保険は損を覚悟してしぶしぶ入るものなのですが、保険料の支払いは長期に及ぶため、住宅の次に高い買い物になります。
保険で後悔したくないところです。もし、契約後に後悔したら、クーリング・オフを有効に使いましょう。
いったん保険を契約しても、契約を無かったことにすることができます。
クーリング・オフとは
一度結んだ契約について、頭を冷やして考え直す時間的猶予を消費者に与えるための制度です。
一定の条件を満たせば、クーリング・オフによって申し込みを撤回することができ、一度結んだ契約も最初から無かったことにすることができます。
これらの内容は特定商取引法で規定されていますが、保険については別の法律で細かく規定されています。
保険のクーリング・オフは保険業法で規定されている
保険のクーリング・オフは保険業法第三百九条で規定されています(保険業法は保険業界を監督するための法律です)。
クーリング・オフは、消費者が一度結んだ契約を、何らのペナルティーも受けることなく、無かったことにすることができる特権です。クーリングオフに理由はいりません。
解約では払い込んだ保険料は戻りませんが、クーリング・オフでは払い込んだ保険料が返金されます。
ですからその特権の行使にはかなり厳しい条件が付けられます。
クーリング・オフの仕方~書面で解約の意思表示を行う
保険契約のクーリング・オフは、一般のクーリング・オフと同様、書面で手続きを行わなければなりません。電話など口頭で行うことはできません。
書面はもちろんハガキでもいいのですが、「届いてない」などと言いそうな相手には、内容証明郵便で出した方がいいかもしれません。
書面の書き方
生命保険文化センターによるクーリング・オフ文例はこちらです。これに沿った書式で書けばいいでしょう。
○○生命保険相互(株式)会社御中 私は契約の申込撤回を行います。
契約者 文化千太
領収書番号 12345678
住所 東京都千代田区丸の内3-4-1
氏名 文化千太 印(契約申込みから契約成立までの流れと重要事項|公益財団法人 生命保険文化センター)
また、日本損害保険協会 – 損害保険Q&A – 共通 – Ⅳ.損害保険の契約についてによる文例は以下のような感じです。
下記の保険契約をクーリング・オフします。
契約者の氏名 ××××(押印)
住所 ××××
連絡先電話番号 ××××
契約申込日 ××××
保険種類 ××××
証券番号 ××××
保険料領収証番号 ××××
取扱営業店 ××××
取扱代理店名 ××××
その他、
- 保険料の返還口座の指定
- クレジットカードで保険料を支払った場合にはカード会社名
なども記載した方がいいですね。詳しくは保険会社に問い合わせてください。
ク―リング・オフができるのは8日間
クーリング・オフができる期間は、保険会社から「保険契約の申込みの撤回等に関する事項を記載した書面(契約前交付書類の注意喚起情報)を交付された日から数えて8日間です。期限を過ぎるとクーリング・オフはできません。
なお、書面をネット経由で受け取った場合、PCやスマホなどの端末にそのファイルが到達した日が、書面を交付された日となります。
また、書面を交付された日が申込日より早い場合は、クーリング・オフができる期間は申込日から数えて8日間となります。
消費者が結んだ保険契約しかクーリング・オフできない
クーリング・オフは消費者保護のための制度です。
事業や営業のために結ばれた契約や、法人が結んだ契約は、クーリング・オフの対象外です。
消費者自ら自発的に結んだ契約はクーリング・オフできない
クーリング・オフは、「業者に勧誘されるままに空気に流されて契約しちゃった…[/bubble]
という場合に、契約を最初から無かったことにする機会を消費者に与えるための制度です。
したがって、業者に勧誘されるままに空気に流された要素が見当たらない契約は、クーリング・オフの適用外です。
消費者自身が契約にノリノリならクーリング・オフできない
勧誘されるまでもなく、契約する気満々で契約した人までクーリング・オフで保護する必要はありませんよね。
- 契約目的で訪問する旨の予約をして営業所、事務所で保険契約を申込んだ場合
- 申込者が指定した場所で申込みをした場合
- 申込者が郵便、FAX、PCスマホなどからインターネット経由で通信販売の保険に申し込んだ場合
保険料等の払込みを口座振込で行った場合も原則としてクーリング・オフできない
どうしても保険契約を無かったことにしたいなら保険料は振り込みませんよね。
だから、保険料等の払込みを口座振込で行った場合は、原則としてクーリング・オフできません。
ただ、例外があります。それは、
- 保険契約の相手方である保険業者
- 保険募集をおこなった保険業者
のどちらかに口座振り込みを依頼した場合は、クーリング・オフの対象になります。
例えば、A銀行から勧誘されて契約した保険の保険料の振り込みを、A銀行の本・支店やATMから行った場合は、クーリング・オフの対象となります。
医師の診査を受けた場合、既存契約の更新・更改・変更の場合もクーリング・オフは適用されない
その他、以下のような場合も、消費者自ら自発的に契約を結んだと判断されて、クーリング・オフの対象外となります。
- 医師の診査が契約成立の条件になっている場合で、診査を受診した場合
契約の成立が嫌なら診査を受けなきゃいいだけなので、クーリング・オフでわざわざ保護する必要はありませんね。
- 既存契約の更新・更改・変更の場合
放置すれば契約終了となる保険契約をわざわざ更新した人に、クーリング・オフによる保護は必要ないですよね。
その他クーリング・オフできない保険契約
そのほか以下のような保険契約も、クーリング・オフの適用除外となります。
- 財形貯蓄がらみの保険契約
- 1年以内の短期保険契約
- 変額保険や外貨建て保険などの保険料がハイリスク運用される保険契約
- 自賠責保険のように強制加入の保険
契約を無かったことにする方法はクーリング・オフだけではない
保険に限らず、一度成立させた契約を無かったことにする方法として、一番メジャーなのがクーリング・オフです。
しかし、契約を無かったことにしたり、早目に解約する方法はほかにもあります。
特定早期解約制度
変額保険や外貨建て保険などの保険料がハイリスク運用される保険契約は、クーリングオフの対象とならない場合があります。
しかしその場合でも「特定早期解約」を行うことができます。
保険契約成立日またはこれに近接する日から起算して10日以上の一定の日数(保険会社が任意に設定)を経過するまでの間に限って、手数料等が差し引かずに解約することを認めてもらえず制度です。
契約者価額(解約までの払込保険料総額に運用成績を加味した金額。通常は時価相当額)に、契約時に控除された手数料が加算されて返金されます。
ふつうに解約する
クーリングオフや早期解約の期限が過ぎてしまい、「クーリングオフも早期解約もできない場合はどうすればいいの?」
という方がいますが答えは簡単です。普通に解約すればいいですね。
確かに既に払った保険料は返ってきませんが、いろいろ考えた結果契約を取り消したいと考えたのなら、クーリングオフにこだわらず解約するのが正解です。
追記
クーリングオフに関していくつかご質問を受けたので回答します。
転換した場合のクーリングオフ
転換は既存契約を解約して新規に保険契約を結ぶ方法の一形態です。したがって転換後の保険契約もクーリングオフの対象となります。
担当外交員にペナルティーはあるの?
生命保険でクーリング・オフや早期解約をした場合、担当者にはどんなペナルティーがいきますか? – Yahoo!知恵袋によると、自分の顧客の保険契約継続率の悪い外交員は給与ボーナス等の処遇が悪くなるようです。
外交員をしている親戚や知り合いの勧誘で結んだ保険契約はクーリングオフしにくいですね。