私の妻は教師です。教師は身分が安定していますが…保険加入や住宅取得などの長期にわたる大金の支出は、長期的・総合的・合理的な計画に基づいて行いたいところです。
長期的・総合的・合理的な家計管理には、ライフプラン表がとても役立ちます。
ライフプラン表を作成し、将来の家計がどうなるかをシミュレーションする流れをまとめてみました。
ライフプラン表とは何か
ライフプラン表は、家族の価値観を反映した将来計画表(ライフイベント表)に、将来の貯蓄・家計の状況をあらわす表(キャッシュフロー表)をくっつけたものです。
…と言っても初めて自分でライフプランを作ろうとする方にはピンとこないと思います。本記事冒頭の画像がひな形のキャプチャですのでご覧下さい。
以下、ライフプランニングの流れは、このひな形で作った我が家のライフプラン表を具体例として説明します。ライフプランを作成するならダウンロードしてくださいね。
ライフプラン表を作る際は、まずライフイベント表を完成させて、次にキャッシュフロー表を完成させるという流れで作ります。
これによって、ライフプラン表には、ライフプランニングの意味する3つの領域
- 生きがい・やりがいの実現計画
- 健康維持・増進計画
- マネープラン(ファイナンシャルプラン)
がわかりやすくまとめられます
ライフプラン表作成のメリット
ライフプラン表を作ることで、様々なメリットを享受できます。
人生の各時点におけるキャッシュフローや貯蓄額が一目瞭然になる
ライフプランを作る最大のメリットは、自分が今思い描いている人生を送った場合に、人生の各時点におけるキャッシュフローや貯蓄額が一目瞭然になることです。
死ぬまで貯蓄が底を突かなければ、現在自分が思い描いている人生には大きな問題が無いと言えます。ライフプランを作る前に抱えていた漠然とした不安や悩みも吹き飛ぶかもしれません。
ライフプラン表で貯蓄残高がマイナスになるなら、それはライフプランの問題点が浮かび上がったということです。マイナスの原因を分析して対策を行うことが容易になりました。
いつまでにいくら貯蓄を増せばよいか、というふうに明確な目標設定が出来るようになります。
そこから、ライフイベントに優先順位をつけて、順位の低いものは見送るなどして、マイナスを解消することが出来ます。
住宅購入などの大きな出費が家計へもたらす影響がわかりやすくなる
大きな出費を伴うイベントを迎える前にライフプランを立てておくと、家計がピンチに陥らないかどうかをシミュレーションするのが楽です。
例えば、住宅購入というイベントをライフプランに入れることで、住宅購入によって家計が破綻しないかどうかをシミュレーションすることが出来ます。
特に、ローンを背負うような買い物では、シミュレーションは特に重要です。ローンが払えなくて家を手放すのは嫌ですからね。
ちなみに、住宅資金・教育資金・老後資金を「人生の三大資金」と言います。
ライフプランニングの大きな目的は
- 三大資金の金額をおおよそ把握しどのように手当てするか
にあります。
不幸によって家計が受ける打撃をシミュレーションして保険を見直すのに役立つ
せっかく立てたライフプランですが、不測の事故によって破滅的な打撃を受けて崩壊するリスクを抱えています。
国は、社会保険などによって救いの手を差し伸べてくれますが、状況によってはそれでは足りないことがあります。
その場合は民間保険会社の保険を利用することになります。
ただ、保険というものは、家計への破滅的な打撃に備えるために、損を覚悟してしぶしぶ加入する金融商品です。
- ライフプランに「世帯主の死亡」などの不幸なイベントを入れて
- その不幸による家計への打撃の程度を把握し
- 打撃が破滅的で、保険以外に対処のしようがない場合にのみ、保険を使う
保険について検討するなら、このような考え方で臨みたいです。
我が家でもライフプラン表を使って様々なリスクへの対処法を改めて考えました。その結果保険料の削減に大成功。
以下簡単に対処の内容を紹介します。
妻や夫の死に備える
一家の稼ぎ手が死ぬと収入が急減します。我が家では妻が死亡した時の家計への打撃を計算して妻に掛ける死亡保険金の額を4000万円にしました。
家族の疾病傷害介護に備える
家族の誰かが疾病にかかったり、傷害を負ったりすると医療費増大のリスクが気になるところです。
しかしこのリスクは意外に大したことがありません。
医療費増大よりも、疾病・障害による就業不能リスクが怖いです。
公務員はこの面でも手厚い福利厚生があるのですが、それでも就業不能状態が長期化した場合については、保険で備えないと心もとないです。
私については、医療費増大リスクに対しても、就業不能リスクに対しても、保険による手当てはしていません。仕事柄、入院してもある程度収入を得ることができますからね。
自然災害による資産毀損リスクへの対応
将来実家に住む予定であるため、差し当たって賃貸派の我が家では、妻の車以外に大した資産はありません。
我が家の車の資産額は新車時でも200万円前後なので、それを壊したところで、ライフプランに対する長期的な影響は大したことはありません。
もちろん、車両保険には入っていません…と言いたいところですが、妻の好みで車両保険に入っています(免責金額はMax)。
損害賠償リスクへの対応
我が家では、賃貸契約上、借家人賠償に対応する保険に加入する義務があります。
我が家の加入する「借家人賠償に対応する保険」には、夫婦とも加入できる個人賠償責任保険がくっついているため、我が家は夫婦とも個人賠償責任保険に加入しています。
これは自転車で事故を起こした時の損害賠償も、これで保障されます。
自動車事故による損害賠償責任には自動車保険で対応しています。
また、妻は、業務中の損害賠償責任に備えた団体保険にも加入しています。
ライフプラン表は、早めに作ってこまめに見直すほど、作成メリットが大きくなる
結婚や出産は大きな出費を伴うライフイベントです。
これに備える意味でも、ライフプランは独身時代のうちに(なるべくなら学生のうちに)立てておきたいところです。
しかし、ライフプランは一度立てたらそれで終わりではありません。
最近は
- 超高齢化による長生きリスク
- 年金・医療制度の負担増・給付減の流れ
- 雇用の不安定化
一年に一度は見直しをしたいところね
ライフプラン表作りの準備~ライフデザインの設計
ライフプランを作るなら、その基礎になるライフデザインをしっかり設定しないといけません。
ライフデザインとは「どんな生き方を理想とするか」です。以下の3つのカテゴリーそれぞれについて、自分の考えをはっきりさせましょう。結婚している方はパートナーと相談しましょう。
人生の目標(ミッション)
これは人生の夢・目標・ビジョンと言ったところです。
- 自分は何の為に生きているのか
- 何を人生の価値と考えているのか
ファミリーデザイン
これは「どんな家庭を作りたいか」です。
- 結婚するかどうか。結婚するなら何歳頃するのか。年の差婚かどうか、晩婚かどうか
- 子供を作るかどうか。作るなら、いつ作るか、何人作るか。Dinksでいくのかどうか
- 専業主婦(主夫)家庭となるか、共働き家庭となるか
- 未婚または離婚で母子家庭でいくのか、その際ワーキングマザーとして頑張るのか
キャリアデザイン
キャリアプランともいいます。
- サラリーマンか自営業か。転職・独立のタイミングはどうするか
- どんな職種・業種につくのか
- 何歳まで働くのか。生涯現役で行くのか。
出産子育て期のキャリアプランは特に大事です。
フルタイムで働くか、パートでほどほどに働くか、それとも一旦退職するか、等を夫婦それぞれについてよく考え、夫婦間でよく話し合っておいたほうがいいです。
ライフプラン表作成はライフイベント表作りから
ライフ=人生、イベント=出来事ですから、ライフイベントとは人生において発生するさまざまな出来事のことです。
ライフイベント表には、ライフイベントのうち、比較的多額の支出を伴うものを、時系列に沿って記入します。
ライフイベント表に記入されるイベントは、人それぞれの生きがいや価値観(つまりライフデザイン)を色濃く反映したものになります。
ここをいい加減にするとろくなライフプランが出来ません。特に慎重に考えてください。
家族構成を記入
まず、我が家のライフプラン表を見本に、家族構成を記入してください。
家計と密接な関係があるので、家族構成の欄には夫婦の両親も必ず書き入れましょう。
また、将来新たに子供を作る予定を立てている方は、その子供も家族構成の欄に忘れず書き入れてください。
家族の年齢を記入
家族構成を書き入れたら、西暦年次ごとに、年末における家族の年齢を書いていきます。
家族の年齢を書き入れていると、何歳まで書き入れたらいいのか、少々悩みます。
私は、平均余命の延びを考えて、夫婦が100歳になる年まで年齢を書き入れる(つまり100歳で死亡する前提でライフイベント表を作る)と良いと思います。
イベントを記入
家族構成と年齢の記入が終わったら、次はいよいよイベントを記入していきます。
上のモデルケース(我が家のライフプラン表ですが…)を見ればわかるように、私はイベントを9種類に区分整理しています。
- 仕事…就職、定年退職。転職・独立開業。パートから正社員へまたはその逆など
- 住宅…持ち家その他不動産購入、買換え、建て替え、賃貸の住み替え・引越しなど
- 旅行
- 車…買換え、車検
- 教育…入学、卒業、塾
- 結婚
- 出産
- 介護
- 葬儀
必ずしもこの通りに区分する必要はありません。しかし、イベントを全く区分しないと、ライフプラン表が見にくくなってしまいます。自分にとってわかりやすい基準で区分してください。
ライフイベント表の次はキャッシュフロー表を作成
ライフイベント表が出来上がったら、キャッシュフロー表の作成に取り掛かります。
キャッシュフロー表の構成は以下のようになっています。
- 収入
- 支出(生活費)
- 基本生活費
- その他固定費
- 一時支出
- 年間収支
- 貯蓄残高
以下、収入欄から順に記入していきましょう
収入は可処分所得で記入する
収入欄には、家族それぞれの収入を書きます。
収入は全て可処分所得(手取り)で記入してください。
- 可処分所得 =収入総額 -(所得税+住民税)-社会保険料
以下、サラリーマンや公務員、自営業者、年金生活者の3パターンに分けて、可処分所得の計算方法を説明します。
サラリーマンや公務員の可処分所得は源泉徴収表を見ればわかる
サラリーマンや公務員など給与所得者の場合、源泉徴収表があれば、現在の手取り年収を概算することができます。まず、現在の可処分所得を把握しましょう。
上の図は、ウェブシュフ妻(教師・公務員)の平成26年源泉徴収表です。①が収入総額(額面収入)、②が所得税、③が社会保険料を表します。いずれも平成26年の総額です。
住民税の金額は④の部分に注目して概算します。
- 住民税の概算金額≒{(給与所得控除後の金額)-(所得控除の額の合計額)+ 5万円}×10%
ウェブシュフ妻の平成26年分住民税(平成27年徴収分)を計算すると、(5,554,145-1,840,736+50,000)×10%=約37万円となります。
ウェブシュフ妻の平成26年分可処分所得は、
可処分所得(手取り収入)
=収入総額(額面収入)-(所得税+住民税)-社会保険
=7,504,606-(370,000+321,700)-1,018,826=5,794,080円
です。
現在の可処分所得を把握することが出来たら、それをベースに、将来の可処分所得を予想して、キャッシュフロー表に記入しましょう。
※ここで紹介した住民税計算方法は簡便法です。ライフプラン表の収入金額を求めるだけなら、おおよその金額がわかればいいので、簡便法で計算しています。
事業所得者の可処分所得計算は簡単
事業所得者の場合、今の可処分所得を把握するのは簡単です。
所得税の金額は、確定申告書を見ればわかります。
住民税の金額は、住民税納税通知書(例)を見ればわかります。
国民年金や国民健康保険など社会保険料の金額も、関係書類を見れば簡単に把握できます。
あとは、以下の計算式に当てはめて計算するだけです。
- 可処分所得(手取り収入)=収入総額(額面収入)-(所得税+住民税)-社会保険料
現在の可処分所得を把握することが出来たら、それをベースに、将来の可処分所得を予想して、キャッシュフロー表に記入しましょう。
退職所得も計算しておこう
退職金がどれくらいか目星をつけておかないと、きちんとしたライフプランを立てることはできません。
今後の給料の推移を頭に入れつつ、勤務先の退職金規定を見て、計算してみましょう。我が家でも妻(公務員教師)の退職金を予測しました。
年金収入の可処分所得の求めかた
ライフプラン表には老後の年金収入も可処分所得で記入します。
年金収入の総額を把握するには、地方公務員なら「地共済年金情報ウェブサイト」、民間企業のサラリーマンなら「ねんきんネット」が便利です。
転職経験者の方は、厚生年金基金からの受給額を、企業年金連合会に問い合わせて確認しておきましょう
ウェブサイトでの試算が面倒なら、勤務先に問い合わせるなどして、おおよその金額をつかむこともできます。
年金収入の総額を把握したら、税金や社会保険料を削って可処分所得を計算します。
支出(生活費総額)は、基本生活費、その他固定費、一時支出に分けて記入する
収入欄の記入が終わったら支出欄の記入に着手します。
家計簿や世間の相場など参考に記入していきます。
一時支出⇒その他固定費⇒基本生活費の順に説明します。
一時支出
生活費のうち、年によって、支出するケースと支出しないケースがあるものが一時支出です。
我が家の場合は上のようになっています。旅行費は毎年計上されているのに一時支出としています。
なぜかというと、今は毎年旅行をしていても、80歳を超えたらそれは無理だと思っているからですね。
ところで、一時支出の各費目は自分の希望に沿って書けばいいのですが、あまりに遠い将来のことについては希望すら思い描けません。
そういう場合は、世の中の平均や相場を参考にして数値を書き込みましょう。
- 結婚式費用など結婚時に出て行くお金の相場は180万円
- 出産費用の平均は25万円
- 介護費用総額は300万円が相場
- 葬儀費用の相場は100万円。しかし事前の準備次第で10万円未満まで引き下げ可能。
- 我が家の自動車維持費は年間74万円
その他固定費の記入
「その他固定費」は、基本生活費(後で説明します)に含まれない固定費のことです。
毎年支出する固定的な生活費のうち、ライフデザインによって大きく出費額が変わりうるものや、特に重要なものを含めます。
「その他固定費」に含む費目には価値観が反映されるので、人それぞれ異なりますが…
- 教育費(保育費含む)
- 住居費(住宅ローン返済・固定資産税・家賃・共益費)
- 養育費(子供にかかる費用のうち「教育費」「保育費」「子どものための預貯金・保険」を除く)
などは「その他固定費」に分類するべきものでしょう。
我が家の場合は、これらに加えて以下の3つも「その他固定費」としています。
- 我が家の車維持費(車そのものにかかる税金と保険料)
- 人間ドック
- 妻職場交際費(労働組合費など)
ただ、これらについては、重要性を感じないなら、次に説明する「基本生活費」としても問題ありません。
固定費のうち、具体的に費用を見積もるのが難しいものは、世の中の平均や相場を参考にして数値を書き込みましょう。
基本生活費の計算と記入
基本生活費は、毎年支出する生活費のうち、「その他固定費」以外のものです。子供にかかる生活費は「その他固定費」の「養育費」として処理するので基本生活費には含めません。
家計簿をつけていれば、基本生活費を費目別で把握することが出来ます。キャッシュフロー表の基本生活費についても詳細に記入することが出来ます。
私としては複式簿記で家計簿をつけるのをおすすめしています。
しかし、家計簿をつけていない場合はどうすればいいのでしょうか。
その場合は、家計簿不要で超簡単!通帳だけを使った生活費計算方法によって、まず生活費総額(キャッシュフロー表では支出合計)を求めましょう。
そして、生活費総額(支出合計)から「その他固定費」と「一時支出」を差し引いて基本生活費を求めましょう。
- 基本生活費=生活費総額(支出合計)-その他固定費-一時支出
基本生活費の内訳はわからないので、基本生活費の各費目は空欄にしておいてください。費目別の金額はわかったほうが良いですが、基本生活費の総額がわかればライフプランは立てられます。
支出合計欄を記入
私の作ったライフプラン表のひな形では、一時支出の下に支出合計欄があります。
基本生活費を家計簿から求めた人は、以下の計算式にしたがって、各年次ごとに支出合計を計算してください。
- 支出合計(生活費総額)=基本生活費+その他固定費+一時支出
家計簿をつけていない人は、基本生活費の金額を計算する際に、支出合計(生活費総額)を求めてありますよね。
金融資産の増減を記入
ここまで来れば、各年次ごとに収入合計・支出合計が記録されているはずです。
あとは、以下の式にしたがって各年次の年間収支と貯蓄残高を計算・記入すれば、キャッシュフロー表の完成です。
- 年間収支=収入-支出
- 貯蓄残高=前年末貯蓄残高+年間収支
貯蓄残高は貯金だけでなく、株や投資信託も含めた金融資産全体の合計額を書きます。
キャッシュフロー表が完成したので、ライフプラン表も完成です。お疲れ様でした。
ライフプラン表が出来上がったら、使いこなしてメリットを生かそう
ライフプランが出来上がり資金ショートしないことを確認すると一種の達成感が沸き上がりますし、その気持ちはとてもよくわかるのですが、ここで終わりではありません。
せっかくライフプラン表を作ったのですから、使いこなしてメリットを得ないといけません。
こういったライフプラン表作成のメリットを生かすべく、いろいろシミュレーションをしていきましょう。