連載:医療保険は不要 第9回です。
前回は、傷病手当金-病気や怪我で収入を失ったときに給料の2/3以上を公的医療保険が補償してくれる仕組み について書きました。
今回は公務員の傷病手当金について書きます。
今回は、三重県公立学校教師が、病気や怪我で働けなくなった場合の補償についてです。
上の図では、三重県公立学校教師が病気や怪我で休職した場合の補償水準を、赤いラインで表しています。
怪我や病気で働けなくなっても、傷病手当金の法定給付(水色の部分)しか貰えない方と比べればとても恵まれています。
ひと目見ただけでは分かりにくいかも知れませんが、この後詳しく説明します。
三重県の公立学校教師が病気休職すると、最初の1年半は休みながら給料を貰える
三重県公式ウェブサイト内の県民の声コーナーにこんな質問がありました。
Q.県立高校で1年以上休んでいた職員がいたと聞きました。そんなに休んでいたら民間なら確実にクビですが、公務員はクビにならないのですか。どれだけ休んだらクビになるんですか。
それに対する答えがこちら。
A.病気による休暇・休職制度についてお答えいたします。
公立学校におきましては、職員が負傷又は疾病のための療養として、医師の証明等に基づき必要最小限度の期間について病気休暇の取得を認めており、その期間は最大で6月の範囲内としています。
その後、引き続き療養が必要と認められる場合には休職とし、その期間は3年を超えない範囲としています。
給料につきましては、病気休暇の期間中は有給ですが、休職となった日から8割の支給となり、さらに休職開始から1年に達した日以降は無給となり給料は支給されません。
このやり取りから、病気で働けない三重県公立学校教師に対する給料支給について
- 最初の6ヶ月は病気休暇で給料全額支給
- 次の1年間は休職となり給料8割支給
- その後も2年間は休職可能。ただし無給。
- 就業不能状態が3年半以上続くと退職を余儀なくされる
ということがわかります。
これを知った私の妻は「最初の1年半は給料がもらえるから安心だけど、それ以上就業不能期間が延びると心配…」と思ったようです。
しかし、 実は、就業不能期間が1年半を超えても、3年半になるまでは給料の代わりにもらえるお金があるんです。
三重県の公立学校教師が病気休職して1年半が経つと給料は貰えなくなるが、その後2年間は傷病手当金がもらえる
就業不能状態が1年半を超えて、給料が支給されなくなっても、傷病手当金を受給することができます。
公立学校の教師は最大2年間傷病手当金を受給することが出来ます。
病気やケガによる療養のため引き続き勤務に服することができなくなった日から起算して4日目から1年6月(中略)に6月(附加給付)を加算した期間支給されます。(傷病手当金/傷病手当金附加金:公立学校共済組合)
傷病手当金の受給期間が最大1年6か月までに制限されているサラリーマンが多い中、公立学校の教師は恵まれています。
また、公立学校の教師は、傷病手当金の給付額も恵まれています。
勤務しなかった期間1日につき、「傷病手当金支給開始日が属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の22分の1の額」の3分の2に相当する額(傷病手当金/傷病手当金附加金:公立学校共済組合)
つまり、公立学校教師の傷病手当金は、一日あたりで
- (平均標準報酬月額)✕1/22✕2/3
=(平均標準報酬月額)✕1/30✕30/22✕2/3
≒(普段の日給)✕10/11
となります。
一方、一般のサラリーマンの傷病手当金は、一日あたりで
- (平均標準報酬月額)✕1/30✕2/3
≒(普段の日給)✕2/3
となります(傷病手当金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会を参照)。
10/11÷2/3≒1.36ですから、公立学校教師への一日あたりの傷病手当金支給額は、普通のサラリーマンの1.36倍です。恵まれていますね。
三重県の公立学校教師が病気休職して半年後からは、給料や傷病手当金とは別に、教職員互助会から日額1,000円の療養補助金が貰える
各都道府県の公立学校の教師は教職員互助会などの福利厚生組織に加入しています。参考:互助会のあゆみ|互助会とは|一般財団法人 三重県公立学校職員互助会)。
公立学校教師が病気で仕事ができなくなると、傷病手当金の他に互助会からも給付を受けられます。
休業したとき|給付|一般財団法人 三重県公立学校職員互助会によると、療養補助金として1日あたり1,000円を給付してくれます。
※療養補助金は都道府県によってことなります。
三重県公立学校教師が病気や怪我で働けなくなったときの公的補償まとめ
休職中にもらえる給料・傷病手当金・療養補助金を合計すると、三重県の公立学校教師が病気休職中に受けられる一日あたりの補償金額は以下のようになります。
- 休職半年後までは、普段の日給(≒月給の1/30)と同額。
- 休職半年後から1年半後までは、普段の日給(≒月給の1/30)の8割+1,000円。
- 休職1年半後から3年半後までは、月給の1/30(≒普段の日給)の10/11+1,000円。
冒頭で掲げた図は、月給30万円の三重県公立学校教師が病気休職中に受けられる一日あたりの補償金額を図解したものです。改めて見てみましょう。
なんと休業開始後3年半もの間、日収9,000円以上が確保されます。
傷病手当金の法定給付しか貰えない方と比べれば、とても恵まれています。
恵まれているが、それでも就業不能状態が3年半を超えて長引いたら、家計破綻の恐れがある
そういうわけで、私としては、妻に医療保険や所得書補償保険をかけたくはありませんでした。
しかし妻は不安でした。
病気で3年半も働けない状態は、たいていは鬱などの精神疾患で、働けない期間は3年半では済まなさそう…
こう思うようなんです。
休職するとボーナスは激減または皆無になってしまいます。休職による家計へのダメージがある程度生じるのは事実です。
また、教員に対する所得補償は手厚いですが、それでも病気で休職が3年半以上に達して失職まで追い込まれれば、家計へのダメージは甚大です。
ただし、病気で働けない場合は、障害年金を受給することが出来る可能性が高いです。
そこで「2015年9月に妻が2級障害に認定された場合に、どれくらい障害年金がもらえるか」を共済組合に試算してもらいました。
その結果、障害年金の2階3階部分(障害厚生年金と職域加算)の年額は1,036,400円だとわかりました。1階部分(障害基礎年金)は年額約80万円です。
[img-link url=”http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html” title=”障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構”]
というわけで、妻が2015年9月に2級障害に認定された場合に貰える障害年金額は、年額で約180万円だと分かりました。
月額に直せば約15万円ですね。正直言って心もとないです。
我が家は、医療保険ではなく、所得補償保険に加入することにしました
我が家は、万が一の就業不能長期化に備えて、所得補償保険に加入することになりました。
医療保険は、「入院していないけど長期間にわたって精神疾患で働けない」状態に対しては全く役立ちませんから、使う意味を感じませんでした。
それに対して、ある所得補償保険(教師しか加入できません)であれば、「入院していないけど長期間にわたって精神疾患で働けない」状態に対しても、5年間は多少の補償が得られます。
もちろん、所得補償保険も、入る必要まではありません。
実際、保険に入らずに、障害を持ちつつ収入を維持向上する方法を模索するのが望ましい姿です。
しかし、我が家では妻が所得補償保険への加入を希望したので、その選択肢を選ぶこととしました。
保険を探すなら団体保険から物色しましょう
ところで、保険を探すなら、一般の民間保険商品を物色する前に、職場の団体保険から物色するのが鉄則です。
教職員が任意で加盟する団体「日本教育弘済会」で、我が家のニーズに概ね合っている団体所得補償保険が用意されていたので、我が家はその保険に加入しました。
[img-link url=”http://www.nikkyoko.or.jp/environment/welfare/longway/index.html” title=”ロングウェイサポート|福祉事業|日教弘会員の皆様|日教弘 – 公益財団法人 日本教育公務員弘済会”]
所得補償保険では、精神障害が補償の対象外とされることも多いのですが、ロングウェイサポートは比較的長い間(5年間)補償してくれます。