HCDコンサルティング(旧・中川勉社会保険労務士事務所FPウェブシュフ)のブログ

医療保険の入院日数の数え方と支払限度日数~医療保険が頼りにならない理由

連載:医療保険は不要 第32回です。

前回は、医療保険は長期入院への備えとしては心もとない ということについて書きました。

今回はその続きです。医療保険独特の入院日数の数え方のおかげで、長期入院時に医療保険が助けにならないという話をします。

医療保険の入院日数の数え方には独特のルールがあります。

入院給付金の支払対象となる入院日数には上限がありますが、独特のルールのおかげで入院日数があっという間に上限に達してしまいます。

我が家が医療費のための保険に殆ど入らない理由は、ここにもあります。

準備:入院日と退院日は入院日数に含めて数える

本題に入る前に、日数の数え方で間違ったり迷ったりしがちな点を、一つ説明します。

入院日数を数える時は、入院した日と退院した日を、ともに入院日数に含めます。

たとえば12月9日に入院して12月20日退院した場合、入院日数は12日間になります。

12月9日の午後11時59分に入院して12月20日の午前0時1分に退院した場合でも、入院日数は12日間です。

入院日数を数える際はその日に1秒でも入院していれば1日として数えます。

「20-9=11だから11日間よね。」というのは間違いです。注意してください。

退院後180日以内に同じ病気で再入院した場合、連続する1入院とされて入院日数は合算される

さて、ここから本題です。医療保険で日数を数える場合に要注意なのが、最初に黒板に書いた事柄です。

多くの医療保険では、ある病気で入院して一度退院した後に同じ原因で180日以内に再入院することになった場合、最初の入院と2回目の入院を合わせて連続する一つの入院として扱います。

例えば、45日入院して、退院後135日経過後に同じ病気で再入院(45日)した場合を考えましょう。

日常生活では「45日間の入院を2回した」と考えるわけですが、医療保険ではそう考えません。

最初の入院と同じ病気で再入院しているうえ、最初の入院から再入院まで180日経っていませんから、医療保険では最初の入院と再入院を合算して考えることになります。

つまり、最初の入院と再入院を合わせて連続する1入院とされ、入院日数は90日(45+45)となります。

違う病気で再入院したら、別々の入院として扱われ、入院日数は合算されない

次に、45日入院して退院後、135日経過したところで異なる病気で再入院(45日)したw場合を考えましょう。

今度は、同じ病気で再入院したわけではないので、医療保険でも「45日間の入院を2回した」と考えます。

180日経過後の再入院も、別々の入院として扱われ、入院日数は合算されない

45日入院して退院後、185日経過したところで同じ病気で再入院(45日)した場合を考えましょう。

今回は180日たってから再入院しているので、医療保険でも「45日間の入院を2回した」と考えます。

最後に次の例ですが、これも「45日間の入院を2回した」と考えます。

医療保険の入院給付金の支払いには日数による制限がある

医療保険で入院日数の数え方が大事なのは、入院給付金に入院日数による制限がかかるからです。

この制限日数を支払限度日数と言います。

支払限度日数には、通算支払限度日数と一入院支払限度日数の2つがあります。

通算支払限度日数だけを見れば安心できそうですが‥

通算支払限度日数は、生涯の入院日数の合計に上限を設けたものです。

保険営業マンに「通算支払限度日数は1,000日ありますよ。」と言われると、一生で1,000日間入院しても大丈夫だと思ってしまいそうですが、それは違います。

もう一つの支払限度日数である「一入院支払限度日数」がクセ者だからです。

一入院支払限度日数がクセ者

一入院支払限度日数とは、一回の入院について、入院給付金の支払い対象となる日数に制限を設けたものです。

例えば、一入院支払限度日数が60日なら、90日間入院しても入院給付金の支払いは60日で打ち切られるということです。

一入院支払限度日数があるために、医療保険は長期入院に対する備えとしては心もとないものになります。

一入院支払限度日数って怖い仕組みですね。

医療保険は入退院を繰り返す人を救ってくれない

一入院支払限度日数には、もう一つ怖さがあります。

医療保険は、一入院支払限度日数と入院日数の数え方とのコンボで、入退院を繰り返す人をあまり助けない仕組みになっているんです。

たとえば、通算支払限度日数1,000日・一入院支払限度日数60日・入院給付金日額10,000円の医療保険に加入している人が、次の入院をした場合にどれだけの給付金がもらえるかを考えてみましょう。

この場合は、最初の入院と2回目の入院を合わせて、連続する1入院とされてしまいます。


一入院支払限度日数が60日なので、もらえる入院給付金は60日分の60万円だけです。

残りの30日については、医療保険は全く保障してくれません。

長期入院や入退院の繰り返しとなると、医療保険は救いにならない。

一入院支払限度日数の仕組みがあるため、医療保険は長期入院や入退院の繰り返しに陥ったときに、あまり救いの手を差し伸べてくれません。

長期入院したり入退院を繰り返したりするのは、重い病気にかかっていているときですよね。

そんな時に医療保険は私たちを見放します。医療保険は、本当に助けてほしいときに頼りにならないのです。

民間保険会社の医療保険に加入されているなら、解約や見直しを真剣に考えてみてはいかがでしょうか。


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