このサイトで医療保険と言う場合、 特に説明がない限りは、入院保障と手術保障のみからなるシンプルな保険商品(民間医療保険)を指すこととします。
医療保険は、入りたい人が入ればよい類のものです。医療保険に入る必要まではありません。その意味で医療保険は不要なのです。
医療保険は不要ですが、入院リスクへの対応策として選択肢の一つではあります。熟慮のうえ、医療保険に入ったほうがいいと思うなら入ればいいし、そうでないなら入らなければ良いのです。
医療保険に入るかどうかより、そのことについて熟慮したかどうかが大事なのです。
その判断に役立つ記事をこの連載で提供します。皆さんの参考になれば幸いです。
もくじ
医療保険は不要で、かつ、高い買い物
ところで、保険は人生で2番目に高い買い物と言われます。保険に加入すればするほど、お金はどんどん出ていきます。
医療保険に加入するのは選択肢の一つですが、高い買い物なのですから、安易に取るべき選択肢ではありません。
医療保険に入るかどうかは、病気やケガが家計にもたらすダメージの金額を試算した上で、慎重に決めるべきです。
それには、健康保険や国民健康保険などの公的医療保険、その他の福利厚生についてよく知ることが大事です。
そこで、連載第2回以降は、公的医療保険を中心に福利厚生について詳細に説明します。
公的医療保険と民間医療保険
医療保険には、公的医療保険と民間医療保険があります。
公的医療保険には多くの種類があり、種類ごとに保障内容の手厚さが大きく違います。
自分が加入する公的医療保険をしっかり確認してください。
公的医療保険の保障内容

医療保険に入るなら、公的医療保険の保障内容では足りないところを医療保険で補う形で利用するのがいいでしょう。
公的医療保険の主要な保障内容は以下の通りです。
- 第4回:保険証のパワーで医療費の自己負担割合は3割以下になる
- 第5回:高額療養費制度のおかげで入院医療費はとても安くなる-医療保険が不要と言われる最大の理由
- 第6回:公務員・私立学校職員・大企業社員は、高額療養費の付加給付のおかげで入院医療費がさらに安くなる。
- 第7回:入院中の食事代の自己負担額は1食あたり460円にすぎない。人によっては入院したほうが安上がりかも。
- 第8回:傷病手当金-病気や怪我で収入を失ったときに給料の2/3以上を公的医療保険が補償してくれる仕組み
- 第9回:教師や公務員が病気休職すると、1年半は給料支給、その後2年間は傷病手当金等が貰える(三重県の場合)
- 第10回:妊娠出産費用を援助してくれる
公的医療保険の保障が及ばない範囲についても抑えておきましょう。以下で説明します。
差額ベッドや先進医療などは、公的医療保険の保障対象外

公的医療保険は、科学的に治療効果と安全性が確認された医療にしか、お金を出してくれません。
差額ベッドは、治療効果や安全性とは関係ないので、公的医療保険の給付対象となりません。
- 第11回:大部屋でも4人部屋なら差額ベッド代がかかることがある
- 第12回:差額ベッド代の平均・相場~1日1万円超は少数だが、東京の大病院では特に警戒が必要
- 第13回:差額ベッド代の対策は支払拒否に限る
- 第14回:差額ベッド代は本来は確定申告時に医療費控除の対象とはならないはず
先進医療や患者申出療養は、治療効果と安全性を確認するテストを行っている真っ最中である医療です。したがって公的医療保険の給付対象とはなりません。
差額ベッドや先進医療・患者申出療養など、公的医療保険の給付対象とならない医療は、選択肢の一つではありますが、利用する必要があるとは言えません。
したがって、 公的医療保険の給付対象とならない医療に備えるための保険も、必要とは言えません。
もちろん、 保険外診療( 公的医療保険の給付対象とならない医療)に備えて保険に入るという選択肢は否定しませんが。
公的医療保険の保障内容を考慮して、入院による家計へのダメージを見積もる

公的医療保険の保障内容を把握したら、入院した場合の家計シミュレーションを行い、入院による家計へのダメージを計算します。
ダメージを見積もると、医療保険がどうしても必要という状況は見当たらない事が分かります
上記の計算方法で、様々なケース別に入院による家計へのダメージ金額を計算すると、医療保険が必要という状況が見当たらない事が分かります。
- 第19回:教師や公務員に医療保険は不要!充実の福利厚生で医療費の自己負担はかなり安く済む
- 第20回:月収30万円の会社員にも医療保険は不要~医療保険に加入しても救われない
- 第21回:月間所得30万円の自営業者にも医療保険は不要~保険以外の手段で備えることも重要
- 第22回:専業主婦(主夫)にも医療保険は不要~入院しても収入が減らないからダメージが少ない
- 第23回:子供に医療保険は不要。中学生以下の医療費はたいてい無料になる
- 第24回:母子家庭(シングルマザー)にも医療保険は不要~ひとり親への公的支援は充実している
老後も、医療保険が必要だとは言えない

入院による家計へのダメージをシミュレーションすると、老後においても医療保険が必要だという状況は見当たらないことが分かります。
- 第25回:定年後も医療保険は不要~老後に備えて終身医療保険に入るのは大損
- 第26回:終身医療保険の「保険料は一生上がりません」はメリットではない。若い間は保険料が割高。
- 第27回:終身医療保険は途中で解約しにくい~サンクコストの呪縛
- 第28回:【高齢者の長期入院費用】病室料金の自己負担分は重いけど、若い人の長期入院の方がダメージは大きい
老後の医療費は貯蓄で調達することを目指すべきです。
参考:入院に関するデータ
医療保険について考えるなら、入院する確率や入院日数について、知っておいたほうがいいです。
医療保険は、いざというときに役立たない
これまで再三書いた通り、医療保険は、必要なものだとは言えません。
その上、医療保険に加入しても、いざというときに頼りになりません。
- 第31回:医療保険は長期入院への備えとしては心もとない
- 第32回:医療保険の入院日数の数え方と支払限度日数~医療保険が頼りにならない理由
- 第33回:医療保険は自宅療養や自宅介護を保障してくれない
- 第34回:差額ベッド代を賄うには医療保険は力不足
それでも医療保険に加入したいですか?
私は、ごく一部を除いて、医療保険には加入していません。
医療保険は必要と言うには程遠いものです。
その上、医療保険に加入すると、家計のキャッシュフローの期待値を下げます。
さらに、いざというときに医療保険は役立ちません。
ですから、私は医療保険にほとんど加入していません。
私が加入する医療保険は、海外旅行保険のみです。
海外旅行中に医療を受けると、日本では考えられないほど費用が莫大になり、一生かかっても支払えないケースすらありえます。
そこで、 海外旅行に行くときだけ、海外でかかる医療費を補償する海外旅行保険に入ります。
以前は、先進医療特約目的で医療保険に加入していたこともありましたが、今はもう加入していません。
あなたはそれでも医療保険に加入しますか?
医療保険は必要不可欠なものではありません。
その上、医療保険への加入は、将来における家計のキャッシュフローの期待値を下げてしまいます。
医療保険に加入する価値はあるのでしょうか?