標準引越運送約款は、引越し業者と顧客のトラブルを未然に防ぐ目的で、国土交通省が定めているルールです。
業者と消費者との間で結ばれる引越作業請負契約が、消費者にとって著しく不利とならないよう規制しています。
消費者の強い味方なので、おおよその内容を頭に入れておくと、引越の節目節目で色々役に立ちます。
1.引越約款の提示
業者は、見積もりの際には、適用される引越約款を提示しなければなりません。
提示されるのは大抵の場合標準引越運送約款です。
ただし、業者側が独自の引越約款を定めて国土交通省に届け出て認可を受けた場合は、その独自の引越約款が引越作業請負契約に適用されますので、見積もりの際に提示されるのも独自の引越約款になります。
2.業者の見積もり義務
業者は、引越作業請負契約を結ぶ前に見積りを行う義務があります。
標準引越約款では、見積りに必ず記載すべきとされている事項が細かく定められています。
そのうち特に重要と思われるものを挙げると以下のようになります。
- 運賃等の合計額(積込み又は取卸し作業等に応じて運賃等の内容ごとに区分してわ
かりやすく記載) - 支払方法
- 解約手数料の額
- 業者名、事業許可番号、住所、電話番号、見積り担当者名・問い合わせ窓口電話番号
また、見積もりは無料であり手付金・内金は発生しないことが明記され、見積もりに掛かる交通費等についても消費者の負担とする場合にも、事前に消費者の了解を取らなければならないなど、見積もりの費用負担についてはかなり消費者有利に定められています。
3.業者の荷受拒否権
標準引越運送約款では、消費者が依頼したとしても業者が荷受を拒否できるものがいくつか列挙されています。
貴重品
- 現金
- 有価証券
- 宝石貴金属
- 預金通帳
- キャシュカード、
- 印鑑
特殊な管理を要するもの
- 危険物
- 動植物
- ピアノ
- 美術品
- 骨董品
貴重品や特殊な管理を要するものについては、業者に対してその旨を明らかにした上で運搬を引き受けてもらわない限り、運送中の損害については保障されないので注意が必要です。
4.荷造りは消費者の責任
荷造りは、消費者が自分の責任で行うのが原則です。この場合、荷造りの不備で損害が発生した場合は消費者の負担になります。
ただし、消費者の費用負担によって、業者が荷造りしてもよいことになっています。
また、荷物を引き渡すときに、
- 壊れやすいもの
- 貴重品
- 特殊な管理を要するもの
については、その旨を業者に伝える義務があります。
伝えるべきことを伝えたうえで、業者が運搬を引き受けてくれれば、運送中の損害は業者の負担になります。
このような内容が標準引越し運送約款に含まれているので、引越し当日までに荷造りを終えられないと、業者から引越し作業の引き受けを拒否されたり、追加料金を上乗せされたりします。
荷造りは引越し当日までに絶対に終わらせましょう。
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5.解約手数料
標準引越運送約款では、引越のキャンセル料はめったなことでは発生しないようになっています。
具体的には、次の3条件を全て満たす場合のみキャンセル料が発生します。
- 解約が消費者の責によるもの
- 見積書記載の引越し日当日か前日に解約
- 引越しの2日前に義務付けられている最終見積もり確認を業者がきちんと行った
したがって、たとえ前日・当日のキャンセルであっても、引越二日前に業者が見積もり内容を確認していない場合、キャンセル料は発生しないことになります。
また、そもそも、見積書記載の引越し日の2日以上前に解約した場合、解約手数料は発生しません。
また、キャンセル料の金額についても以下のように定められています。
- 当日キャンセルの場合の解約手数料は、見積書の料金の20%
- 前日キャンセルの場合の解約手数料は、見積書の料金の10%
ただし、業者が引越作業に備えて行った作業に要した費用は、解約手数料とは別に消費者が支払わなければなりません。
6.損害賠償責任
標準引越運送約款では、引越し作業中に生じた荷物の損傷・引越し作業の遅延については、業者側に損害賠償責任があることを明記しています。
この点でも、消費者にとても有利です。
ただし、荷造り、受取、引渡し、保管、運送などについて全く落ち度がなかったことを業者が証明した場合は、この限りではありません。
損害賠償を請求できるのは引越し完了から3ヶ月以内です。
また、
- 壊れやすいもの
- 貴重品
- 特殊な管理を要するもの
については、事前に業者にその旨を伝えて引き受けてもらっていなければ、損傷・紛失による損害賠償は請求できません。