30代の公立学校女性教諭の方から、医療保険についての相談メールを受けました。
定年まで間においては、医療保険の必要性を感じておられないようです。
しかし、定年後の医療費の不安から、とりあえず必要性を感じていない医療保険に加入していらっしゃるとのこと。
この医療保険が必要であるか否かについてアドバイスを求められました。
相談内容
初めまして。
ウェブシェフさんの書いた記事を拝見させていただきました。(中略)
私も主人も30代公立学校教師です。
共に生命保険に加入しており、こちらは子どもが2人いるので続けていきたいと考えています。
掛け捨てで医療保険に加入しているのですが、〔以前から相談させていただいている○○の担当さんに最低限の内容でお願いしたもの)2人で10万ほど年払いしています。
年払いなので月々にすればかなり手頃なのかもしれず、安心を買っているという感覚でいましたが、いまいち腑に落ちないというのが正直な気持ちです。
定年までは必要ないかなと思っているのですがプランナーさんの意見だと、そのあと医療保険に加入しようとすると今より高くなり入るのが大変になるとのこと。
今入っておけばこのまま一生かわらず、しかも定年したら払わなくて済むとのことでした。
長生きしたいし、そちらの意見に気持ちが偏り、従ったのですがこの件についてご意見を頂戴したいのです。
現在のことは大変よく判りましたが、将来を含めて医療保険は必要ないと思いますか?教えてください。
保険は損をするようにできている
保険は加入者が損するようにできています。加入者の損が、保険会社の社員の給料原資です。
基本的には、リスクに対しては、保険よりも貯蓄で備えるべき
保険は損なので、なるべく加入しないのが基本です。
心配なリスクがあるなら、貯蓄で対応するのが基本です。
損を覚悟で保険に入るべきなのは、家計を破滅に至らしめるような事故に備える場合
しかし、損を覚悟で保険に加入するべき場合があります。
それは、めったに起きないものの、ひとたび起きれば家計を破滅に至らしめるような事故に備える場合です。
例えば、自動車運転中に前途有望な資産家の若者をはねて死亡させると、教師がいくら貯金に励んでも払いきれないほどの賠償責任を負います。
このリスクには貯蓄で対応することはできません。仕方なく損を覚悟で保険に入ります。
実際、免許を持てば自動車保険に入るのは常識ですよね。
老後の医療費は家計を破滅に至らしめるほどの金額となるのかどうか
さて、本題の「老後の医療費に備えて医療保険に入るべきかどうか」はどう判断すればいいでしょう。
老後の医療費が家計を破滅させるほどになるかどうかを調べれば判断できますね。
まず、老後の医療費がどれくらいかかるかを掴みにかかりましょう。
高額療養費制度から1月当たりの医療費の上限を把握する
退職して年金生活になった時、ひと月当たりの医療費が最大どれくらいになるかは、高額療養費制度を調べればわかります。
教師の方が年金生活に入ると、下の表の区分エ(年間所得210万円以下)に該当することが多いです。月当たりの医療費の上限が57,600円です。

1年間入院し続けても、医療費の自己負担は70万円未満だとわかります。
次に、70歳以上になった場合ですが、下記②に該当することが多いです。月当たりの医療費の上限は44,000円ですね。

1年間入院し続けても、医療費の自己負担は53万円未満だとわかります。
退職後の貯蓄や収入の状態にもよる1のですが、夫婦とも教員の場合「老後の医療費が家計を破滅させる」ことなど、とても考えにくいです。
実際、医療費で破産したという話は、お聞きになったことはないと思いますし、私も聞いたことはありません。
水準以上に恵まれている公務員では、医療費による家計破たんはほとんどないでしょう。
入院期間はどれくらい?
1年入院することなどめったにありません。
入院することになった場合、実際は、その期間がどれくらいになるか見てみましょう。
[img-link url=”http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/medical/3.html” title=”入院した場合、入院日数は何日くらい?|公益財団法人 生命保険文化センター”]
ガンの入院期間も意外に短いですね。
精神疾患でない限り、入院は長期化しにくいことがわかります。
精神疾患が長期化しても大丈夫?
精神疾患で入院した場合が心配かもしれませんが、これは患者の家族が患者を精神病院に閉じ込めるような形で入院させているケースが多いからです。
今は精神疾患も在宅医療が中心です。
精神疾患の在宅医療に対しては、高額療養費制度に加えて、さらに手厚い支援システムがあります。
[img-link url=”http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/promotion_4.html” title=”経済的な支援|こころの病気への支援や助成など|治療や生活へのサポート|メンタルヘルス|厚生労働省”]
まず、医療費自己負担額抑制システム(自立支援医療)が用意されています。
統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない場合は、月々の医療費自己負担額の上限は20,000円に抑えられます。
また、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない場合は、月々26,000円の特別障害者手当も受給可能です。
このあたりを考慮すると、たとえ治療が長期に渡る精神疾患に罹ったとしても、「老後の医療費が家計を破滅させる」ケースは考えにくいです。
老後の医療費が家計を破滅させるケースはとても考えにくい
結局のところ、老後の医療費が家計を破滅させるケースはとても考えにくいです。
老後の医療費支出は「めったに起きないものの、ひとたび起きれば家計を破滅に至らしめるような事故」ではありません。
ですから、医療保険に一切加入しないというのは、とても合理的です。
しかし、我が家は、夫婦ともども、医療保険に加入しています。
年間保険料が二人合わせて7,780円。
以下、その訳をお話しします。
保険証の効かない先進医療を受けるケースに備えるなら話は別
保険証のきく範囲でのみ医療を受ける場合は、老後の医療費が家計を破滅させるようなことはありません。
しかし、難病にかかって、保険証の効かない先進医療に頼るとなると話は別です。
[img-link url=”https://webshufu.com/evaluation-medical-treatment-at-patients-own-will/” title=”先進医療や未承認薬の治験は公的医療保険からわずかに補償される(評価療養)|FPウェブシュフ”]
先進医療を使うしかない状態に追い込まれるのは「めったに起きないものの、ひとたび起きれば家計を破滅に至らしめるような事故」の典型
先進医療に頼るしか病気の治療手段がないというケースは滅多にないです。
しかし、先進医療には、一度の治療に対する自己負担額が数百万円に上るケースがあるのは事実です。
先進医療を使いたくなるケースに備えるというのは、「めったに起きないものの、ひとたび起きれば家計を破滅に至らしめるような事故」に備える典型的な例になります。
先進医療に備えるなら医療保険に加入して先進医療特約を付けるしかない
以上のような考え方から、我が家では、先進医療に対してのみ保険をかけたかったのですが、そのような保険商品は今のところどこを探してもありません。
先進医療に備える保険商品は、医療保険に加入しないと利用できない先進医療特約しかありません。
先進医療特約をつけるために、渋々医療保険に加入して入院保障をつけました
保険は、一般の商品ではなく、勤務先の福利厚生の恩恵が受けられるものから検討しましょう
保険探しにあたっては、広く宣伝されている一般向け商品から探すのは、最後の最後と心得てください。
公立学校の教職員をはじめとする公務員には、民間共済や民間保険会社から、一般商品より条件のいい保険商品がたくさん出ています。
我が家は教職員共済の団体医療共済「トリプルガード」を使っています。
その中で、我が家が選んだのが、教職員共済の団体医療共済「トリプルガード」です。
[img-link url=”https://www.kyousyokuin.or.jp/products/triple/” title=”団体生命共済・医療共済|共済商品一覧|教職員共済”]
40歳未満の方なら、現行制度では、年額保険料2240円で、1000万円まで保証してくれる先進医療特約がつけられます。
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額1300円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
本当は先進医療特約部分だけにしたいところですが、入院保障には最低一口(日額1000円)分加入しないといけないので、そこはしぶしぶ加入しています。
あ、うちは夫婦とも40代半ばなので、41~60歳に適用される、以下の保険料を払っています。
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額2,950円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
一人当たりの年額保険料は3,890円、夫婦合計で年額7,780円です。
あくまで個人的意見ですが、教師の方に「どの医療保険がいいか」と聞かれたら、「トリプルガード」で「入院保障日額1000円」と「先進医療特約」を組み合わせて加入することを、いつもお勧めしています。
「トリプルガード」は90歳まで加入可能
「トリプルガード」は90歳まで加入可能です。60歳以降は保険料がぐんと高くなるのですが、それでも十分加入可能な金額です。
61~70歳の保険料
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額8,440円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
71~75歳の保険料
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額14,340円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
76~80歳の保険料
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額19,450円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
81~85歳の保険料
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額22,080円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
86~90歳の保険料
| 補償内容 | 保険料 |
|---|---|
| 入院保障日額1000円 | 年額26,640円 |
| 先進医療特約1000万円 | 年額940円 |
必要性を感じないのに、先進医療特約のためだけに加入している入院保障部分の保険料が高いのは、納得いかないところです。
高齢になったら医療保険をやめてしまうのも一つの手です。
しかし、高齢になってからでも、保険料が高すぎて加入できないというほどではないですよね。
80歳でも、夫婦合わせて40,000円で先進医療に備えることができるのは、個人的には魅力だと思っています。
高齢になった時に、比較的安価な保険料で、高額な医療費の出費に備えることができるという点が、「トリプルガード」の魅力だと思います。
「先進医療を使わないから医療保険に加入しない」という決断もあり
先進医療は、保険適用の一歩手前まで効能が認められている治療法ですが、それでも保険適応されている治療法に比べると、やや科学的根拠に欠けるのは事実です。
そこで、先進医療には手を出さない、という決断をする方もいます。
こういう方にとって、民間医療保険や先進医療特約は、利用する余地はありません。
「先進医療特約を使わないから、民間医療保険には一切入らない」というのも、合理的な選択だと思います。
- 本来は一度は真剣にライフプランを立てて、老後の経済状態を概算で把握しておくべきです。[img-link url=”https://webshufu.com/how-to-make-a-life-plan-with-excel/” title=”エクセルを使ったライフプランの立て方~ライフプラン表の作り方|FPウェブシュフ”] ↩
コメント
“公立学校教師「退職後の医療費に備えて、現役中から医療保険に加入する必要はありますか」” への11件のフィードバック
コメント欄に返事とはここの事でしょうか?ご提案の3点につきましては承知いたしました。お返事ありがとうございました。
もう一度ゆっくりと読ませていただき、明日またコメントさせて下さい。
そうです。
ここがコメント欄です。
私のほうも、時間を見て、いろいろと書き足しておきます。
拝見しました。
とても分かりやすく説明してくださり本当にありがとうございます。
ウェブシェフさんのサイトにたどり着き本当に良かったと思います。
保険は加入者が損をするようにできている。がとても印象的です。
貯蓄がある程度あれば解約しても問題ないのかなと思いはじめました。
実際怪我も入院もしたことがなく、医療といえば歯医者や皮膚科といった一回3000円もかからないような診療ばかりでこれといって給付を得られるようなものでもないのでピンとこないのですが、高額療養費制度というものは、一度に払う場合に適応されるのものと考えていいのでしょうか?(例えば病気や怪我の入院)文字はよく見ても実際お世話になったことがないのでよく分からずすみません。
うちの父親も元公務員で掛け捨てで医療保険入っていたようですが、月々5000円が退職後はキツイと感じるようになったみたいでどこかの銀行の特約みたいなのの1000円の保険に加入し直していました。生命保険のほうは払い込みが終わっているようなのですが、私の入っている医療保険は60で払い込みが終わるのに父のは終わらないものなんだと思うと本当にもったいないなと思ってしまいました。
しかしもったいないとわかってはいるものの、CMでもやっているような、今この年齢(定年くらいの女の人)でも月々○○○円!と言っているのでもし今やめても老後入ることも可能なのではとまだ考えてしまいます。老後子どもに迷惑をかけたくないという気持ちからです。
正直、無駄は嫌なのでなるべくやめたいのが本音なのですが決めきれずご相談させていただいてます。
申し訳ありませんがお付き合いいただけると幸いです。
杉本様、うれしいお言葉です。
御明察の通り、保険に入るかどうかを考えるときには、ご自身の貯蓄額はとても重要な判断要素となります。
高額療養費制度は、一度に支払う医療費に対してではなく、医療費の合計額に対して適用されます。少し詳しく言いますと、「同じ医院の同じ診療科に対する医療費支出を一月単位・世帯単位で合計したもの」に対して適用されます。
では、この後も、日々少しづつではありますが、力の及ぶ限り説明させていただきます。
よろしくお願いいたします。
ご回答ありがとうございます。
高額療養制度についてもだんだんわかってきてホッとしています。
ところで少し気になったのですが私の質問が載せられているこのページはパスワードがないと見られない仕組みなのでしょうか?
もちろん見られても構わないのですが、コメント欄に名前が載っているので少し気になりました。
コメント欄に関しては他の方には公開されないのでしょうか?教えていただけたらと思います。
よろしくお願いします。
杉本様、ご心配はごもっともです。
ページが他の方から見えている状態になっていないかどうか、不安に思われるのは当然です。
このページは、パスワードを入力した端末からしか見ることができません。
ご機会があったら、別の端末から、このページをご覧ください。
パスワード入力欄が登場し、杉本様からの質問など、本文は全く見ることができないはずです。
追記します。
このページは、相談が終わりましたら、消してしまう予定にしております。
杉本様の方で「もう相談することはない」と感じるタイミングが来ましたら、その旨ご連絡いただければと思います。
閲覧可能なのかという質問にもご丁寧にお応えしていただきありがとうございました。
安心しました。
でも同時に結果消してしまうのであれば、このやりとりは、私だけが得をしていて、なんだか申し訳ないなぁと思っています。
無償でここまでお応えしていただくなんて…。
本当に有難く、今の時代こんな事があるのか?と驚いています。
ご紹介いただいたトリプルガード、調べてみようと思います。
確かに年齢が上がるにつれて金額が跳ね上がりますが、その頃には子育てもひと段落していてお金の優先順位も変わってきているかなと思いました。
まだ主人に相談できていないのですが5月更新なので今一度検討してみたいと思います。
杉本様、少しはお役に立てたようでよかったです。
無償で対応させて頂いたことを気にされているようですね。でも、無償で相談させて頂いたのは、無償でも私に利益があるからですので、気にしないでください。
私はFPですが、主な収入源は、運営するウェブサイトに掲載する広告からの収入です。私の運営するサイトでは、1ページ当たり月100円程度の広告収入が見込めます。5年で6,000円となります。これは相談料に匹敵する金額です。私にとって、ウェブページを1ページ作ることは、相談料と同等の見返りがある事なのです。
杉本様からの今回のお尋ねは、偶然にも、私が次に作成しようとしていた記事とテーマが被る内容でした。現に悩んでいる方とやり取りさせて頂くことは、記事作成に大変役立ちます。杉本様のお尋ねにお答えさせて頂くことは「作れば相談料並みの収入が期待できるウェブページ作成のための有益な取材」だったのです。
そういうわけで、無償でやり取りさせて頂いたのは、それでも私に十分な利益が期待できる状況が偶然整っていたからであって、本当の無償奉仕ではありません。あまり気に病まないで下さい。
では、ご主人様とじっくりご検討下さいませ。
そして、納得のいく結論が出せましたら、ご連絡ください。
その後、当ページは消去します。
**************
追記1:
今回杉本様のとのやり取りをもとに作ったウェブページはこちらです。⇒公立学校教師は退職後に備えて民間医療保険に加入する必要があるか
このページは、杉本様とのやり取りのなかから、私がお答えさせていただいた内容のみを抽出して作りました。
杉本様のお名前はもちろん、個人情報の片りんすら掲載していません。そのため、杉本様から特に許可を得ることなく、既に一般公開しております。
万一、何か支障のある内容がありましたら、ご連絡ください。
************
追記2:
しばらく経つと、当ページの閲覧に際して再度パスワード入力を求められる場合があります。その点ご了承ください。
こんばんは。返信が遅くなり申し訳ありませんでした。
正直、主人には無理やり医療保険に入ってもらったので今回の悩みを打ち明け解約するのはとても言い出しにくいことでした。
私はすごく心配性な性格で、主人は楽観的というか医療保険については無頓着な方でしたので、説得するにあたり色々資料をもらったり聞いたりしてやってきたつもりでいました。
学資等についても悩んだり…。結局本当の答えって誰も教えてくれないと思いながらも保険の窓口的なところに相談してみたり…。
でも今回ダメ元で、こちらに相談してみて本当によかったと感じています。
まだトリプルガードについて調べられていませんが、先進医療についても知識が不十分なのでそこも勉強して早めに決めていきたいと思います。
主人には少し話ができたので前向きに変更の予定で進めたい気持ちです。
ウェブページのご説明もありがとうございました。
気持ちもすっきりしましたし、新たに作られたページもブックマークできましたし、これからも悩んだ時、先が不安になったとき、見返すことができるので有難いです。
近いうちにまた連絡してしまうかもしれませんが、今まで教えていただいた内容でとりあえず考えてみたいと思います。
ありがとうございました。
杉本様、こんにちは。
お金に関することで心配や悩みが出るのは当たり前ですので、お気に病まないでくださいね。
ただ学資の悩みに向き合うには、ライフプラン表の作成が不可欠だと思います。
医療保険について結論が出せましたら、少しずつ無理のない範囲で取り組まれてはいかがでしょう。
また、ご連絡はお気兼ねなく。ただ、私の事情ですぐに返事が出来ないこともありますので、その点はご了承ください。