HCDコンサルティング(旧・中川勉社会保険労務士事務所FPウェブシュフ)のブログ

ペット保険の一番の闇は、加入する必要性が見い出せないこと


「ペット保険の闇」というブログ記事が話題ですね。

[img-link url=”http://maitaro113.livedoor.blog/archives/1196409.html” title=”ペット保険の闇① ( 猫 ) – がんばる!マイ太郎日記 – Yahoo!ブログ”]

飼い猫が肝障害になって長期治療が必要となった後、自動更新特約付きのペット保険の継続に当たって保険会社から「肝・胆道系疾患について補償対象外とする特約を付けない限り更新できない」と通告をされて、飼い主さんが大変お怒りという内容です。

腹立たしい気持ちはわかりますが、ペット保険とはそういう保険です。加入者にとってメリットがあまり感じられない保険です。

加入している皆さんは、今一度ペット保険が本当に必要なのかどうかを考えた方がいいです。

ペット保険は保険会社の胸先三寸で継続を拒否される仕組み

アクサダイレクトのペット保険の重要事項説明書にはこう書かれています。

保険契約の継続に際して、継続前の契約におけるケガ・病気の治療状況などによる審査を行います。審査の結果、継続契約より特定の傷病を補償対象外とする条件付でのご契約になる場合や保険契約のご継続をお断りする場合がございますので、あらかじめご了承ください。(アクサダイレクトのペット保険 重要事項説明書

2017年6月時点

自動更新とならない場合について明確な基準が書かれていないので、アクサのペット保険は、保険会社の胸先三寸でいつでも更新が拒否される可能性があるということです。

調べたところ、他のペット保険でも同様の条項が入っているケースがあります。実際にこの条項が使われることがあるかどうかは別ですけどね。

自動的にご契約が継続とならない場合や、商品改定により保険料、 補償内容などが変更となる場合があります。(アニコム損害保険株式会社 ペット保険「どうぶつ健保ふぁみりぃ」重要事項説明書

2017年6月時点

まるで伝家の宝刀とかオールマイティー牌とかの類ですね。

このような、事業者にはとても好都合で消費者には著しく不利な条項は、消費者契約法の趣旨からどうなのかという思いがありますが、それはひとまず置いておきます。

もしこのような条項があれば、今は良心的に運営されているペット保険でも、いつか君子豹変して「契約した通りの取り扱いですが何か?」というような対応をする可能性があるということです。

長期治療が必要な慢性疾患こそ補償してほしいのに継続拒否

保険会社が胸先三寸で継続を拒否しても、契約違反とはならないような構造になっている以上、

飼い猫が肝障害になった後、自動更新特約付きのペット保険の継続に当たって保険会社から「肝・胆道系疾患について補償対象外とする特約を付けない限り更新できない」と通告をされ

というのは、確かに、契約違反でも何でもないと言えますね。

ですから、「ペット保険の闇① ( 猫 ) – がんばる!マイ太郎日記」に対して、「重要事項説明書と約款を読まないブログ主が悪い」という意見も出ています。

ただ「アクサダイレクトのウェブサイトを見ると、長期療養も補償するようなイメージを持ってしまう人はいるだろうな…」というのは感じました。

アクサダイレクトはいぬのきもち保険 ねこのきもち保険 トップページでペット保険について以下のような説明をしています。

一緒に生活しているペットも人間と同じように、病気にかかったりケガをします。
病気やケガの種類によっては、思わぬ高額治療や長期治療が必要になることも…。
あなたの大切なペットの万が一の病気やケガに備える。それがペット保険です。(ペット保険のアクサダイレクト いぬのきもち保険 ねこのきもち保険

2017年6月時点

重要事項説明書や約款を見た後にこれを見ると「胸先三寸でペット保険を継続拒否することはできるけど長期治療は補償しますよ」と言われているように感じませんか。

長期治療が必要になった途端に、その原因となる病気を補償対象から外すと言われたら、「じゃあ、ペット保険のトップページに長期治療なんて言葉を使うなよ…」と私なら思ってしまいます。

それでも、長期治療の一部は補償しているのだから、アクサダイレクトに向かって「嘘つき」とか「詐欺」とか「契約違反」なんて、おいそれとは言えないわけですけどね。

そもそも大損してまでペット保険に入る必要ってあるんですか?

ペット保険はいざというときに助けてくれません。そのくせ、 保険ですから加入者全体としては大損するようにできています。

払った保険料のうち保険金として返ってくる割合は想像以上に低いです。

2016-0723-insurance-fee-09
(上の図の「保険会社従業員給料」は「保険会社従業員給料原資」から「原資」が落丁したものです。「原資」を補って図をご覧ください。

そして、加入者が損をした部分が、保険会社従業員の給料原資となります。

ですから保険は軽々しく使うようなものではありません。

人生が破たんしかねないリスクに備えるなら保険は利用価値がある

保険は軽々しく使うものではありませんが、使ったほうがいい場面もあります。

それは、人生が破綻しかねないほどの巨額損失が発生するリスクがある場合です。

例えば、自動車を運転すると、人を轢き殺して億単位の巨額の賠償債務を背負う可能性があります。

億単位の賠償債務は、少しずつ清算していくにしても、1年あたり数百万円の弁済をせざるを得ません。これは多くの人にとって生活の破綻につながる事態です。

破綻を避けるために自動車保険に入っておくのは、悪くない考え方です。

ペットにかかる治療費は人生を破綻させる程ではない

しかしペット保険はどうでしょうか。

ペットにかかる治療費は、本格的な入院手術でも1回あたり数十万円程度ですよね。

療養が数年に渡ったとしても、かかった治療費の合計が数百万程度、せいぜい車一台分ですよね。

それって人生が破綻するほどの打撃でしょうか。

多少足りない部分があったとしても、金策すればなんとかなる金額ではありませんか。親や兄弟から援助を受けられる金額ではありませんか。

取りあえず急場をしのげば、人生における総支出が数百万円程度増加するだけのことです。大したことはありませんよね。

数百万円程度の損害のせいで人生が破綻するほど余裕がないと言うなら、それはペット保険に入っている場合ではありません。それ以前に、ペットを飼っている場合でもありません。

ライフプランを立てて、長期的・総合的・合理的に家計管理を考える方なら、私に言われずともこれくらいのことはすぐにわかりますよね。

ペットが誰かに障害を負わせたときの賠償対策は個人賠償責任保険で十分

ペットが病気になったときの治療費は大したことはないのですが、ペットが誰かを傷つけたり高価なものを壊したりして、巨額の損害賠償が発生する可能性はゼロではありません。

ペットが原因の損害賠償責任に備えて保険に入るという考え方は合理的です。

しかしペット保険を選択するのは合理的ではありません。

損害賠償責任に備えて保険に入るなら、火災保険や自動車保険に特約の形でつけられる個人賠償責任特約で十分です。保険金上限1億円のものなら、保険料はせいぜい年間数千円程度のことが多いと思います。

ちなみに、うちの場合は、賃貸用火災保険に保険金上限1億円の個人賠償責任保険がくっついて、併せて年間保険料は4,000円です。リーズナブルですよね。

ペット保険の保険料は年間数万円程度にはなるので、ペット保険をわざわざ選ぶ理由はありません。

私ならペット保険には絶対入りませんね

というわけで、ペット保険なんて必要ないというのが私の立場です。

ペット保険に限りませんが、リスクへの対応で保険を使うのは最後の手段です。

貯蓄が十分にあったら、保険を使う必要はないですよね。

貯蓄が不足していても、ほかの手段でリスクに備えることができるなら、保険は使わずに済みますよね。

保険に加入するのは大損なので、ほかに手段がない場合に限りたいところです。

保険の宣伝では「保険に入っていないと大変」「保険に入ってて助かった」というような論調が表に出ますが、私はむしろ「安易に保険に入ると大変」とか「保険に入らなくてよかった」という状況の方が多いと思っています。

保険加入はくれぐれも慎重に。


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