「入院費用の平均は1日23,000円」に騙されてはいけない。

更新

医療保険が不要であることを証明する連載 第18回です。

前回は、入院による家計へのダメージを計算する方法 について書きました。

今回は、保険を売る人たちが出した入院データを見るときに、気をつけるべきことを書きます。

生命保険文化センターが、次のように 「入院1日あたりの自己負担費用の平均は23,000円」と主張しています。

自己負担費用の総額を入院日数で除した1日あたりの自己負担費用*は、平均で23,300円となってい る。 (中略)*サンプルごとに算出したものの平均値

生命保険文化センターの令和元年度生活保障に関する調査

しかし、このレポートの「入院1日あたりの自己負担費用の平均は23,000円」 は、医療保険に加入するかどうかの判断にはほとんど役に立ちません。

以下でその理由を説明します。

実際の平均は23,000円よりずっと少ない

「入院1日あたりの自己負担費用の平均は23,000円」 は、平均値としては著しく不適当です。

平均の算出法が不適切

まず、平均値の算出法があまりにもひどく、小学校の算数から勉強し直してほしいレベルです。

生命保険文化センターのレポートに、以下の部分があります。太字の文字装飾は私が加工したものです。太字部分に注目してください。

入院経験がある人の、直近の入院における入院日数は、平均で15.7日となっている。

生命保険文化センターの令和元年度生活保障に関する調査

入院経験がある人のうち、高額療養費制度を利用した人及び利用しなかった人(適用外含む)の直近 の入院時の自己負担費用*の平均は20.8万円となっている。 (中略)*治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や 衣類、日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額

生命保険文化センターの令和元年度生活保障に関する調査

レポートから、 入院1日あたりの自己負担費用の平均を求めるなら、

自己負担費用平均20.8万円÷ 入院日数平均15.7日 ≒ 入院1日あたりの自己負担費用 13,248円

このようになるはずです。まじめに勉強している小学6年生なら難なく出来るレベルです。

しかし、生命保険文化センターは、こんな簡単な事が出来てません。

いや、出来ないはずがないですよね。

思惑があって、別の計算方法( サンプルごとに算出したものの平均 )を使い、 「1日あたりの自己負担費用は、平均で23,000円」 と実態より大きな数値を喧伝しているのです。

一体、何のためでしょうか?

それはもちろん生保業界の利益のためでしょう。

アクサ生命による試算では、入院1日あたりの自己負担は、差額ベッド代と食事代込みで約10,400円。

生命保険文化センターの平均計算方法があまりにひどいです。

そのためか、一部の生命保険会社は、生命保険文化センターの調査結果を利用せず、「入院1日あたりの自己負担費用の平均」を独自に計算しています。

例えば、アクサ生命の計算は、生命保険文化センターに比べればきちんとしています。

自己負担額を合計すると、必要な金額は1日あたり約10,400円(*2)+αが目安です。(もしも入院したらどのくらい費用がかかる?|アクサ生命保険)

10,400円は厚生労働省の調査に基づいて試算したものです。

① 治療費1日平均(推計)2,952円
出典:厚生労働省「平成28年 医療給付実態調査」をもとにアクサ生命が計算。(推計平均在院日数29.81日、推計1入院あたり医療費総額1,015,408円。高額療養費制度適用後(70歳未満・年収(目安)約370万円~約770万円、月初から入院された場合)の金額)
② 差額ベッド代(推計)6,144円
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「主な選定療養に係る報告状況」1日当たり平均徴収額金額階級別病床数 平成28年7月1日現在(平成29年11月15日総会資料)
③ 食事代などの一部負担 1日3食1,380円
所得区分「一般」の場合。実際の自己負担額は年齢や所得によって異なります。

もしも入院したらどのくらい費用がかかる?|アクサ生命保険

内訳を表にまとめると次のようになります。

費目金額
治療費2,952円
差額ベッド6,144円
食事代1,380円
合計10,476円

アクサの試算も鵜呑みには出来ません

アクサ生命は、平均の計算を適切に行なっています。

しかし、アクサの言う「入院1日あたり約10,400円が必要」も、やはり鵜呑みにしてはいけません。

アクサの試算も、家計へのダメージを過大に見積もるものだからです。

アクサ生命の入院費用の計算には、差額ベッド代という不要な支出 6,144円が含まれます。

一日あたりの入院費用は、一日あたりの必要保障額を計算する材料として重要ですが、必要額の計算にデフォルトで不要なもの含んでしまうのはいただけません。

医療保険への加入を検討するなら、不要な要素を含む平均値など使わず、自らの家計の実態に合わせた入院シミュレーションを行って、判断すべきです。

「1日23,000円 」は入院時の支出。入院による家計へのダメージではない。

生命保険文化センターにしてもアクサ生命にしても、一日あたりの入院費用の中に、差額ベッド以外にも不要な要素を含んでいます。

両者とも、下の図の赤い部分を調べただけです。


医療保険で埋め合わせるのは、緑の矢印の部分(支出増)と収入減の和、すなわち入院による家計へのダメージです。

赤い部分のデータだけでは、医療保険への加入を検討する材料としては不十分です。

医療保険で手当するのは、支出総額ではなく、家計が受けるダメージ

アクサ生命は、病院に支払う食事代として1,380円計上しています。

たしかにそうですが、これは入院による家計へのダメージではありません。

食費について、入院1日あたりの家計へのダメージを求めるなら、

入院1日あたりの家計へのダメージ (食費分)=1,380円 -(普段の1日あたりの食費)

となります。

医療保険で手当すべき金額は、支出総額ではなく、入院によって家計が受けるダメージです。

ダメージを集計せずに、支出の総額を集計しただけのデータでは、何の意味もありません。

保険診療しか受けない場合、入院1日あたりの家計へのダメージは3000円強となる

ここで、アクサ生命による「入院1日あたりの自己負担費用」の試算をまとめた表を、もう一度見てみましょう。

費目金額
治療費2,952円
差額ベッド6,144円
食事代1,380円
合計10,476円

費目のうち、差額ベッド代は「入院1日あたりの家計へのダメージ」に含める必要はありません。

食事代についても、1,380円から普段の一日あたりの食費を差し引いたものを、 「入院1日あたりの家計へのダメージ」 に含めればよいです。

すると 「入院1日あたりの家計へのダメージ」 は3,000円強です。ひと月あたり10万円も見ればいいでしょう。

これは生命保険文化センターの言う「入院費用の平均は1日2万円」の1/6程度です。

そもそも、平均値のみに基づいて保険加入の判断をしてはならない

医療保険に限りませんが、保険加入を検討する際に、世間の平均値をそのまま使って判断するのは良くないです。

平均だけを材料に見積もると、判断を誤り、騙されたような感じになります。

まず、その意味で 「入院1日あたりの自己負担費用の平均は23,000円」 に騙されてはいけません。

ライフプランやライフデザインをもとに、「我が家の場合はどうなのか」という意識で、リスク発生時の家計の状況を見積もるべきです。

保険営業マンやFPの方に「我が家の家計とライフプランから言えば、入院費用はどれくらいになりますか?」と尋ねてみましょう。

ここで、ろくな対応ができない保険営業マン・FPなら、保険に関するお付き合いはやめたほうが良いです。

販売者側が提示するデータを鵜呑みにしてはいけない。

生命保険文化センターは、 医療保険を売る生保各社の経営陣が役員に名を連ねる一方、消費者の代表者は殆ど役員に含まれません。明らかに販売者寄りの組織です。

アクサ生命は販売者そのものです。

医療保険に限ったことではありませんが、販売者側の提示するデータは、販売者側にとって都合の良いものに仕上げられていることがしばしばあります。

消費者としては、それに流されないようにすべきです。

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