連載:医療保険は不要 第8回です。
前回は、入院中の食事代の自己負担額は1食あたり460円にすぎない。人によっては入院したほうが安上がりかも ということについて書きました。
今回は傷病手当金について書きます。
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなって収入を失った加入者に対して、公的医療保険が行う所得補償です。
傷病手当金の手厚さは、加入している公的医療保険によって大きく違います。「自分の場合にはどうなのか」をよく調べておかないといけません。
傷病手当金の法定給付(法律で定められた最低基準の給付)
まず、法律で定められている傷病手当金の最低基準の給付内容(法定給付)から説明します。
次の図は月給30万円の方の傷病手当金について図解したものです。
ケガや病気で働けなくなっても、最初の3日間は傷病手当金が給付されず、4日目以降から支給されます。
傷病手当金の額は1日あたり、標準報酬月額✕1/30✕2/3となります。
標準報酬月額をざっくり言い換えると「普段の月給をキリのいい数字に切り上げたり切り下げたりしたもの」ですから、
- 一日あたりの傷病手当金の額
≒普段の月給✕1/30✕2/3
=普段の日収✕2/3
と言えますね。
傷病手当金の支給期間は、支給を始めた日から1年6か月を超えないものとされています。
そうすると…
傷病手当金の支給が終わってからも、病気やケガで働けない場合はどうするの?
という心配が出るわけですが、 障害基礎年金や障害厚生年金を受ける基準を満たして障害年金を受けられることが多いです。
ただ、障害年金の金額は、傷病手当金より少なくなることが多いです。
職歴を通じて平均月給が30万円だった方が障害等級2級に該当した場合、受けることが出来る障害年金の額は、障害基礎年金と障害厚生年金をあわせて年額130万円(月10万円強)ほどです。
都道府県市町村が運営する国民健康保険には傷病手当金はない
さて、たいへん申し上げにくいのですが、ここで全国の個人事業主の方に残念なお知らせです。
都道府県市町村が運営する国民健康保険には傷病手当金がありません。
私も個人事業主ですが、病気で働けなったからと言ってすぐに事業収入が断たれるわけではないので、さほどの問題ではないです。
しかし、事業の内容によっては、ケガや病気で働けなくなると収入をすべて失うケースも考えられます。そういう個人事業主の方にとっては傷病手当金がないと大変です。
個人事業主は、サラリーマンよりも、病気やケガのリスクについて敏感にならなければなりません。
国民健康保険組合では傷病手当金の支給が行われることが多い
都道府県市町村が運営する国民健康保険には傷病手当金がないのですが、同じ国民健康保険でも、国民健康保険組合が運営するものでは傷病手当金が支給されることが多いです。
例えば、全国土木建築国民健康保険組合が運営する国民健康保険には、法定給付と同じ水準の傷病手当金があります。
国民健康保険組合に加入している方は、傷病手当金の規定をよく調べておいてくださいね。
全国健康保険協会が運営する健康保険の傷病手当金は法定給付のみ
全国健康保険協会が運営する健康保険には傷病手当金がありますが、法定給付しかしてくれません。
いや法定給付だけでもありがたいんですが、このあと紹介する一部健康保険組合や公務員のケースと比べると、見劣りしてしまいます。
健康保険組合の運営する健康保険では、傷病手当金にも付加給付が行われることがある。
同じ健康保険でも、健康保険組合が運営する場合は充実した付加給付が期待できます。
例えばシャープ健康保険組合の傷病手当金は以下のようになります。
月給30万円の従業員の場合、法定給付と比べて1日あたりの傷病手当金が1833円上乗せされ、支給期間も半年延長されています。この「上乗せ」「延長」部分が付加給付です。
傷病手当金の支給が終わったあとも、労働組合から傷病見舞金が支給されます。
ウェブサイトでは支給期間は公表されていませんが、1日あたりの傷病見舞金の額は傷病手当金と同額です。
このように、ケガや病気で働けなくなった場合の補償は、公的医療保険によるものだけではありません。
勤務先、労働組合、従業員同士の互助会などから見舞金がもらえることがあるので、その点もよく調べておきましょう。
次回は…公務員が病気やケガで働けなくなった場合の保障の手厚さについて
今回は、傷病手当金を始めとした、病気やケガで働けない場合に受けられる補償について話しました。
しかし、公務員の傷病手当金についてはまだ説明していません。
これを次回にお話しますが、その手厚さにびっくりすると思います。