By: atgw
ランカスター大学を中心とするチームの実験によると、容疑者を尋問をする際、証拠を小出しにした方が容疑者の発言に矛盾が生じ易くなることがわかりました。犯罪捜査にとどまらず、相手の嘘を暴きたい状況に広く応用できそうです。
実験
コンピューターゲームの中で、151人の被験者にオリンピックスタジアム建設の従業員の役をさせます。
また、そのうちの一部にはスタジアムを破壊するために従業員に紛れ込んでいるテロリストとしての役も演じさせました。彼らは、誰にも見つからないように、ゲームの中の仮想店舗で爆発物を買ったりしなければならなりません。
ゲーム後、151人はベテランの刑事から尋問を受けました。
尋問中の刑事による証拠開示は以下の3通りのタイミングで行われました。
- 最初に開示
- 最後に開示
- 尋問中少しずつ開示
結果
尋問中に証拠を少しずつ開示したとき、テロリストを演じた被験者の説明から矛盾を引き出し嘘を見破れたケースは68%でした。
一方、尋問の最初や最後に証拠を開示すると、嘘を見破れる確率は50%でした。
つまり、証拠を小出しにすると嘘を暴くことに成功する確率は4割近くUPします。
言い逃れには説得力のあるストーリーが必要
テロリストが完璧な言い訳を考えるには、刑事に把握されている証拠を予測して、説得力のあるストーリーを考えないといけなません。
最初に証拠が開示されるとストーリーを考えやすいです。
最後に証拠が開示された場合は、ストーリーを考えるのは難しいです。しかしそれでも最後に証拠を開示されるまでブレずにストーリーに沿った供述をすることはさほど難しくないでしょう。
証拠を小出しにすると
しかし、証拠を小出しにされた場合、ブレずにストーリーに沿った供述をするのは難しいです。
なぜなら、証拠を提示されるたびに、目の前の証拠の証拠能力をなるべく強く破壊するような供述をしたくなるからです。
しかし、その欲望に負けると、せっかく組み立てたストーリーが台無しになる危険が高まります。後々示された新証拠に対して致命的な供述をしてしまうことになりかねないのです。
証拠を小出しにするとプレッシャーがすごい
このように、説得力を保つのがとても難しいので、証拠を小出しにされると、テロリストの被験者たちの心理的負担はものすごく大きくなったそうです。
これは当然で、証拠を小出しにされているうちに「次はどんな証拠を出されるのだろう」と不安になるからです。
嘘つきには証拠を小出しに
この実験結果は、警察以外でも世の中のいろんな場面で使えそうです。
相手に「うそついてました。ごめんなさい。」と言わせたい場面で広く有効だからです。
たとえば以下のような人にとって、この「証拠小出しメソッド」は有効です。
- 脱税を暴こうとするマルサ
- 不祥事の調査チーム
- 民事裁判で被告の嘘を暴こうとする原告
- 部下を問い詰める上司
- 夫の浮気を問い詰める妻
とりあえず@web_shufu妻から証拠を小出しにされないよう気をつけたいと思います。
参考
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/lcrp.12016/abstract