役所がデザイナーへの発注価格を切り下げようとして業界関係者の猛烈な反発を受ける事態が繰り返されています。しかし、買い手である役所が価格を下げようとするのは当然であり、もっと買い叩きに熱心になるべきだとすら思います。
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役所発注のデザイン価格はもっともっと下がるべき!
役所がデザイナーへの発注価格を切り下げようとして業界関係者の猛烈な反発を受ける事態が繰り返されています。しかし、買い手である役所が価格を下げようとするのは当然であり、もっと買い叩きに熱心になるべきだとすら思います。
デザインは色々ある
こんな話をする上で大事なことは全てのデザインを同列に扱ってはいけないということです。
デザインには色々なものがあり、その分類方法にも色んなものがあるとは思いますが、ここでは収益との結びつきの強さで3種類に分けてみます。
- 商品そのもののデザイン。収益に及ぼす影響が強い。
- 商品や企画の広告・PRのデザイン。商品そのものに比べて収益への影響は弱い。
- 販売していないものに関するデザイン。収益に及ぼす影響がはっきりしない。
収益との相関関係が薄いところにデフレ圧力
ところで、「役所がデザイナーへの発注価格を切り下げる動き」ですが、実は「商品そのもののデザイン」以外の所をターゲットにしています。
たとえば、クールジャパンでは「クリエーターは無報酬」は、クールジャパンのロゴやキャッチコピーについての話で、商品たるコンテンツを無料で作れとは言っていません。
[img-link url=”http://matome.naver.jp/odai/2136500391892882001?&page=1″ title=”「クリエーターは無報酬」秋元康のクールジャパン提案に批判殺到 – NAVER まとめ”]
天王寺区の例で売り手と買い手の論理を整理
クールジャパン以前に天王寺区でも「役所がデザイナーへの発注価格を切り下げる動き」がありました。
これも、「商品そのもののデザイン」についての話ではないです。
[img-link url=”http://togetter.com/li/451688″ title=”大阪市天王寺区報道発表資料『デザインの力で、行政を変える!!~天王寺区広報デザイナーを募集します~』について – Togetterまとめ”]
業務内容または協力内容に書かれている内容から判断する限り、デザインに力を入れても天王寺区の税収が向上するとは思えません。
一方、デザインに力を入れたところで天王寺区の行政コストが下がるとも思えません。
とはいえ、市民から苦情が来るようでは困ります。
したがって、デザインを外注するなら「市民から苦情が来ない」最低限のレベルを満たすデザインをなるべく低価格で発注しようとするのが合理的です。
買い手は手間ではなく価値に対価を払う
ご存知のように天王寺区は業界からものすごいバッシングを受ける事になりました。
業界の方の怒りの理由は次の記事に代表されると思います。
[img-link url=”http://yaplog.jp/parsleymood/archive/1139″ title=”学生や若手デザイナーは「プロボノ」じゃないよ :: Parsleyの「添え物は添え物らしく」|yaplog!(ヤプログ!)byGMO”]
Parsleyさんは「かかった『工数』に対して「報酬」を支払う必要がある」
と仰っていますが、これは完全に売り手の勝手な論理です。
ましてやこれが資本主義における「正当な価格」などということは有り得ません。
買い手のほうは自分たちの求める価値を可能な限り低い対価で実現したいのです。
そして、両者が交渉し妥協しあって形成された価格こそが資本主義における「正当な価格」です。
そして、個々の取引で形勢された正当な価が格積み重なることで、「市場価格」という相場が出来上がるのです。
納得できないならスルーすればいい
ところで、妥協点が見出せなければ売買が成立しないことはいうまでもありません。
業界の方々は、無料でデザインをさせようという天王寺区のような企画が気に入らなければ、華麗にスルーすればいいだけですよね。
買い手として合理的な行動をとろうとした天王寺区を批判するのは筋違いだと思います。
税金によるデザイン発注は極力抑えるべき
言うまでもないことですが、役所がデザイナーに発注を行う場合、その原資は税金です。
ですから、役所は通常の買い手以上に、合理的な意思決定を行うよう留意しなければなりません。
その意味で天王寺区の動きが断念に至ったのは残念でなりません。
個人的には、日本中の役所が天王寺的な発想を採用して欲しいくらいです。
役所はプロのデザイナーが才能が発揮するべき場ではない
役所は商品やサービスを売るところではありません。
役所が外注するデザインに、収益と強く結びつく「商品そのもののデザイン」は、原則としてありません。
つまり、デザインそのもの出来栄えが役所の収支を左右するほど重要にはなり得ません。
アマでも十分
したがって、役所のデザインには、どうしてもプロにお願いしなければならないものなどほとんどありません。
納税者からケチがつくほどのひどい出来栄えではない限りは、アマに頼んだって問題はないです。
つまり、役所はプロのデザイナーが才能が発揮するべき場ではありません。
[img-link url=”https://webshufu.com/3-essential-conditions-for-amatures-to-dive-experts-away/#last” title=”アマによってプロが駆逐される分野に見られる3つの特徴|Web Shufu”]
デフレ圧力が強くて当然
役所がコストパフォーマンスを真剣に考えれば考えるほど、役所がデザインを発注する価格は下がって当然です。
役所のデザイン発注価格に対するデフレ圧力というのは、デザイン価格を無料にするところまで行き着くのでしょうが、デザイナーがそれに不満なら仕事を請けなきゃいいだけです。
民間の商品デザインこそ活躍の場
一方、商品のデザインは収益に与える影響が大きいです。
デザインによる収益への影響は役所よりも民間企業で大きくなります。
「売れるデザイン」をのどから手が出るほど欲しがっている民間企業は沢山あります。
デザイナーは「売れるデザイン」を作り、売れる理由をわかりやすく説明することで自身の価値を高めるべきではないでしょうか。
ロゴ5000円が適正価格かどうかについて少し真面目に考えてみた
デザイン力と資力に欠けるのでロゴっぽいものは全てGoogle Fonts で乗り切っている@web_shufu です。そんな私にとって、デザインの適正価格というのはとても興味深いテーマなため、ロゴ5000円のロゴが真面目に考えてみました。もちろん結論は適正です。
デザインの価格<デザインがもたらす収益
会社は営利を目的とする社団法人です。これは、法律でそのように規定されていて、動かしようの無い事実です。
したがって、デザインを購入する目的は利益の増大です。
デザインに支払う対価は、そのデザインを使うことによって増える収益を、下回らないといけません。
これを式の形で書くとこうなります。
- デザインの価格<デザインがもたらす収益
価格と収益の差は需給できまる。
デザインの価格とデザインが会社にもたらす収益との差は、需給関係で決まります。
デザイナーが過剰な状況では、デザイン価格が押し下げられるため、デザインが会社にもたらす収益との差が大きくなります。
逆に、デザイナーが不足すると、デザイン価格は、デザインが会社にもたらす収益に近づいていきます。
デザインがもたらす収益=品質×露出度
デザインがもたらす収益は品質に比例します。
デザインがもたらす収益は品質が高いほど大きくなります。逆に、品質が低ければ収益を押し下げます。
しかし、デザインの利益に対する影響力というのは、人の目に触れて初めて発揮されるものです。
いくら素晴らしい品質のものでも、全く露出しなければ収益増に貢献しません。
逆にいくら低品質でも、全く露出しなければ会社の足を引っ張ることはありません。
そういうわけで、デザインの品質が収益に及ぼす影響は露出度に比例します。
- デザインがもたらす収益=品質×露出度
デザインの適正価格は露出と比例
ところで、
- デザインの価格<デザインがもたらす収益
- デザインがもたらす収益=品質×露出度
なので、
- デザインの価格<品質×露出度
となります。
露出度が小さいと‥
露出が多い大企業が使えば50万円の収益をもたらすロゴでも、露出が1/100しかない中小企業の同業者が使うと5千円の価値しかもたらしません。
同様に、大企業にとっては500万円の価値があるロゴでも、露出が1/1000しかない中小企業の同業者が使うと5千円の価値しかありません。
5000円でロゴを発注することは、
- デザインの価格<品質×露出度
と考える限り全く妥当だと思います。
最後に
ツイッターで@yattitudeさんと少し話しましたが、5000円ロゴが適正価格だと言っても、それはロゴの品質に問題があるからではありません。
ロゴを作っているデザイナーさんの技量について貶めるつもりなど全くありません。
それは、5000円のロゴを採用した6サイトでも書いた通りです。
5000円のロゴを採用した6サイト
最近急に脚光を浴びている5000円ロゴ作成ですが、随分前から当たり前に行われています。そこで、クラウドワークスで契約金額5000円でロゴ作成のコンペを行い、実際にウェブサイトで利用してる例を集めてみました。5000円でも十分な品質だと思います。
大手企業も採用
[img-link url=”https://tixee.tv/event/detail/eventId/822″ title=”【30席増席】アグリビジネスサミット~日本を変えるアグリビジネスを創出する~ | チケットアプリtixee (ティクシー)”]
大手監査法人の有限責任監査法人トーマツさんもコンペで採用したものをそのまま利用しています。
5000円ロゴは歴史ある大手企業すら納得させるほどの高い品質を持っているようです。
映画のPRサイトに採用
[img-link url=”http://snowgirl-movie.com/” title=”cutewoman”]
これもコンペで採用したものをそのまま利用しています。
5000円ロゴの品質は映画のPRにすら使われる域に達しています。
学習塾が採用
[img-link url=”http://www.facebook.com/kusanonejyuku” title=””]
これもコンペで採用したものをそのまま利用しています。
社長インタビューサイトが採用
[img-link url=”http://150president.com/” title=”150%社長.com | 急成長企業のトップは何を考えているのか”]
たぶんこのコンペで採用したロゴをそのまま利用してますね。
ECサイトが採用
[img-link url=”http://www.straitscraft.com.sg/index.html” title=”Straits Craft Singapore – ストレイツ・クラフト・シンガポール”]
これもコンペで採用したものをそのまま利用?
ポータルサイトも採用
[img-link url=”http://scnavi.com/” title=”全国総合型地域スポーツクラブのポータルサイト「SCナビ」”]
どういうわけかコンペで採用したものをそのまま利用せず、同じ作者の別の作品を利用。
5000円ロゴでも十分
以上のような5000円ロゴの採用例を見ていると、世の中で作られる大半のロゴは5000円コンペで作っても問題ないと言わざるを得ません。
というか、5000円のロゴの品質が全くダメだというなら理由を教えて欲しいです。