    そうなると、保険承認されていない医薬品や医療機器が増えて、患者負担が増加します。

    我々が危惧しているのは、患者申出療養制度によって未承認の医薬品や医療機器を使うことが、保険承認されるまでの一時的なものではなく、通常の状態になってしまうことです。(「患者申出療養制度は、がん患者にとって問題の多い制度」:がんナビ

    必ずこうなるという話ではなく、あくまで予想や懸念の範疇です。しかし少々心配です。

    素人である患者が合理的な判断ができるのか

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    患者申出療養は患者自らが申し出る形をとるのですが、素人である患者が合理的な判断ができるのかという問題もあります。

    また、患者申出療養は、評価療養として行われる先進医療に比べると、実施の基準が緩いと言わざるを得ません。

    その結果、患者申出療法の安全性や有効性は、先進医療と比べて低いレベルになってしまう危険もあります。

    患者申出療養は超高額になりかねない

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    費用が超高額になる可能性があるのは、大きなデメリットです。

    難病の代表選手は「がん」ですが、がん治療薬は高額です。

    国内未承認のがん治療薬(今年8月17日現在)の7割以上は、1カ月当たりの治療費が100万円を超え、月700万円以上掛かる薬もあります。(「患者申出療養制度は、がん患者にとって問題の多い制度」:がんナビ

    月700万円の治療費を捻出できる人は限られるでしょう。

    国立がんセンターがシミュレーションした、未承認薬を用いた場合の、患者自らが支払う医療費(モデルケース)によると、未承認薬が患者申出療養となったところで、患者の自己負担はあまり軽減されません。

    経済的に厳しい患者にとって、未承認薬が患者申出療養として認められても、たいして嬉しくありません。

    それに対して、未承認薬が保険診療として採用されると、患者の負担は劇的に軽くなります。

    「患者申出療養ではなく保険診療として認めてほしい」というのが、大多数の未承認薬利用患者の気持ちだと思います。

    患者申出療養を利用するなら、医療保険を見直したほうが良い

    Magnifying, Glass
    いろいろと問題点も指摘される患者申出療養ですが、保険診療の範囲で万策尽きた難病患者にとっては、最後の頼みの綱になるでしょう。

    しかし、治療費は高額になりがちですし、高額療養費制度の対象でもありません

    私は、治療法を保険診療の範囲に限るなら、民間保険会社の医療保険はどれも使うつもりはありません。

    しかし、先進医療や患者申出療養を利用するなら話は別です。

    「難病に侵されたら、保険診療の枠を超えて、あらゆる治療を受けたい」と心に決めていらっしゃるなら、医療保険を見直し、先進医療や患者申出療養を保障するものに乗り換えるべきですね。

    患者申出療養に対応する医療保険商品

    というわけで、患者申出療養に対応できそうな医療保険商品を探してみましたが、あまり見つかりませんでした。

    これは、1回の療養につき1,000万円が限度のようです。これでは月に700万円ほどもかかる治療に対応するには心もとないですね。

    この二つは、入院治療費は無制限ですが、通院治療費補償の上限が1,000万円です。がん保険なので、もちろん「がん治療限定」という条件もつきます。

    ここで取り上げた3つとも、入院しないままに抗がん剤治療を患者申出療養として受けた場合は、補償の上限は1,000万円となりますね。。。

    これでは、月700万円かかる未承認薬治療など保険があっても手が出ません。

    先進医療・患者申出療養・自由診療に対応する保険って、安心を得るには程遠い補償内容のものしかないですね。。。

    そもそも保険は人生におけるリスクの一部しかカバーしないものですし、その意味で「ザル」で当然です。

    でも、先進医療・患者申出療養・自由診療に対応する保険は、ちょっとザルの目が粗いんではないでしょうか。

    我が家としては、今のところ患者申出療養は積極的には利用しません

    我が家では、保険診療で打つ手が無くなったら、先進医療とともに患者申出療養を利用したいという気持ちはあります。

    しかし、今のところは保険が頼りにならないので、月700万円の未承認薬治療なんてとても手が出ません。

    良い保険が出るまでは、先進医療・患者申出療養については、自己資金で対応できる範囲でしか使えないということになりそうです。

    患者申出療養を利用するかどうか考えておいたほうが良い

    ここまで我が家の話をしてきましたが、皆さんは患者申出療養にどう対応されますか。

    どう決断しても、それは価値観の問題ですから、全て正解です。

    大事なのは決断することです。ダメなのは、何も考えず、何も決めないことです。

    態度を決めないことには、保険その他、将来のライフプランを決めることもできません。

    先送りせずに、なにがしかの結論を出されることを、強くお勧めします。