妻は公務員で中学教師です。@web_shufuです。
以前に妻の老後の年金額を調べようとして共済組合に試算を依頼したら、50歳未満の組合員からの老齢年金の試算を受け付けていないと言われました。
その時は、地方公務員向け年金試算サイト「地共済年金情報ウェブサイト」がまだ立ち上がっていなかったので、困りました。
やむなく、共済組合に、障害年金の試算を依頼して、その結果から老齢年金の金額を計算しました。
今やあまり必要のないノウハウですが、かなり苦労したので、激闘の記録を残しておきたいと思います。
公務員の年金は3階建て
年金と一口に言いますが、公務員の年金は3階建ての構造になっています。
上の例は老齢年金(老後の年金)ですが、障害年金も遺族年金も同じ3階構造です。
老後の年金のうち1階部分は自力で計算できる
1階部分の老齢基礎年金の金額は簡単に計算できます。老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構によると、老齢基礎年金=(780,100円)×(納付済み月数)÷(480か月)です。
ふつうは約78万円
公立学校で定年まで教師を勤め上げた人は、学生時代の納付さえきちんとしていれば、納付済み月数が480となります。その場合、老齢基礎年金の年額は780,100円となります。
学生時代に滞納がある人は、その月数を480から差し引けば納付済み月数が分かりますから、計算式にあてはめれば簡単に求めることができますね。
私の妻の場合はというと、
[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]私はきっちり払っているわよ[/bubble]
とのことなので、私の妻の老齢年金は780,100円です。ただ、この年金額はあくまでも65歳で受給を開始した場合のものです。
受給開始時期を繰り下げるともっと増える
実は、年金の受給開始時期は、繰り上げることも繰り下げることもできます。
繰り上げる場合は、一月繰り上げるごとに年金額が0.5%ずつ減らされます。繰り下げる場合は、一月繰り下げるごとに0.7%ずつ増えます。
繰り上げも繰り下げも限度は5年間(60か月)です。つまり年金の受給開始時期は60歳から70歳の間で自由に決めることができるのです。
私の妻で言えば、年金の受給開始時期を65歳から5年繰り下げて70歳とした場合、年金額は780,100円×(1+0.007×60)=1,107,742円となります。
また、年金の受給開始時期を65歳から5年繰り上げて60歳とした場合は、年金額は780,100円×(1-0.005×60)=546,070円となります。
少し脱線しましたが、本記事では、65歳から支給を開始する前提で話を進めます。
しかし2階3階部分は自力計算不可能
老齢基礎年金は計算が簡単でしたが、2階部分の老齢厚生年金、3階部分の職域加算は計算が面倒です。
老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構によると、以下の3つを足したものが、2階部分の老齢厚生年金の年金額となります。(計算式は平成28年6月のもの)
- 平均標準報酬月額×(7.5/1,000)×(平成15年3月以前の被保険者期間の月数)×0.998
- 平均標準報酬額×(5.769/1,000)×(平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×0.998
- 1,626円×480月-772,800円×(昭和36年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数/480月)=380円
3番目の380円はごく少額なのでこの記事では今後無視します。
3階部分の職域加算の額は以下の二つを足したものになります。
- 平均標準報酬月額×(1.5/1,000)×(平成15年3月以前の被保険者期間の月数)×0.998
- 平均標準報酬額×(1.154/1,000)×(平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×0.998
長めの小難しそうな式が出てきましたけど、ここでは平均標準報酬月額、平均標準報酬額、被保険者期間の月数、という3つの数値が分かれば老後の年金は自力で試算できるということだけを気に留めておいてください。
ただ、これらの数値は年金記録を見ないとわからないので、実際は2階3階部分の年金額を自力試算するのは不可能です。
老後の年金の2階3階部分を試算してくれるよう共済組合に依頼すると拒否された
2階3階部分の年金を自力で試算することは難しいので、我が家では公立学校共済組合三重支部に老後の年金の試算を依頼しました。
しかし、
[bubble speaker=”担当者” imgurl=”/img/male-biz.png” type=””]50歳未満の方による老後の年金の試算依頼は受けていません。[/bubble]
とのこと。おそらく、いざ年金受給の段になって、「年金の額が試算より少ないのはどういうこと?」などとクレーム含みで問い合わせる人がいるからなのでしょう。
障害年金の2階3階部分の試算は引き受けてもらえる
老齢年金の試算を断られたので、仕方なく障害年金の2階3階部分(障害厚生年金+職域加算)の試算を依頼しました。
[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]老後の年金額が知りたいのに障害年金を試算してどうすんの?[/bubble]
私の妻から突っ込まれました。ごもっともです。
実は障害年金の額が分かれば老齢年金の額も計算できるようになる
障害年金の2階3階部分を試算してもらうのは、それが分かれば老齢年金の2階3階部分の計算に応用できるからです。
平均標準報酬月額、平均標準報酬額、被保険者期間の月数が登場します。2階部分の障害厚生年金(年額)は以下の二つを足したものですし、
- 平均標準報酬月額×(7.5/1,000)×(平成15年3月以前の被保険者期間の月数)×300/(被保険者期間の月数)×0.998
- 平均標準報酬額 ×(5.769/1,000)×(平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×300/(被保険者期間の月数)×0.998
3階部分の障害年金の職域加算(年額)は以下2つを足したものになります。
- 平均標準報酬月額×(7.5/1,000)×(平成15年3月以前の被保険者期間の月数)×300/(被保険者期間の月数)×0.998
- 平均標準報酬額 ×(5.769/1,000)×(平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×300/(被保険者期間の月数)×0.998
またまたややこしい式が出ました。重要なのは、障害年金の2階3階部分を計算する際にも、老後の年金の2階3階部分を計算する際と同様に、平均標準報酬月額、平均標準報酬額、被保険者期間の月数が使われるということです。
つまり、障害年金の試算を依頼して、そこに平均標準報酬月額、平均標準報酬額、被保険者期間の月数を明らかにした計算過程を付けてもらえれば、老齢年金の2階3階部分も計算できるようになるのです。
共済組合に障害年金の試算依頼をする流れ
というわけで、我が家は共済組合に対して障害年金の2階3階部分の試算を依頼しました。実際の依頼手続きの流れは以下のようなものでした。
まずは公立学校共済組合三重支部に電話して、
[bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]老齢年金の額を自分で試算するための材料として障害年金の試算結果を使いたい[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]そのために平均標準報酬月額、平均標準報酬額、被保険者期間の月数を明らかにした計算過程を付けてもらいたいです。[/bubble]
と伝えました。
[bubble speaker=”担当者” imgurl=”/img/male-biz.png” type=””]所定の試算依頼書に記入後郵送してください。[/bubble]
と言われましたので、そのように準備しました。[img-link url=”http://www.kouritu.go.jp/mie/tetsuduki/dl/nenkin/index.html” title=”諸届用紙ダウンロード:公立学校共済組合三重支部”]
また、
[bubble speaker=”担当者” imgurl=”/img/male-biz.png” type=””]人事記録カードのコピーも付けてください。[/bubble]
とも言われたので、妻に学校で人事記録カードをコピーしてもらいました。
また、
[bubble speaker=”担当者” imgurl=”/img/male-biz.png” type=””]障害年金の試算に必要な初診日、障害認定日、障害等級を指定してください。[/bubble]
とも言われたので、別紙を用意して以下のように書きました。
- 初診日:平成27年7月1日
- 障害認定日:平成27年9月1日
- 障害等級:2級
また、今回の試算依頼の目的は
- 平均標準報酬月額、平均標準報酬額、被保険者期間の月数を明らかにした計算過程を手に入れて老齢年金の試算を自分でする
ことにありますからその旨も念押しするべく別紙に記入しました。
これで依頼に関する書類作成は完了です。
- 試算依頼書
- 試算依頼の趣旨を記入した別紙
- 人事記録カード
以上の3書類を間違いなく封入して郵送し、依頼手続きは終了しました。後は試算依頼の結果を待つだけです。
障害年金の試算結果から老齢年金を試算する
公立学校共済組合三重支部からの結果は以下の通りでした。障害年金の2階3階部分は1,036,400円(年額)で、
- 平均標準報酬月額…320,724円
- 平均標準報酬額…558,347円
- 平成15年3月以前の被保険者期間の月数…108月
- 平成15年4月以後の被保険者期間の月数…150月
であることが分かりました。これらの数値は、平成27年9月1日に退職してその後一切働かなかった場合に、老後に受け取れる年金がどうなるかを計算するのにも使えます。
しかし、我が家が計算したいのは、私の妻が定年退職した場合の老後の年金額です。妻の定年退職日は平成44年3月31日ですから、その場合について平均標準報酬月額、平均標準報酬額、平成15年3月以前の被保険者期間の月数、平成15年4月以後の被保険者期間の月数を改めて計算しないといけません。
平均標準報酬月額と平成15年3月以前の被保険者の月数
まず、平均標準報酬月額と平成15年3月以前の被保険者の月数について考えます。どちらも平成15年以前の話なので、退職日が平成27年9月1日であろうが、平成44年3月31日であろうが変動はありません。したがって、妻が平成44年3月31日に定年退職した場合も
- 平均標準報酬月額…320,724円
- 平成15年3月以前の被保険者期間の月数…108月
となります。
平均標準報酬額と平成15年4月以降の被保険者期間の月数
問題は、平均標準報酬額と平成15年4月以降の被保険者期間の月数です。これらは退職日が遅くなればなるほど増えていく数値です。改めて計算する必要があります。計算には下記のフォーマットが便利です。
- (平均標準報酬額)=(平成15年4月以降の給与賞与合計)÷(平成15年4月以降の「被保険者期間の月数」)
- (平均標準報酬額)×(平成15年4月以降の「被保険者期間の月数」)=(平成15年4月以降の給与賞与合計)
という関係をフルに使います。
①=558,347×150=83,752,050
②については、平成15年4月1日から平成44年3月31日までの月数を普通に求めます。②=(44-15)×12=348です。
150+③=348なので、③=348-150=198
④のh27/9/1~h44/3/31の平均標準報酬額は次のように考えます。年収がこの先一定だということにして、現在の年収(つまり12か月間の給与賞与合計)を12で割って求めます。私の妻の年収は平成26年現在750万円だったので
④=7,500,000÷12=625,000となります。
以下
⑤=③×④=198×625,000=123,750,000
⑥=①+⑤=123,750,000+83,752,050=207,502,050
⑦=⑥÷②=207,502,050÷348=596,270
計算結果をフォーマットにすべて記入するとこうなります。
- 平均標準報酬額…596,270
- 平成15年4月以降の被保険者期間の月数…348
老後の年金額の2階部分を計算
さて、ここでやっと、老後の年金額(2階3階部分)の計算をするのに必要なデータが集まりました。
- 平均標準報酬月額…320,724
- 平成15年3月以前の被保険者期間の月数…108
- 平均標準報酬額…596,270
- 平成15年4月以降の被保険者期間の月数…348
2階部分の老齢厚生年金の年金額は以下の二つを足したものです。
- 平均標準報酬月額×(7.5/1,000)×(平成15年3月以前の被保険者期間の月数)×0.998
- 平均標準報酬額×(5.769/1,000)×(平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×0.998
計算すると、
320,724×0.0075×108×0.998+596,270×0.005769×348×0.998=1,453,951
2階部分の金額は1,453,951円だとはじき出されました!!
老後の年金額の3階部分を計算
3階部分の職域加算の額は以下の二つを足したものになります。
- 平均標準報酬月額×(1.5/1,000)×(平成15年3月以前の被保険者期間の月数)×0.998
- 平均標準報酬額×(1.154/1,000)×(平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×0.998
計算すると以下の様になります。
320,724×0.0015×108×0.998+596,270×0.001154×348×0.998=290,831
しかし、3階部分は年金一元化によって「職域加算」から「年金払い退職給付」に移行し、「年金払い退職給付」の額は「職域加算」の9割程度に抑えられますので、290,831×0.9=261,747を3階部分の金額と考えておきます。
そのうえ、半額は20年間で支給打ち切りの有期年金です。
1階~3階部分の合計は確かに240万円台になった
780,100+1,453,951+261,747=2,495,798
というわけで私の妻の年金額は2,495,798円と弾き出されました。
教師の年金は約240万円/年だという記事を書いたことがあるのですが、ほぼその通りの結果となりました。