HCDコンサルティング(旧・中川勉社会保険労務士事務所FPウェブシュフ)のブログ

介護状態に陥る確率は1/4。保険で備えるには確率が高すぎるので貯金で備えることにした。

2015年にライフプランを大幅に見直し、保険も大々的に見直しました。@web_shufuです。

民間保険会社の介護保険には元々加入していなかったのですが、念のため、公的介護保険の補償内容などを調べて、加入の是非を考えてみました。

結論としては、介護状態に陥るリスクは高すぎるので、保険ではなく貯蓄・資産運用で備えるべきだということになりました。

介護状態に陥る確率は1/4。介護費用総額は平均で約300万円

5人に1人は要介護、自己負担額は月3万~5万円 :日本経済新聞によると、

75歳以上の5人に1人は要介護。要支援を含めると、4人に1人

これだけ確率が高いと保険に加入して備えるのは適切ではない気がします。

何しろ保険は「めったに起きないものの、一たび発生すれば家計に破滅的な損害を与えうるリスク」に備えてやむを得ず入るものですからね。

介護状態に陥るリスクが1/4もあるなら「めったに起きない」とは到底言えません。

介護費用の自己負担は「月3万~5万円が目安」

生命保険文化センター調査によると、平均介護期間は4年7カ月。年間60万円と仮定すると、約5年で300万円

介護が必要な状態になった場合、介護費用として大体300万円見ておけば良いようです。

介護費用に目を向けても「家計に破滅的な損害を与えうる」などとは到底言えません。介護への備えは、保険ではなく、貯蓄や資産運用で対応すべきだと思います。

公的介護保険についても調べた

介護には貯蓄で対応すべきだ、と言いましたが実は私たちは介護保険に加入しています。

40歳以上になると公的介護保険に強制的に加入させられます。

公的介護保険は市区町村が運営しています。

保険料は公的医療保険の保険料と一緒に徴収されます。

要介護者や要支援者が受ける介護サービスの費用は自己負担1割

介護保険は、要介護認定によって要介護者または要支援者であると認定された方に対して、介護サービス費用を補償する制度です。

要介護者とは、寝たきりや認知症などのために常時介護を必要とすると見込まれる方です。

要支援者とは、虚弱等により常時介護を必要とする状態の軽減もしくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、日常生活を営むのに支障があると認められる方です。

要介護認定で要支援者または要介護者に認定されると、介護サービス費用の自己負担は1割に抑えられ、残りは公的介護保険が払ってくれます。

ただし、この「自己負担1割」には、下記のように要介護度に応じた月額上限が設けられています。

要介護度 支給限度 自己負担限度
要支援1 50,030円 5,003円
要支援2 104,730円 10,473円
要介護1 166,920円 16,692円
要介護2 196,160円 19,616円
要介護3 269,310円 26,931円
要介護4 308,060円 30,806円
要介護5 360,650円 36,065円

例えば、要介護度3の人は、介護サービスの費用のうち、269,310円までは自己負担1割です。

それを越える部分については全額自己負担です。

仮に、一月に利用した介護サービスの費用が合計で30万円だったとすると、以下のような計算で、

269,310×0.1+(300,000-269,310)= 57,621

自己負担額は57,621円となります。

医療費と介護費用の合計額には自己負担の上限が設定されている

医療費が青天井に膨らまないよう抑制してくれる制度が高額療養費制度でした。

しかし、介護費用が増大したときには、高額療養費制度は全く助けになりません。

そこで登場したのが高額医療・高額介護合算療養費制度です。

医療費と介護費用の合計額について、自己負担上限額を定めてくれるありがたい制度です。

高額医療・高額介護合算療養費制度は、高額療養費と同様、所得水準による区分で、自己負担額の上限が決まります。

医療費と介護費用の合計額の年間自己負担上限額は、所得区分ごとに以下のように定められています。

区分 70歳未満 70歳以上
区分ア 176万円 67万円
区分イ 135万円 67万円
区分ウ 67万円 67万円
区分エ 63万円 56万円
区分オ 34万円 31万円

サラリーマンは標準報酬月額によって区分ア~エに振り分けられます。

区分 標準報酬月額
区分ア 83万円以上
区分イ 53万円以上83万円未満
区分ウ 28万円以上53万円未満
区分エ 28万円未満
区分オ 住民税非課税

個人事業主や年金生活者など国民健康保険加入者の場合は、年間所得によって区分ア~エに振り分けられます。

区分 年間所得
区分ア 901万円超
区分イ 600万超901万円以下
区分ウ 210万超600万円以下
区分エ 210万円以下
区分オ 住民税非課税

要介護状態となって働けなくなったら、金融資産・不動産による不労収入によほど恵まれない限り、区分エかオになるでしょう。

介護を受けて働けなくなった場合の医療費と介護費用の合計については、全額自費負担となるサービスを使う場合でも、やはり月々5万円程度を考えておけば良いのではないでしょうか。

65歳以上と40歳以上とでは補償を受けるための条件が違う

介護保険では、65歳以上の人は第1号被保険者、40歳以上65歳未満の人は第2号被保険者となります。

第1号被保険者と第2号被保険者には、給付を受けられる条件に違いがあります。

第1号被保険者は、要介護者または要支援者になれば、その原因に関わらず、介護保険の給付の対象となります。

一方、第2号被保険者は、要介護者または要支援者になっても、その原因が、初老期認知症、脳血管障害、末期がん等でない限り、給付の対象とはなりません。

介護には公的保険と貯蓄で対応

保険というものは「ひとたび発生すれば破滅的な打撃があるが、発生確率は低い」リスクに対して備えるためにあるものです。

介護の平均的状態である「介護期間5年・費用総額300万円程度」というリスクに対しては、保険で備えるべきなのでしょうか。

私の価値観で判断すると、答えはノーです。介護費用が心配ならせっせと貯蓄するべきです。

介護は破滅的な打撃を与えない場合が多い

「介護期間5年・費用総額300万円程度」というのは、家計を破滅させるほどのものではありません。その間年金収入もあるのですから。

もちろん、個々の家庭によって事情が色々異なるため、家族が介護状態に陥ったときに家計が破滅的な打撃を受けるかどうかは、実際にライフプランを立ててシミュレーションしないと何とも言えません。

しかし、多くの家庭では、5年程度の介護期間なら家計が破滅するほどの影響はないでしょう。

発生確率が高すぎる

冒頭でも書きましたが、介護を受ける可能性は1/4もあるので、保険で備えるには高すぎます。

介護費用が非常に高額になる場合のみに備える保険は、検討に値する

「介護状態に陥る確率は高すぎるし、それによる打撃は家計を破滅させるほどではない」ということから、介護保険には入るべきではないと考えています。

ただし、介護状態が長期化(例えば10年以上)した場合のみに保険金が支払われるような介護保険があるなら、検討に値すると思います。

介護期間が長期化するほど、介護リスクは「発生確率が低いものの、ひとたび発生すれば破滅的な損害をもたらす」ものに近づくからです。


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