高額療養費制度は医療費の自己負担額に限度を設定してくれる制度です。
この制度のおかげで、どんなに治療費が膨らんでも、自己負担が際限なく膨らまないようになっています。
ところが、2017年、2018年と2年続けて、70歳以上の高齢者の自己負担限度額が引き上げられます。
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といったセールストークが増えるかも知れませんが、老後の医療費対策として、医療保険は大して有効ではありません。
外来医療費の自己負担限度額が引き上げられる
標準的な所得の人では、2017年8月から外来医療費の自己負担額限度額が、一月あたり14,000円に引き上げられます。さらに2018年8月には18,000円まで引き上げられます。
これだと年間の外来医療費は最大で216,000円(=18,000円×12)かかる計算となるのですが、負担軽減策として新たに年間の自己負担額限度額が設定され144,000円となります。
次の表は、月間の外来医療費合計が100万円となった場合の自己負担額です。
100万円と言っても、70歳以上の方の医療費自己負担割合は、現役並み所得者が3割、普通の人が2割です。
病院窓口での支払いは、現役並み所得者が30万円、普通の人が20万円となります。
そこから高額療養費制度によって一定のお金が戻ってきて、その結果トータルでの自己負担額がどうなるかを表したのが、上の表です。
所得の多い方ほど、自己負担額限度額の引き上げ幅が苛烈なものになってます。
ライフプランをもう一度見直し、何らかの対策を考える必要があります。
外来医療費の増加に対して民間保険会社の医療保険は無力
老後の外来医療費増加への対策として、医療保険への加入は有効でしょうか。
残念ながら、保障内容が現行のままである限り、民間保険会社の医療保険は外来医療費増加に対する備えにはなりません 。
なぜなら多くの民間保険会社の医療保険は、入院しないと給付金や保険金がおりないシステムだからです。
民間保険会社の医療保険は、医療費増大に対する備えとしては、あまりに心許ないのが実情です。
入院医療費の自己負担限度額も引き上げられる
続いて入院医療費について見てみましょう。入院医療費も2017年8月に引き上げられます。
次の表は、月間の入院医療費合計が100万円となった場合の自己負担額です。
先ほどと同様、100万円と言っても、自己負担割合は、現役並み所得者が3割、普通の人が2割です。
病院窓口での支払いは、現役並み所得者が30万円、普通の人が20万円ということです。
そこから高額療養費制度によって一定のお金が戻ってきて、その結果トータルでの自己負担額がどうなるかを表したのが、上の表です。
標準的な所得の方については、入院医療費の自己負担限度額が一月あたり44,400円から57,600円に引き上げられます。13,200円増加します。
高額所得者には、2018年に、さらに強烈な自己負担限度額引き上げが待っていますね。。。
60日間の入院費用は約4万円のUP
では、自己負担限度額の引き上げによって、入院費用がどれくらい変わるかを見ていきましょう。
まず、高額療養費制度が2016年現在と同じままであったと仮定して、年金暮らしで標準的な所得の方が2018年に60日間入院した場合の費用を見てみましょう(金額の単位は万円)。
費目 | 70歳未満 | 70歳以上 |
---|---|---|
+①医療費 | 17.28 | 13.20 |
+②食費 | 8.28 | 8.28 |
+③差額ベッド | 0 | 0 |
+④収入減 | 0 | 0 |
-⑤支出減 | 4 | 4 |
合計 | 21.56 | 17.48 |
※見積もりの詳細については定年後に備えて終身医療保険に入る必要性はあるのだろうかをご覧ください。
次に、今回の高額療養費改正で、70歳以上の年金暮らしの方が60日間入院した時の費用がどう変わるかを見てみましょう。
入院時の自己負担限度額は、一月当たり13,200円増えることになりますから、60日間(足掛け3か月)の入院では13,200円×3か月=39,600円増加します。
費目 | 70歳未満 | 70歳以上 |
---|---|---|
+①医療費 | 17.28 | 17.28 |
+②食費 | 8.28 | 8.28 |
+③差額ベッド | 0 | 0 |
+④収入減 | 0 | 0 |
-⑤支出減 | 4 | 4 |
合計 | 21.56 | 21.56 |
入院費用の合計金額も3.96万円上がって21.56万円となります。
70歳以上の年金暮らしの方が入院した場合でも、70歳未満の方が入院した場合と同じくらいの費用がかかるようになってしまいます。
高額療養費改定による自己負担額限度額の引き上げは確かに痛いですね。
だからといって民間医療保険の必要性が大して上がるわけではない
ただ、20万円くらいのダメージなら、人並みに貯蓄がある場合にはさほど気にする必要はありませんよね。
一入院支払限度日数が60日で入院給付金の日額が1万円程度の一般的な民間医療保険は、やはり必要性は高くないです 。
高額療養費制度が改正されたからと言って、慌てて医療保険に加入する必要などありません 。
入院医療費が今までの3倍かかるようになったとしても、医療保険の必要性は高くない
少子高齢化が進んで医療費が増大していくわけですから、医療費の自己負担額が増えるような制度改正は、今後も行われると見るべきでしょう。
そこで、入院時の医療費の自己負担額が今の3倍程度になった場合に、医療保険が必要となるかどうかを考えてみましょう。
2ヶ月間の入院でかかる費用は60万円程度ですよね。
やはり人並みの貯蓄があれば気にすることはないでしょう 。
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と言うのは大げさです。多くの人は、わざわざ一般的な民間医療保険に入って備える必要はないでしょう。
ただし長期入院を保障してくれる保険があるなら是非とも入りたい
こんなことを書いてますと、私が医療保険をすごく嫌っているように見えるかもしれません。
確かに一般的な医療保険は不要だと思っています。
でも実際はいい医療保険があれば入りたいんですよね。
民間の医療保険には、同じ病気による入退院の繰り返しや長期入院を、是非とも保障して欲しいと思っています。
しかし、そのような医療保険商品は、日本国内の保険会社からはほとんど販売されていません。
短期入院を保障しないことにすれば、自動車保険の様に、保障限度額無制限タイプの医療保険商品も開発できると思うんですがね。
我が家としては医療保険の商品内容が大きく変わらない限り医療保険不要論を唱え続けることになるでしょう。
現行の医療保険商品では長期入院や入退院の繰り返しがほとんど保障されないわけですから、我が家のスタンスは医療保険不要ということで当分は変わりありません。
しかし、長期入院や入退院の繰り返しを保障するタイプが出たなら、すぐにでも加入を検討したいという気持ちです。