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開始仕訳~年初時点の資産・負債・純資産を明らかにする仕訳

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開始仕訳とはその名の通り最初にする仕訳です。

年初時点の事業用の資産・負債・純資産の内容を明らかにします。

言い換えると、資産・負債・純資産の前年繰越額を明らかにする仕訳です。

以下、初めて青色申告する方の場合と、これまで青色申告をしてきた方の場合に分けて説明します。

開始仕訳のイメージ

青色申告では、お金の出入りを、事業によるものと家計(日常生活)によるものに分けることが重要です。

言い換えれば、事業用の財布と家計用の財布とを、合理的に分けなければなりません。

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しかし、それでもまだ不十分なのです。

青色申告は毎年の事業による収益・費用を把握してその年の利益を計算して、国に報告するためのものです。

言い換えると、事業用の財布へのお金の出入りを年単位で把握して、1年間で中身がどれだけ増えたかを計算して報告するわけです。

これを厳密に行うには、以下のような手順を踏む必要があります。

  1. 事業用の財布を年ごとに一つずつ用意する
  2. 年初に事業用資産・負債・純資産などを、その金額を正確にカウントしたうえで、その年の事業用の財布に全部入れる
  3. 年末に事業用資産・負債・純資産などを、その金額を正確にカウントしたうえで、その年の事業用財布から全部出す
  4. 年初の純資産と年末の純資産を比べて増加額を調べることで利益がわかる

青色申告帳簿の作成では、上記①~④の手順もしっかり行います。

このうち、②の作業を開始手続きと言い、開始手続きを表す仕訳を開始仕訳と言います。

③の作業を閉鎖手続きと言い、閉鎖手続きを表す仕訳を閉鎖仕訳と言います。

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事業を始めたばかりの方の開始手続きと開始仕訳

では、初めて青色申告をする場合、の開始手続きと開始仕訳を見ていきます。

  • 年初に事業用資産・負債・純資産などを、その金額を正確にカウントしたうえで、その年の事業用の財布に全部入れる

というのが開始手続きですが、さらに二つの要素に分けることができます。

  • 年初に事業用資産・負債・純資産の金額を正確にカウント
  • 年初時点の事業用資産・負債・純資産をその年の事業用財布に入れる

事業用口座を決めて残高を把握

最初に、自分の預金口座の中で、売上の入金がある口座を選んで、事業用預金口座(事業用資産)とします。

この口座の年初時点の残高が、開始仕訳における預金の金額となります。

売掛金の金額を把握する

売掛金とは、金額とお金を受け取る時期が確定しているものの、未回収である売上のことです。一種の債権です。

ブロガーやアフィリエイターにとって、売上とはアフィリエイト報酬です。

そのうち、金額とお金を受け取る時期は確定しているものの未回収であるアフィリエイト報酬が、売掛金に該当します。

各ASPの支払い規約を見て、年初時点の売掛金をASP別(取引先別)に把握しておきましょう。

その合計額が開始仕訳における売掛金の金額となります。

(元入金)純資産の金額を把握する

純資産とは資産総額から負債総額を差し引いたものです。

純資産=(資産総額)-(負債総額)

アフィリエイターやブロガーは、事業開始時点では事業に関係する負債など、普通はありません。また、アフィリエイターの事業用資産は、預金と売掛金くらいなものです。

したがって、アフィリエイターやブロガーが事業を開始した時点では

純資産=資産総額=(預金)+(売掛金)

となることが多いでしょう。

開始手続き、開始仕訳の例

預金と売掛金の金額を把握したら、エクセルファイルなどに用意した仕訳帳シートに、実際に開始仕訳を書いていきましょう。

例えば、

  • 事業用資金の口座残高が年初時点で100万円
  • 支払い時期と金額が確定しているものの未払であるアフィリエイト報酬が20万円

だったとすると、

開始手続きによって、今年の事業用財布には、預金が100万円入ることになります。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 預金 1,000,000 開始残高 1,000,000

「開始残高」は、「開始手続きによって増えた」という原因を表す勘定科目です。

仕訳とは資産の増減をその原因とともに記録したもの|FPウェブシュフですから、この仕訳は開始手続きで預金が増えたことを表しています。

また、未払いのアフィリエイト報酬は売掛金ですから、開始手続きによって、今年の事業用財布には、売掛金も20万円入ることになります。

そこで以下のような仕訳を書きます。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 売掛金 200,000 開始残高 200,000

開始手続きで、財布の中には資産が合わせて120万円入りました。開始手続きで純資産(元入金)が120万円増えましたから、以下のような仕訳を書きます。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 開始残高 1,200,000 元入金 1,200,000

なお、元入金(純資産)の増加は貸方に、元入金の減少は借方に表現します。これは理屈抜きにして覚えておきましょう。

結局、開始仕訳をまとめると以下のようになります。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 預金 1,000,000 開始残高 1,000,000
1/1 売掛金 200,000 開始残高 200,000
1/1 開始残高 1,200,000 元入金 1,200,000

これまで青色申告をしてきた方の開始手続きと開始仕訳

これまで青色申告をしてきた方は、前回の青色申告決算書に、前年末の資産・負債の内容が書かれています。

それを基に開始仕訳をすれば良いです。

例えば、前年の青色申告決算書の貸借対照表で、前年12月31日時点の内容が

借方 金額 貸方 金額
預金 1,000,000 貸倒引当金 11,000
売掛金 200,000 事業主借 189,000
事業主貸 3,000,000 元入金 500,000
         青色申告特別控除前
の所得金額
3,500,000
合計 4,200,000 合計 4,200,000

であれば、開始仕訳は、

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 預金 1,000,000 開始残高 1,000,000  
1/1 売掛金 200,000 開始残高 200,000  
1/1 開始残高 11,000 貸倒引当金 11,000  
1/1 開始残高 1,189,000 元入金 1,189,000  

となります。以下説明しますが、元入金の開始仕訳は注意してください。

資産の開始仕訳

1行目、2行目の

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 預金 1,000,000 開始残高 1,000,000 開始仕訳
1/1 売掛金 200,000 開始残高 200,000 開始仕訳

については、「初めて青色申告をする方の場合」の説明の通りです。

去年からの繰越ですから、金額は前回の青色申告決算書の12月31日時点の記載を丸写しするだけなので楽チンです。

ただし、売掛金はASP別(取引先別)に把握しておいてください。

ブロガーやアフィリエイターの場合、事業用の資産は預金と売掛金くらいしかないと思いますが、他の資産があれば

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 (資産) (金額) 開始残高 (金額) 開始仕訳

という形で開始仕訳を行います。

負債の開始仕訳け

3行目は貸倒引当金という負債(負の資産)を背負った事実を右側にと、その原因を左側に書いた仕訳です。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 開始残高 11,000 貸倒引当金 11,000 開始仕訳

説明すると、

  • 貸倒引当金(負債)が11,000円増えたけど、これは開始手続きによるもので、つまりは去年からの繰越で背負ったものですよ。

という感じです。去年からの繰越ですから、金額は前回の青色申告決算書の貸借対照表における12月31日時点の記載を転載したものです。

ブロガーやアフィリエイターの場合、事業用の負債は貸倒引当金くらいしかないと思いますが、他の負債があれば

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 開始残高 (金額) (負債) (金額) 開始仕訳

という形で開始仕訳を行います。

純資産(元入金)の開始仕訳

4行目は元入金という純資産(=資産総額-負債総額)が手に入った事実と、その原因を書いた仕訳です。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 開始残高 1,189,000 元入金 1,189,000 開始仕訳

説明すると、

  • 元入金(純資産)が1,189,000円増えたけど、これは開始手続きによるもので、つまりは去年からの繰越で手に入れたものですよ。

という感じです。

去年からの繰越ですから、金額は前回の青色申告決算書の貸借対照表における12月31日時点の記載を転載したものです…と言いたいとことろですが、元入金についてはこれをやってはいけません。

元入金の金額の求め方

開始仕訳の元入金の金額は、開始仕訳の資産総額と負債総額から計算で求めます。

初めて青色申告をするときと同じように、

  • (開始仕訳時の元入金の金額)=(開始仕訳の資産総額)-(開始仕訳の負債総額)

という式で計算します。

今回の場合、(元入金)=(預金1,000,000円+売掛金200,000円)-貸倒引当金11,000円=1,189,000円となります。

これまで青色申告をしてきた方の開始仕訳の雛型まとめ

前年から引き続いて青色申告をする場合の開始仕訳の雛形をまとめると以下のようになります。

日付 借方 金額 貸方 金額 摘要
1/1 (資産) (金額) 開始残高 (金額) 開始仕訳
1/1 開始残高 (金額) (負債) (金額) 開始仕訳
1/1 開始残高 (金額) 元入金 (金額) 開始仕訳

(開始仕訳時の元入金の金額)=(開始仕訳の資産総額)-(開始仕訳の負債総額)



「開始仕訳~年初時点の資産・負債・純資産を明らかにする仕訳」への5件の返信

おひさしぶりです。POPです。^^
またこの時期が来ましたが、今年は持続化給付金などで少し混乱しています。
自分は持続化給付金等に税金がかかると思わなかったので、家計用の口座に振り込んでもらったのですが、この場合、その家計用口座も今回は事業用口座にして仕訳もしないといけないのでしょうか?
自分は持続化給付金等で支給されたお金は、ほぼ最後の確定申告書Bの「収入金額等>雑>その他」の項目に支給された持続化給付金の金額を入れるだけで良いと考えています。
総勘定元帳などに仕訳を入れる必要はないと考えていますが、
この考えで仕訳をして間違いはないでしょうか?教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。

popさん、ご無沙汰しています。
お尋ねの件ですが、お答えいたしかねます。

お尋ねの件は、今年だけの特例措置にかかわるのものでありますし、このご質問の内容はかなり個別的具体的なものです。
税理士法との兼ね合いから、応答は控えさせていただきます。

ご理解いただけますと幸いです。

>中川様

>かなり個別的具体的なもの
そうなんですね。。ご回答ありがとうございました。ちなみに「中川様はどうされるのか?」という事をうかがってもよろしいでしょうか?それも税理士法の兼ね合いでお答えしにくいものとなるのでしょうか?

>中川様
把握いたしました。何度も聞いてすみませんでした。m(_ _)m
あれからいろいろ調べましたが、国税庁からの「事業所得者は持続化給付金は事業所得として課税対象」と書いてあるPDFを見つけたので、やはり家計用口座も今回は事業用口座として仕訳しないといけないようですね。

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