連載:医療保険は不要 第34回です。
前回は、医療保険は自宅療養や自宅介護を保障してくれない ことについて書きました。
今回は、医療保険に入っても差額ベッドを安心して使うことなど出来ない という話です。
医療保険では差額ベッド代をカバーできない
以前に、差額ベッド代の平均・相場~1日1万円超は少数だが、東京の大病院では特に高額 という記事を書きました。
そこで明らかなように、高額な差額ベッド代が発生する可能性は低いです。
しかし、高額な差額ベッドを利用してしまったとき、家計のダメージは大きくなります。
リスクマネジメントの原則的な考え方で言うと、高額な差額ベッド代は「リスクの移転」で対応すべき典型的なケースです。
リスクの移転手段の代表例は保険です。差額ベッド対策に保険を使うなら医療保険なんですが…一般的な医療保険はあまり頼りになりません。
※この記事で言う「一般的な医療保険」は、 入院給付金が1日あたり1万円、1入院あたりの支払限度日数が60日の医療保険を指します。
一般的な民間医療保険は、超高額な差額ベッド料をカバーできない
例えば、月収30万円のサラリーマンが60日間入院して、差額ベッド代を1日あたり5万円支払う羽目になった場合を考えましょう。
差額ベッドを使わない場合の病院への支払金額は、以前の記事で、医療費約27万円と食費約8万円で合計約35万円と計算しました。
ここに差額ベッド代60日分の300万円を足すと、病院に支払う金額の合計は335万円ということになります。
費目 | 金額(万円) |
---|---|
医療費 | 27 |
食費 | 8 |
差額ベッド | 300 |
合計 | 335 |
1日1万円の入院給付金では全く足りませんよね。何もないよりマシという程度です 。
このように、一般的な民間医療保険では、超高額な差額ベッド料をカバーできません。
差額ベッド代が日額一万円程度でも、長期入院したら、一般的な民間医療保険は頼りにならない
次に差額ベッド代が1日あたり1万円の場合を考えましょう。
一見、病院への支払いを賄えそうですが、入院が長期化するとピンチです。
180日間入院した場合を考えると、医療費は約45万、食費は約25万円、差額ベッド代は180万円ですから
費目 | 金額(万円) |
---|---|
医療費 | 45 |
食費 | 25 |
差額ベッド | 180 |
合計 | 250 |
病院に支払う金額は総額約250万円です。
この場合も入院給付金の額は60日ですから、入院給付金は病院への支払いの60/250しかカバーしてくれないことになります。
一般的な医療保険では、長期入院時の差額ベッド代も賄うことはできません。
差額ベッド代を医療保険で賄おうとすると損
そもそも保険は、加入者全体としては損をするようにできています 。
これは、保険会社や保険代理店の従業員の給料が高すぎることも原因ですが、そればかりではありません。
保険で損をするのは、保険という仕組みを維持するためには結構なコストがかかり、それを加入者が負担するからです。
私たち加入者が支払った保険料から、保険会社や保険代理店の従業員の給料などのコストが差し引かれて、その残りが保険金の支払原資となるからです。
そのため、私たち加入者が支払った保険料のうち、一部しか保険金の支払いには回らないわけです。
保険を検討する際には常に「保険に入ると損!」ということは頭に入れておかなければいけません。
それでも、損と引き換えに得られる保障が十分なものであるならば、保険に入れる価値があるでしょう。
しかし、差額ベッド代に備えて医療保険に入る場合はどうでしょうか。
入院給付金は、差額ベッド代を賄うには不十分であり、損と引き換えに得られる保障は不十分だと言わざるを得ません。
少なくとも我が家ではそのように判断しています 。
差額ベッド代に備えるよりも、差額ベッド代を払う羽目に陥らないようにする方が大事
我が家としては「差額ベッド代に備えて医療保険に入ることについては意味がない」という結論を出しました。
差額ベット代には保険以外の手段で備えないといけません。
ですが、医療保険に加入していたとしても、医療保険からの入院給付金は差額ベッド代を賄うには不十分でしたよね。
ということは、医療保険に入っている場合であっても、保険以外の手段で差額ベット代に備えておく必要があるわけです。
その保険以外の手段としては、以下の2つが考えられます。
- 保険以外の手段で差額ベッドの資金準備をする
- 差額ベッド代を払わなくていいようにする
①の方法は、貯蓄を増やすか誰かに助けてもらうかということです。100%確実に実行できる対応策ではありません。
②の方が手っ取り早くて確実です。
差額ベッド代に備えるよりも、差額ベッドを使わないようにしたほうが良いです。
また、差額ベッドを使ったとしても、患者が自発的に希望して利用したものでない限り、差額ベッド代の支払いは必要ありません。
病気への備えとしては、 医療保険に入るよりも、こういうことを覚えておくほうが役立ちます。