HCDコンサルティング(旧・中川勉社会保険労務士事務所FPウェブシュフ)のブログ

お金がないなら医療保険に入るべきではない

連載:医療保険は不要 第1回です。

医療保険は入院費用を調達するための手段の一つにすぎません。

特に、入院費用が心配になるほどお金がない家計状況なら、医療保険への加入は特に慎重になるべきです。

医療保険に加入すると、もともと乏しい資金から医療保険料分が流出し、入院以外のリスクに対する備えが手薄になってしまいますよ。

医療保険はコストが高い。

医療保険の保険料は馬鹿になりません。例えば、保険料が月々3,000円の医療保険に40年間加入すると、支払った保険料の合計は144万円にもなります。高いですよね。

少しでもお金を貯めたいと思うなら、医療保険の加入はやむを得ない場合に限るべきです。

しかし、やむを得ない場合というのはありません。

医療保険に入るべきケースが無いことについて、以下、説明していきます。

医療保険に入る前に、入院時にもらえるお金を確実に全てもらえるように準備する

医療保険に入らなくても、入院した時にお金を受け取れるケースは色々とあります。

これらのお金を確実にもらうには、公的医療保険の給付内容と勤務先の福利厚生をよく理解しないといけません。

いざ入院してお金がないと騒いでいる人には、貰えるものをきっちり貰っていない人もいるのです。

貯蓄だけで資金調達できるなら医療保険は不要

さて、入院時にもらえるものをもらった上で、それでも残った「 入院による家計へのダメージ(=入院費用)」を貯蓄だけでまかなえると理想的です。

この場合は医療保険は不要です。

ただ、貯蓄の全額を医療のために使ってよいわけではありません。

子供の教育資金など、手を付けたくないお金もあるはずです。

貯蓄のうちいくらまで入院費用に回せるか、よく考えておかないといけません。

このあたりは、ライフプランをきちんと立てて、考えるべきです。

[img-link url=”https://webshufu.com/how-to-make-a-life-plan-with-excel/” title=”エクセルを使ったライフプランの立て方~ライフプラン表の作り方”]

親族からの援助で乗り切れる場合も医療保険は不要

貯蓄だけで入院費用をまかなうのが無理でも、親族から援助を受けることで乗り切れるケースもあります。

この場合も医療保険は不要です。

民法で、直系血族と兄弟姉妹には、相互扶助義務が課せられています。

医療保険に頼る前に、親兄弟祖父母からの援助・借入を検討するのが先です。

援助額・借入額の目安を、ある程度は把握しておきましょう。

無利子又は低金利の借入でしのげる場合も医療保険は不要

貯蓄と親族からの援助だけで入院費用を埋めわせることが難しいなら、無利子又は低金利の借入を利用します。

入院費用の支払いを、無利子又は低金利の借入で乗り切れるなら、医療保険は不要です。

ところで、無利子又は低金利の借入ですが、いざという時にどこが頼りになるか分かりますか。

クレカの分割払い・キャッシング・カードローンは、高金利の借入ですから、入院費用の支払いには使いたくないところです。

無利子又は低金利の借入は、勤務先の福利厚生、公的機関の制度、労働金庫などをあたってみると良いです。

勤務先からの無利子又は低金利の借入

多くの職場では、福利厚生として、困窮した従業員への無利子又は低金利の貸付が行われています。

勤務先で無利子又は低金利の貸付制度があるかどうか、調べておいて下さい。

また「給料の非常時払」も憶えておきましょう。

労働基準法第25条では、労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならないと定められています。(労働基準法第25条(非常時払)について |緊急情報|厚生労働省

公的機関からの無利子又は低金利の借入

勤務先の福利厚生を頼れない場合は、公的機関を頼りましょう。

次のような制度があります。

医療費の支払いのために、200万円程度の融資を受けるのは、さほど難しいことではありません。

福祉資金貸付は連帯保証人を付けた場合は無利子となります。連帯保証人をつけない場合でも金利は1.5%ほどです。

よほどのことがない限り、無理なく返済することが出来るでしょう。

お金がなくて、貯金や借入では入院費用を工面できない場合、安易に医療保険に入ってはいけない

貯蓄・親族からの援助・借入…これらを全て利用しても入院費用の支払いに不安がある。。。。

このようなケースでは、入院費用の調達はどうすればいいでしょうか?

医療保険では入院以外のリスクに対応できない

「入院費用の支払いは心配でも、医療保険の保険料くらいなら問題なく支払える」という場合、下の図のように考えて「医療保険に入らなければならない」と思いがちです。

しかし、この場面で医療保険に入るのは大きなギャンブルであり、安易に行ってはいけません。

よく考えて下さい。

確かに、医療保険に入ると、入院リスクへの備えは厚くなります。

しかし、人生におけるリスクは、入院リスクだけではありません。

たとえば、以下のようなリスクには、医療保険で備えることは出来ません。

  • うつ病などで、入院不要だが仕事はできず、収入激減
  • 失業等による収入激減
  • 子供が大学で留年して、授業料が余分に発生
  • 業務上の重大な過失で損害賠償債務が発生
  • 地震が起こり、地震保険でカバーできない損害が発生

こういったリスクには、貯蓄・親族からの援助・借入などで備えるしかないのです。

入院時の医療費の支払いが心配なほど余裕がない状況で医療保険に入ると、保険料の支払いでますます余裕がなくなり、入院以外のリスクへの備えは薄くなってしまいます。

これはギャンブルそのものです。

私なら、このような状況で医療保険に加入しても、安心感が増すどころか不安がどんどん膨らむだけです。

医療保険が必要な状況は見当たらない。

医療保険は選択肢の一つですが、それを選択する必要がある状況は、どこにも見当たりませんでした。

その上、医療保険への加入は、老後資金の期待値を下げてしまいます。

FPとしては「老後の資金が大事なら、医療保険にはなるべく入るな!」と言わざるを得ません。

それでも医療保険に入りたい方向けに、次回以降は医療保険の基礎知識を書きます。

医療保険は、とうてい必要とは言えないものです。

しかし「必要ではないけど好みで医療保険を買う」かどうかは個々人の自由です。

次回以降は、 好みで医療保険を買うことを検討する方々に向けて、医療保険の基礎知識をお話します。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

 最終更新日: