連載:医療保険は不要 第27回です。
前回は、終身医療保険の「保険料は一生上がりません」はメリットではない という話でした。
今回は、うっかり終身医療保険に入ると「今やめたら損になる」という気持ちで途中解約しにくくなることについて書きます。
終身医療保険を途中解約すると、老後の保険料として前払いしている部分が、そっくりそのまま無駄になります。
そのため途中解約が出来ず、ずるずると保険料の無駄遣いを続ける可能性が高くなるのです。
この「今やめたら損になる」という気持ちは「サンクコストの呪縛(誤り)」というものです。
サンクコストの呪縛(誤り)とは?
上智大学教授の川西諭さんによるサンクコストの定義は以下の通り。‥
サンクコストというのは、すでに支払ってしまって、もう帰ってこない過去の費用負担のこと。(上智大学教授の川西諭さん)
何故「呪縛」なのかと言うと‥
これから何をするか考えるときにはサンクコスト(過去のこと)を考慮する必要はないと経済学の教科書には書いてある。冷静に考えれば確かにそうなのだが、人はなかなかこれが上手にできない。(上智大学教授の川西諭さん)
すでにつぎ込んだ金額や時間が無駄になるのを嫌がって、コストや費用をつぎ込むことをやめる決断がしにくくなる状態を「サンクコストの呪縛」と言うようです。
こころ学 – サンクコストの誤り:だってもったいないじゃないの心理(京都大学)では、「サンクコストの呪縛」の例として、次のようなことが紹介されています。
- 壊れててデカくてジャマなんだけど100万円もしたものだから。(捨てられない)
- 才能ないし好きでもないけど、10年続けてきたピアノだから。(やめられない)
- 5万円つぎ込んだスロットマシンだから、もう1万円。(捨てられない)
いずれも、すでにつぎ込んだ金額や時間が無駄になるのを恐れて、捨てたり辞めたりできなくなっている例ですよね。
人はそれだけ、自分のかけたコストが何の成果も生まず水泡に帰すのが嫌なんですね。
私もよくこのような気分に囚われます。まだまだ修行が足りません。
サンクコストの呪縛は終身医療保険の加入者にも襲い掛かる
さて終身医療保険に話を戻しましょう。
終身保険は、若いうちに割高な保険料を支払い、その一部が老後の保険料の先払いに回されるシステムです。
保険会社からすれば、終身医療保険は良いシステムです。
加入者が若いうちから、割高な保険料を支払わせることが出来るわけですからね。
若いうちに解約されても、保険会社には大した痛みがありません。
一方、終身医療保険の加入者は、若いうちは大損です。
「今やめたら、既に支払った老後の保険料の先払い部分が無駄になる」などと考えてしまい、なかなか解約に踏み切れないんです。
結果として、割高な保険料の支払いをずるずる続けることになります。
割高だと気づかないならまだしも、割高だとわかっているのにやめられないんです。こんな不幸はありません。
もちろん、賢い選択をするには、「今やめたら損になる」という気持ちを意識して振り切るべきですよ。
でもこれって「言うは易し行うは難し」の典型なんですよね。
このようなサンクコストの呪縛にとらわれないようにするには、そもそも終身タイプの保険に加入しないようにするのが一番です。
一生保険料が上がらない終身医療保険に若いうちから加入するのはデメリットだらけ
終身医療保険の代表的特徴をあげると、以下の二点になります。
- 保障が一生涯続く
- 若いうちに割高な保険料を支払うことと引き換えに、老後の保険料は安くすることで「一生保険料が上がらない」を実現
これらの特徴はメリットではなく、大きなデメリットです。
保険加入者が「サンクコストの呪縛(誤り)」に囚われて、不合理で愚かな選択をしてしまう原因になるのですから。
終身型の保険は入らない方が良くないですか?
そういうわけで、我が家は、終身型の保険を選択肢から外しています。
サンクコストの呪縛に囚われたくないですからね。
皆さんの保険選びの参考になれば幸いです。