【高額療養費のありがたさ】1か月の医療費が1億円かかったとき、自己負担額は何円でしょう?

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先日の日経新聞に、医療保険を検討する者として見逃せない記事がありました。

健康保険組合連合会(健保連)の集計によると、患者1人あたりの医療費が1カ月で1千万円以上だった例が、2016年度は484件となった。15年度に比べて件数は3割以上増え、過去最多になった。1カ月で1億円を超えた治療も2件あった。(医療費月1000万円以上、最多 1人あたり、昨年度484件 :日本経済新聞

ここで、1千万円とか1億円とか書かれているのは、保険が適用される(保険証が利く)医療費の総額です。

自己負担額はもっと少ないです。

では、1か月の医療費が1億円かかった時の自己負担額はいくらでしょう?

現役世代の医療費自己負担割合は原則として3割です。

原則通りなら自己負担は3,000万円ですが、実際は高額療養費制度でもっと少なくて済みます。

本記事では、高額療養費制度のありがたみを感じながら、1か月の医療費が1億円かかった場合の実際の自己負担額を計算します。

高額療養費による医療費自己負担上限額(70歳未満の場合)

高額療養費制度は、1か月の医療費が所得区分別に定められた一定額を超えると、超えた部分に関して、自己負担割合を1%(中上位所得者)または0%(低所得者層)としてくれる仕組みです。

それを数式に表したのが下記の表です。

公務員を含むサラリーマンは標準報酬月額(おおよその月給)を基準に、自営業者などサラリーマン以外の方は旧ただし書き所得(=前年の総所得金額等-33万円)を基準に、アイウエオの5段階に区分されます。

区分ア(標準報酬月額83万円以上)の場合

まずは最上位所得層である区分アから。医療費自己負担上限額の計算式は次の通りです。

252,600円(医療費-842,000円)×1%

まず252,600円に注目です。

単にきりの悪い数字に見えますが、実は252,600円=842,000円×30%なのです。

これを先ほどの式に代入するとこうなります。

842,000円×30%+(医療費-842,000円)×1%

区分アの医療費自己負担上限額の計算式が意味するところは、

ウェブシュフ
医療費が842,000円までなら30%(3割)負担。842,000円を超えた部分は1%負担。

ということです。

医療費総額と自己負担額の関係をグラフにすると以下のようになります。

医療費総額 自己負担額
100万円 254,180円
1000万円 344,180円
1億円 1,244,180円

高額療養費制度のおかげで、医療費の自己負担割合が途中から1%で済むようになります。

グラフは途中で下の方に折れ曲がります。

おかげで医療費が1か月で1億円かかっても自己負担額は124万円程度で済みます。

痛い出費ですが、人並みに金融資産があれば、家計が破たんするような出費ではありませんよね。

医療費総額の3割を支払う場合と比べれば、負担が劇的に軽くなります。

なお、傾き1%のグラフの式:y=0.01x+…の詳細ですが、

y=842,000×30%+(x-842,000)×1%
y=842,000×0.3+0.01(x-842,000)
y=0.01x+244,180

となります。…の部分はあまり重要ではありませんから、以後の説明では触れません。

興味のある方は、中学高校数学を思い出しながら、ご自分で…の数字を推定してください。

区分イ(標準報酬月額53万円~79万円)の場合

次に、2番目に高所得な区分イについて考えましょう。医療費自己負担上限額の計算式とその意味は次の通りです。

167,400円(医療費-558,000円)×1%
558,000円×30%(医療費-558,000円)×1%

ウェブシュフ
医療費が558,000円までなら30%(3割)負担。558,000円を超えた部分は1%負担。

医療費自己負担額のグラフは、区分アの時と比べて左で折れ曲がります。

医療費総額 自己負担額
100万円 171,820円
1000万円 261,820円
1億円 1,161,820円

区分ウ(標準報酬月額28万円~53万円)の場合

区分ウは簡単にサラっと。

医療費自己負担上限額の計算式とその意味は次の通りです。

80,100円(医療費-267,000円)×1%
267,000円×30%(医療費-558,000円)×1%

ウェブシュフ
医療費が267,000円までなら30%(3割)負担。267,000円を超えた部分は1%負担。

グラフはさらに左で折れ曲がります。

医療費総額 自己負担額
100万円 87,430円
1000万円 177,430円
1億円 1,077,430円

区分エ(標準報酬月額26万円以下)の場合

区分ウまでと異なり、医療費自己負担上限額は定数(57,600円)となります。

ですが、意味を考えるために、あえて計算式の形に書き換えてみます。

57,600円
57,600円(医療費-192,000円)×0%
192,000円×30%(医療費-192,000円)×0%

計算式の意味するところは、

ウェブシュフ
医療費が192,000円までなら30%(3割)負担。192,000円を超えた部分は0%負担。
ということです。

1か月の医療費が一定金額を超えたら、医療費の自己負担はゼロ円になるというありがたさです。

グラフはさらに左で折れ曲がったうえ、折れ曲がった後は水平線となります。

1か月の医療費が1億円かかっても、自己負担は57,600円です。区分ウとエの落差はすごいですね。

医療費総額 自己負担額
100万円 57,600円
1000万円 57,600円
1億円 57,600円

区分オ(住民税非課税者)の場合

現役で働いている間は関係なさそうな区分です。詳しい説明はしません。

医療費自己負担上限額は定数(35,400円)となります。

グラフは割愛します。

医療費総額 自己負担額
100万円 35,400円
1000万円 35,400円
1億円 35,400円

高額療養費による医療費自己負担上限額(70歳以上の場合)

70歳未満の方の医療費自己負担について詳しく見たので、次は70歳以上の方についてみていきましょう。

70歳未満の場合と一度比べてみましょう。

70歳以上になっても、70歳未満の場合とあまり違いはありませんね。

70歳以上となって変わるのは、

  • 所得区分の呼び方が変わり、
  • 住民税非課税者が2段階に区分され、
  • 一般と住民税非課税者には、外来診療の上限額も設定され、
  • 住民税非課税者の自己負担額はさらに少なくて済みます

ということぐらいです。

70歳を超えて医療費が月に1億円かかった場合、高額所得者ですら、自己負担はせいぜい120万円程度です。

年金暮らしになれば一般以下の区分になるでしょうから、自己負担は6万円未満で済みます。

結局、月の医療費が1億円の場合、自己負担は120万円程度

結局、医療費が月に1億円かかっても、自己負担はせいぜい120万円余りです。保険に入らなくても払えないお金ではないですよね。

また、医療保険に入ったところで、1カ月に120万円もの給付金が出るかと言えば疑問です。

そういうわけで、我が家としては、

ウェブシュフ妻
医療費が月に1億円かかる場合に備えて保険に入ることはありません。

とはいえ、保険に入るか入らないかは、個人の家計や価値観次第。

どういう結論を出しても正解ですが、なるべく客観的な情報に基づいて判断を下すことをお勧めします。

月の医療費が1億円という状態が1年間続いたらどうなるの?

1か月の医療費が1億円かかったときの自己負担額はもう分かりましたよね。

では、月の医療費が1億円という状態が1年間続くと、自己負担額はいくらになるでしょう?

1か月の自己負担額の12倍になるわけではありませんよ。それよりずっと安く済みます。

多数該当というありがたい仕組みがあるからです。

厚生労働省による上記資料をもとに、月の医療費が

  • 100万円かかる状態が1年間続いた場合
  • 1000万円かかる状態が1年間続いた場合
  • 1億円かかる状態が1年間続いた場合

について、

  • 1~3か月目の1月あたり自己負担額
  • 4~12か月目の1月あたり自己負担額
  • 一年間の自己負担額の合計金額

を、所得区分別に計算してまとめてみます。

区分ア・イ・ウの場合

まずは区分ア・イ・ウから。

月の医療費が1億円かかる状態が1年間続くと、自己負担の総額は、区分アの場合は約500万円となります。

区分イ・ウの場合も、自己負担の総額は数百万となります。

高額療養費制度のおかげで、総額12億円の医療費の自己負担が500万円未満に収まるわけですからありがたい話ですが、さすがに医療保険に入りたくなる状況です。

しかし、一入院支払限度日数が60日程度のよくある医療保険は、60日を超える入院を補償しないため役立ちません。

こんな医療保険に入るくらいなら、貯金したほうがましでしょう。

私が知る限り、数百万円~500万円の自己負担をカバーしてくれる医療保険はありません。

こういった面も、我が家が医療保険を不要だと結論付けた要因の一つとなっています。

ちょっと脱線しました。

区分エ・オの場合

区分エ・オの場合を見ていきましょう。

医療保険に入るくらいなら、保険料分を貯蓄に回して、一刻も早く60万円程度の貯蓄を作ることを目指すべきです。

貯蓄ができる前に不幸にも大病を患ったら、医療費自己負担分の60万円は親兄弟を頼りましょう。

親兄弟が頼れなくても、勤務先の従業員向け貸し付け制度や福祉資金による貸付けなどで、60万円は十分乗り切れると思います。

働けなくなって収入がなくなることについては、傷病手当金でカバーしましょう。

足りない部分は、親兄弟や勤務先からの借り入れで間に合わなければ、保険を検討しないといけないかもしれません。

しかし、その場合でも、よくある医療保険はたいして役立ちません。60日を超える入院を補償してくれないわけですから。

保険を考えるなら、所得補償保険か就業不能保険がいいと思います。

我が家も所得補償保険には加入しています。

公務員や一部サラリ―マンにはさらに手厚い高額療養費制度がある

高額療養費制度によって医療費の自己負担がどれだけ少なく済んでいるか、という話をここまで延々としてきました。

ただ、ここまでの話は、高額療養費制度の最低基準です。

公務員や一部サラリーマンには、最低基準に加えて、

  • 高額療養費の付加給付
  • 従業員互助会や労働組合からの給付

などの上乗せ給付が行われます。

上乗せ給付があるので、公務員や一部サラリーマンの医療費自己負担額は、とても少なくなります。

三重県の公立学校教師は恵まれている

三重県の公立学校教師の場合、高額療養費の付加給付が適用されたうえ、教職員互助会からも給付が行われます。

医療費の自己負担額は驚くほど少なくなります。

三重県の公務員の1か月あたりの医療費自己負担額は、所得水準にかかわらず、1か月5,100円未満に抑えられます。

月の医療費が1億円でも医療費自己負担額は1か月5,100円未満です。

その状態が1年間続いても、医療費の自己負担額の総額は61,200円(=5,100円×12)未満です。

三重県にかかわらず、公務員の医療費自己負担額には、1か月あたり数千円から数万円程度の上限が設けられています。

この点では公務員は恵まれていますね。

保険診療しか利用しないのであれば、公務員に医療保険はいらないと思います。

シャープ社員も恵まれている

公務員以外では、一部のサラリーマンも恵まれています。

例えば、2016年に経営危機に見舞われたシャープですが、それでも社員は恵まれています。

社員の医療費自己負担額は、所得水準にかかわらず、1か月あたり25,100円未満に収まります。

月の医療費が1億円でも医療費自己負担額は1か月25,100円未満です。

その状態が1年間続いても、医療費の自己負担額の総額は301,200円(=25,100円×12)未満です。

保険診療しか利用しないのであれば、シャープの社員もまた、医療保険は不要だと思います。

中小企業でも恵まれているところはある

シャープの例を出すと大企業だけが恵まれていると思われるかもしれませんが、中小企業でも恵まれているところは恵まれています。

例えば、関東のIT系の中小企業が加入する関東ITソフトウェア健康保険組合では、加入企業の従業員の医療費自己負担額は1か月あたり20,100円未満となります。

当組合では付加給付制度を実施しているため、保険医療機関等で受診した際の支払額(「入院」「外来+調剤」別)が20,000円を超えたときはその超えた額が一部負担還元金等(付加金)として給付されます。高額療養費に該当しない場合でも一部負担還元金等(付加金)は給付されます。一部負担還元金等(付加金)は100円未満切捨、1,000円未満不支給です。(高額な医療費がかかったとき | [ITS]関東ITソフトウェア健康保険組合

中小企業に勤務するサラリーマンでも、大企業シャープの社員より恵まれているケースもあるわけです。

医療保険を検討するなら、自分が加入する健康保険組合や労働組合・従業員互助会などから医療費の補助をどれだけ受けられるかを調べておかないといけませんね。

まとめ:1か月の医療費が1億円かかったら、自己負担額はいくらでしょう?

最後に、冒頭での問いかけ

ウェブシュフ妻
一か月の医療費が一億円かかったら、自己負担額はいくらでしょう?

に対する答えをまとめておきましょう。

  • 公務員や、恵まれている一部サラリーマンの場合は、数千円から数万円。
  • それ以外の方は、人並み以上の所得があれば、100万円オーバーも有り得る。

次に途中で設定した問いかけ

ウェブシュフ
月の医療費が1億円という状態が1年間続くと、自己負担額はいくらになるでしょう?

に対する答えをまとめると、

  • 公務員や、恵まれている一部サラリーマンの場合は、数万円から数十万円。
  • それ以外の方は、人並み以上の所得があれば、数百万円となることもあり得る。

医療費の自己負担額は、職業・勤務先・所得水準によって全然違う

医療費の自己負担額は、職業・勤務先・所得水準によって大きく違います。

医療保険について検討するときは、自分の自己負担額について、正確な情報を収集しないといけません。

それをしないで、いろいろな人が「医療保険は必要。」「いや、医療保険は不要」と言っているのを参考にしても、まったく意味がありません。

人の意見を聞くのは、調べるべきことを調べてからにしましょう。