連載:医療保険は不要 第21回です。
前回は、 月収30万円の会社員に医療保険は不要 という話でした。
今回は、自営業者にとっての医療保険加入の意義を考えます。
「不要な保険に敢えて入る意義」を考えることが大事
連載:医療保険は不要 の冒頭で書いたように、医療保険加入は自由(任意)、つまり不要です。
「自分にとっては入る意義がある」と思うなら医療保険に入ればいいし、そうでないなら医療保険に入らなければいいのです。
そこを意識しながら、以下をお読みください。
本記事中の入院費用試算の前提などについて
今回は、自営業の方の入院費用について‥
- 35歳、月間所得30万円、食費3万円/月、お小遣い1万円/月
- 保険診療しか受けない
- 傷病手当金は支給されない
- 入院開始後1年半を経過した時点から障害基礎年金(2級)を受給する
- 子供は二人で、いずれも障害基礎年金の加算対象となる
という前提で計算し、それに基づいて医療保険加入の是非を考えます。
計算の考え方・高額療養費・傷病手当金への理解が必要です。以下の記事には必ず目を通して下さい。
- 入院による家計へのダメージを計算する方法
- 高額療養費制度のおかげで入院医療費はとても安くなる-医療保険に加入する意義が乏しいと言われる最大の理由
- 傷病手当金-病気やケガで収入を失ったときに給料の2/3以上を公的医療保険が補償してくれる仕組み
今回は、自営業者にスポットを当てて、より一層具体的に説明します。
入院中も普段と同じくらいの収入が見込める自営業者の場合
自営業者の稼ぎ方は人それぞれです。
稼ぎの性質によって、入院中の収入減の金額が違ってきます。
不動産収入や株式の配当投資などの不労所得は、入院しても収入減が発生しません。
労働による所得でも、入院中に働くことが可能な場合は、入院による収入減はそれほどでもありません。
例えば、ウェブサイトを運営して広告収入を得る仕事は、少々仕事を休んだからと言ってすぐに収入が減ることはありません。そのうえPCさえあれば入院中もある程度は働くことが出来ます。
このようなケースでは入院中の収入減はさほどではなく、入院費用はとても小さくて済みます。

※この記事では、入院費用を「 入院による家計のダメージ 」という意味で使っています。
障害基礎年金をもらい始めると、入院費用はかえって減少していきます。
公務員や教師が入院した場合よりも、入院費用は少なくすみます。
入院中に収入減が起きない自営業者にとって、医療保険への加入が意義深いものになるとは言えないでしょう。
入院中に無収入になる自営業者は、ケガや病気が長引く場合に対して備えた方が良い
労働によって所得を得ている自営業者が、入院中に全く仕事ができなくなる場合は、入院によって無収入になります。
たとえば、土建関係の職人(一人親方)がそうです。私の親族にも何人かいます。
一人親方が入院すると大きく収入が減ります。入院が長期に渡ると大変です。

3年間入院すると1,000万円を超える入院費用が発生しますね。。。
入院中に無収入になる自営業者は、ケガや病気で長期に渡って働けなくなる事態に対して備えておくべきです。
しかし医療保険に加入しても救われない
しかし、ケガや病気で長期に渡って働けなくなるリスクに対して、医療保険で備えるのは得策ではありません。
医療保険は入院を条件として給付金を支給する保険なので、入院を伴う療養についてしか助けの手を差し伸べてくれません。
入院を伴わない自宅療養期間については、医療保険から見殺しにされることが多いのです。これでは困りますよね。
この辺の事情は、月収30万円の会社員に医療保険に必要?で書いたことと同じです。
ケガや病気が長引く場合に保険で備えるなら、就業不能保険や所得補償保険
自営業者が、ケガや病気に保険で備えるなら、医療保険ではなく就業不能保険や所得補償保険を利用するべきです。
就業不能保険や所得補償保険は、「怪我や病気で働けないために所得が減少した状態」であれば、入院していなくても保障してくれるからです。
もっとも、就業不能保険や所得補償保険は、保険金が支給されるための条件がとても厳しいものも多いので、加入を検討する際には細心の注意を払って下さい。
ケガや病気に対しては、保険以外の手段で備えることがより重要
ところで、ケガや病気に備える方法として保険のことだけを考えるのは間違っています。保険以前に貯蓄や借入でなんとかする方法を考えてみるべきです。
さらに言えば、ケガや病気への対策として、資金準備のことばかり考えるのも間違っています。
まず、ケガや病気にならないように気をつけることが大事です。当たり前のことですね。
次に重要なのは、ケガや病気になっても所得を得られる仕組みを作ることです。
ケガや病気になっても所得を失わずにすむような仕組みを作る
この記事の前半で、私の親族に土建関係の一人親方が何人かいるという話をしました。
彼らは、40歳になる頃までには、ケガや病気になっても所得を失わずにすむ仕組みを整えています。
と言っても、弟子を雇用したり、同業者や隣接業者と助け合える関係を作ったりするだけなんですが、これをやるだけでケガや病気で所得がいきなり途切れることはなくなります。
私も自営業者ですから、もちろん、ケガや病気になっても所得を失わずにすむ仕組みを考えていますよ。
その一つが「ウェブサイトを運営して広告収入を得る」ことなんです。これもケガや病気でダメージを受けにくいです。この記事の前半で少し話しましたよね。
また、リモートワークが年々一般化しているので、FP業や社労士業にも、病状次第では入院中も従事可能なタスクが増えてくると思います。
方法はいろいろありますが、ケガや病気になっても所得を失わずにすむような仕組みを作ることは、保険を検討するより重要ですよ。