
ブロガー・アフィリエイターのための「はじめての青色申告シリーズ第2回」です。
前回は「アフィリエイト収入が少なくても、申告が必要なケースはかなり多い」という話をしました。
アフィリエイト所得(=収入-必要経費)を申告する際は、事業所得か雑所得として申告することになります。
事業所得で申告した方が節税上は圧倒的に有利です。
これまでアフィリエイト所得を雑所得として申告してきた人も、ブログやアフィリエイトに真剣に取り組んでいるのならば、迷わず事業所得に変更して申告すべきです。
雑所得より事業所得の方が節税上有利

アフィリエイト所得を事業所得として申告した方が、雑所得として申告するより、税金が安くなるケースが多くなります。
事業所得として申告すると、所得を計算する際に収入から差し引ける要素が大きく増えます。
以下副業は事業?青色?「会社員の副業の税金」完全ガイド|EX-IT等を参考に、アフィリエイト所得を事業所得として申告するメリットをまとめました。
損益通算できる
アフィリエイト所得を「事業所得」として申告すれば、副業のアフィリエイトで赤字が出たときに、給与所得など他の所得から差し引くことができます。
これを損益通算といいます。
一方、アフィリエイト所得を雑所得として申告していると、赤字を他の所得から差し引くことはできません。
例えば、1年間の給与所得が500万円で、アフィリエイトによる赤字が200万円、これ以外の所得・損失は全くないものとします。
アフィリエイト所得を事業所得として申告する場合は、年間の合計所得(=500万円ー200万円=300万円)に対して所得税が計算されます。
アフィリエイト所得を雑所得として申告していると、赤字は1円も差し引かれずに、年間の合計所得=500万円に対して所得税の税額が計算されます。
つまり、アフィリエイト所得を雑所得で申告すると、事業所得で申告するより税金が増えるケースがあるんです。
青色申告できる

また、事業所得には青色申告が認められますが、雑所得には認められません。
青色申告は、65万円の特別控除(所得を65万円少なく計算でき、その分税金が少なくなる特典)が受けられるなど、通常の申告方法と比べて節税上とても有利です。
損失の繰越控除ができる
アフィリエイト所得を事業所得として申告すれば、損失が出た場合に繰り越して、翌年以降の所得から差し引くことができます(青色申告か白色申告かによって、繰り越して差し引くことができる損失の範囲に違いはあります)。
一方、雑所得には損失の繰越控除の仕組みはありません。
事業所得のメリットを悪用した脱税の横行で税務署が厳格化

事業所得を申告すると、色々な節税メリットを受けることができるため、これを利用した脱税手法が登場しました。
現代ビジネスによると、
確定申告がスタートする直前の2月15日、経営コンサルタントの○○が所得税法違反で逮捕された。(中略)
手口は単純で、サラリーマンに架空の副業で赤字が出たように申告させ、それによって正規の所得を圧縮し、すでに納めた所得税を還付させるというもの。(中略)
「(中略)自宅マンションの家賃や携帯電話代、自家用車の減価償却費などをすべて経費として計上し、副業を赤字にして、本業の給与所得と損益通算するという手口でした」(全国紙社会部記者)
このような「副業⇒赤字計上⇒事業所得として損失を申告⇒脱税」というメソッドが広がったのは、この本の影響が大きいと思います。
「副業⇒赤字計上⇒事業所得として損失を申告⇒脱税」というメソッドが広がったため、サラリーマンの方が副業を事業所得として申告しようとすると、税務署から雑所得として申告するよう強力な指導を受けるようです。
現在は、確定申告の際に、サラリーマンが事業所得の損失を給与所得と相殺しようとすると、税務署に出向いて事業内容を具体的に説明するよう要求されます。(中略)十分に主張できないと、雑所得として修正申告するよう求められます。
もちろん「本業では食べていけない」という状況はままあることですから、赤字だからといって事業所得と認められないわけではありません。ただしほとんどの場合は、申告書を作成したり、修正申告書を書き直す時間のムダになると思われます。(サラリーマンの無税生活は可能ですか? | 橘玲 公式サイト)
税金に詳しいブロガーも警鐘を鳴らしています。
「事業所得」と「雑所得」の区分・判定基準

国税当局の目が厳しくなった今、サラリーマンが自信を持って副業所得を事業所得として申告するには、どういう点に注意すればいいのでしょうか。
マイナビニュースが「副業所得が事業所得に該当する基準」を国税局に尋ねたところ、以下のような答えが返ってきました。
「事業所得としての副業は、営利性・有償性・継続性・反復性があるか、精神的あるいは肉体的労力の程度や人的・物的設備があるか、また、社会的地位・生活の状況などを考慮して判断します。加えて、その事業が生活の糧となるものか、一般的に職業として認知できるかも判断材料となります」(国税局)。
結局のところ、事業所得として認められるかどうかは以下のような8項目を中心に総合的に考慮して決まります。
- 営利性・有償性があるか(儲かる可能性があるか)
- 業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか(将来にわたって儲かる可能性があるか)
- 精神的あるいは肉体的労力の程度はどうか(真剣に取り組んでいるか)
- 継続性・反復性があるか(営業し続けているか)
- 人的・物的設備はどうか(事業的規模かどうか)
- 自己の危険と計算における企画遂行性があるか(リスクをとっているか)
- 生活状況
- 職業(職歴)・社会的地位
はっきり言ってファジーな基準です。事業所得と雑所得の区別について実際に争われた判例を見たほうがわかりやすいです。
ここで「事業所得 雑所得」というキーワードで検索すると、事業所得として認められず雑所得とされた副業の事例が、わんさか出てきます。
事業として認められなかった副業に共通する特徴をまとめるとこんな感じでした。
- 赤字を計上して節税するために副業していて儲ける気ゼロだな。営利性・有償性なし。
- ほとんど手間かけてないよね。真剣に取り組んでない。
- たまにしか副業してないじゃん。継続性・反復性なし。
結局アフィリエイト所得は事業所得で申告していいの?

国税当局の対応は厳しそうに見えますが、事業として認められなかったケースは、儲ける意思に問題があるケースばかり。
真剣に取り組んでいる事業については、問題にされている事例はほとんど無いように見えるんですよね。
だから、サイトやブログを運営して真剣にアフィリエイト収入を増やそうとしているなら、例え副業であっても、堂々と事業所得として申告すればいいのです。
真剣に取り組んでいれば、
- 儲かる可能性があると信じ、
- 相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存すると信じて
- 記事作成などの作業に1日3時間ほどは時間をかけ
- それをほぼ毎日継続的反復的に行い
- アフィリエイトのためだけの人的・物的設備があり
- かけたコストが徒労に終わるリスクを取り
- アフィリエイト収入が消えると家計にそれなりの影響が出る
こういうところは確実にクリアできますから、既に述べた8項目のうち以下の7つまではクリアできているはず。
- 営利性・有償性があるか(儲かる可能性があるか)
- 業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか(儲かる可能性があるか)
- 精神的あるいは肉体的労力の程度はどうか(真剣に取り組んでいるか)
- 継続性・反復性があるか(営業し続けているか)
- 人的・物的設備はどうか(事業的規模かどうか)
- 自己の危険と計算における企画遂行性があるか(リスクをとっているか)
- 生活状況
あと一項目、
- 職業(職歴)・社会的地位
これは最終的に税務署職員からどう思われているかで決まります。しかし、他の7つの事柄について理路整然と熱く語れる人は事業者として認めてもらえると思います。あくまで個人の感想ですが…。
ちなみに、私はGoogleさんに鉄槌を食らわされてアフィリエイト収入が激減した2012年分の確定申告も、アフィリエイト所得を堂々と事業所得として申告しております。
雑所得から事業所得に変更するにはどうすればいいか

公認会計士・税理士の市川恭子さんによれば、開業届を出さずに事業所得で申告しても問題ないようです(出したほうがいいに決まってますが)。
税務署としては、事業所得で申告されたら、その時に実質的に開業届が出されたもの(=開業届の提出漏れ)として扱われています。
開業届を出さなくても、特段お問い合わせが来るようなことはありませんが、結局出されたものとして扱われるので、出さない理由も特にないと思います。
しかし、事業所得を青色で申告したい場合は、前もって手続きが必要です。
事業所得は青色申告と白色申告があって、青色で申告した方が有利です。
2015年3月半締め切りの2014年度分所得の確定申告を、青色申告で行うためには、原則として2014年3月15日までに、青色申告承認申請書を税務署に出しておかないとといけません。
つまり、事業所得の青色申告は「青色申告をするぞ!!」と決心した翌年からしか始められません。
このエントリを見て「絶対に青色申告をするぞ!!」と決意した方は、今回の確定申告期間中に税務署に行って以下の書類も提出しておきましょう。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
用紙は税務署にありますし、記入も簡単ですよ。
なお、青色申告に必要な手続きは、はじめての確定申告シリーズ第4回-青色申告開始手続きまとめで詳しく説明しています。
次回「はじめての青色申告シリーズ」第3回は
をお送りします。