ライフプランを立てたり保険を選んだりするには、退職金を計算しないといけません。
教師や公務員の方は、条例や規則をきちんと調べれば、かなり正確に退職金が分かります。
しかし、これをやっていない人はかなり多いのではないでしょうか。
退職手当=(退職日給料月額+教職調整額)×支給率+調整額
公務員の給料や手当は条例で定められています。
三重県の教職員の退職金については、公立学校職員の退職手当に関する条例で決められています。
この条例によれば、退職手当の計算式は以下のようになります。
退職手当=(退職日給料月額+教職調整額)×支給率+調整額
簡単ですね。一般の公務員の方は教職調整額をゼロにすればいいです。
(退職日給料月額+教職調整額)には「給料の調整額」が加算される場合もあります。
ただ、該当するケースはごく一部です。我が家としては「給料の調整額」は無視しました。
退職日給料月額は定年退職時の職務の級と号で決まる
退職日給料月額は、定年退職時の給料月額のことです。これは定年退職時の「職務の級」と「号」で決まります。
まずは現在の級と号を調べましょう。これらは給与明細に載っています。
級とは職務の重さを階級化したもの
給与明細によると、私の妻の「職務の級」は現在2級です。「職務の級」とは職務の重さを階級化したものです。
○公立学校職員の初任給、昇格、昇給等の基準に関する規則(三重県)の「中学校、小学校教育職給料表級別標準職務表」を確認すると…
妻は、教頭や校長を目指す気は無いので、定年退職時も2級です。
号とは勤続期間に勤務評定を加味したもの
給与明細を確認すると、私の妻の「号」は現在119号でした。号とは勤続年数に勤務評定を加味して数値化したものです。
三重県の中学校・小学校教育職給料表をみると、妻の現在の給料月額が分かります。当然ですが、給与明細の給料月額395,000円と同じでした。
地方公務員の号は、国家公務員と同様、勤務評定次第で上がり方が変わります。号は通常1年間で4つ上がります。
妻は退職まで16年あります。そうすると、あと60号以上UPしそうですが、そうは問屋が卸しません。
2級の号は最高で157号までです。
妻の給料月額は、157号の410,100円で頭打ちになります。
結局、退職日給料月額はいくらか?
妻が教諭でいる限り、退職日給料月額は410,100円と考えて良さそうです。
教職調整額は給料月額の4%
教員の勤務態様の特殊性を踏まえ、教員については、勤務時間の内外を問わず包括的に評価した処遇として、時間外勤務手当を支給しないこととし、その代わりに、給料月額の4パーセントに相当する教職調整額を支給。(中央教育審議会 初等中等教育分科会 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第10、11回)議事録・配付資料 [資料4-2]-文部科学省)
教員はわずかな教職調整額の支給と引き換えに、残業代を一切貰うことなく残業しなければなりません。教職調整額は教職がブラック化した元凶です。
おっと怒りのあまり話がそれました。今は退職金の計算中でした。
文部科学省のページからわかるように、教職調整額は給料月額の4%です。
私の妻の定年退職時における教職調整額は410,100円×4%=16,404円となります。
支給率は早見表からすぐにわかる
退職手当はごく簡単な計算式で求められることが分かりました。
このうち支給率は退職手当の基本額支給率早見表を見れば簡単に分かるようになっています。
何通りかに場合分けされていますが、定年退職の場合は「5条、勤続25年以上」のところを見ればいいです。
私の妻の場合、定年まで勤めると勤続年数が38年になるので、支給率は47.709だとわかりました。
調整額は県庁などの人事担当部署に問い合わせるとよい
調整額については公立学校職員の退職手当に関する条例 第六条の四で規定されていますが、一度読んだくらいでは何を言ってるか分かりません。。。
そこで正確さを若干犠牲にしつつ精一杯分かり易く翻訳すると…
調整額は「定年退職直前の60ヵ月について、月ごとに調整月額を求めて全て合計したもの」ということになります。
調整月額は「公立学校職員の退職手当に関する条例 第六条の四」の中で以下のように決められていますが…
区分 | 金額 |
---|---|
第1号区分 | 70,400円 |
第2号区分 | 65,000円 |
第3号区分 | 59,550円 |
第4号区分 | 54,150円 |
第5号区分 | 43,350円 |
第6号区分 | 32,500円 |
第7号区分 | 27,100円 |
第8号区分 | 21,700円 |
第9号区分 | 0円 |
私の妻がどこに区分されるかを、三重県教育委員会小中学校給与班に電話して確かめると、定年時は間違いなく第5号区分に該当するとのことでした。
調整額は43,350円×60ヵ月=2,601,000円です。
公立小中学校教諭が定年まで勤めたときの退職金は2300万円弱
さて、私の妻の退職金を計算してみましょう。
退職手当=(退職日給料月額+教職調整額)×支給率+調整額で、
項目 | 金額(円) |
---|---|
退職日給料月額 | 410,100 |
教職調整額 | 16,404 |
支給率 | 47.709 |
調整額 | 2,601,000 |
ですから、
退職手当
=(410,100+16,404)×47.709+2,601,000
≒22,949,079
私の妻の退職金は2300万円弱となることが分かりました。
現行制度に基づいて退職金を計算しておきましょう
ライフプラン相談をしていると、民間企業のサラリーマンや自営業者の方からは「退職時に事業がどうなっているかわからないから退職金なんて計算できない」と言われます。
確かにそうです。予定は未定ですからね。
だからと言って、退職金を全く計算しないと、老後の予定が全く立ちません。
公務員を含めたサラリーマンの方は、まず、現行制度における正確な退職金の額を求めておきましょう。
そして、制度変更時にそれを修正することで、常に退職金の額をおおよそ把握していくのが望ましいです。
自営業の方でも、小規模企業共済や確定拠出年金などの退職所得について、「今と同じ拠出の仕方だと仕事を辞めたときにどれくらいの収入を得られるか」というのは計算することができるはずです。
退職金等による収入はきちんと計算しておきましょう。