離職率公表はブラック企業による悲劇を増やすだけ

ブラック企業ブラック企業対策として企業に離職率を公表させる取り組みがスタートするらしいですが
、辞めたい従業員を辞めさせないブラック企業が増加するだけです。過酷な労働から労働者を守るという観点では逆効果です。

「ブラック企業」対策へ離職率公表…のニュースソース

読売新聞サイト(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131202-OYT1T00107.htm)より

「ブラック企業」対策へ離職率公表…新年度から

若者に過酷な労働を強いる「ブラック企業」対策で、厚生労働省は来年度からハローワークを通じて大学生や大学院生を採用する企業に対し、離職率の公表を求めることを決めた。

 2015年春の大卒、大学院卒らに向けた求人票から、過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄を設ける。記入は強制ではないが、「空欄のままだと公表できないほど離職率が高いのではと見られる」(厚労省幹部)として、抑止効果が期待できるという。

 ブラック企業は早期退職が続出することを見越して若者を大量採用するのが特徴で、離職率は有力な判断材料の一つ。極端な長時間労働や残業代の未払いは労働基準法違反で是正指導できるが、離職率が高いだけでは違法ではないため、厚労省は情報開示で改善を促すことにした。

(2013年12月2日07時44分 読売新聞)

一見まともそうに見えますね。でも、色々とおかしいです。

最低最悪なブラック企業は離職率が比較的低い

ブラック企業を「若者に過酷な労働を強いる」企業としているのはいいでしょう。

しかし、全てのブラック企業が「過酷な労働⇒従業員辞める⇒離職率高い⇒大量採用」というサイクルを繰り返していると考えていたら大間違いです。

こういうブラック企業はまだましなほうでもっとひどいブラック企業があります。

本当に最低最悪なブラック企業は「過酷な労働⇒従業員辞めたがるが辞めさせない⇒離職率低く押さえられる⇒大量採用しなくていい」というパターンを繰り返しています。

「ましなブラック企業」まで「最低最悪なブラック企業」になる

こんな状況で離職率を公表させたらどうなるでしょう。

今まで辞めたがる従業員にはどんどん辞めさせていた「ましなブラック企業」は、辞めたがる従業員を引きとめるようになるでしょう。

もともと「最低最悪」だったブラック企業は、辞めたがる従業員に対する退職妨害をさらに強化するでしょう。

「ましなブラック企業」がどんどん減って「最低最悪なブラック企業」に置き換わって行きます。

これって労働者にとって幸せなのでしょうか。

辞めたいのに辞められないのが最大の悲劇

ところでブラック企業のよる弊害で最大のものはなんでしょう。

離職せず過酷な労働から逃げられずにいるうちに、心身の健康を失い、場合によっては死に至る事ではないでしょうか。

これを解決するには過酷な労働をなくすことが一番です。

しかし、たとえ労働基準法をきっちり守っていたとしても、過酷な労働は根絶は出来ません。

人の能力によって「過酷」の基準が違うからです。

例えば、「お客様相談センター」で一日中クレーム対応をするような仕事を考えればわかりやすいです。

クレーム対応は、たとえ1日8時間限定であっても、ある人にとっては死にたいほど過酷です。

一方、お客さんからのクレームを「街宣車の絶叫を遠くから聞いているくらいのストレス」と言い放つ豪傑もいます。彼にとってクレーム対応は過酷でもなんでもありません。

労働基準法の枠内であっても過酷な労働はなくならないのです。

こうなると「離職せず過酷な労働から逃げられずに心身の健康を失い、場合によっては死に至る」のを防ぐ方法は「逃げる」ことしかありません。

それなのに、離職率公表を義務付けてブラック企業による従業員の退職妨害を助長することになれば、逃げ道を失った従業員が心身の健康を失うケースが増えるだけだと思います。

ネット上の意見

ネット上でも私と同じような考えの方がいました。

https://twitter.com/WnbcM/status/407659677141327872

労働基準法を守っていてもポテンシャル採用中心だと「やっぱ俺には無理」という人が続出して離職率が上がるという話

離職の全てがネガティブではないという意見

ブラック企業が嘘の離職率を公表する懸念を表明する人ももちろんいました。

https://twitter.com/feifei995/status/407534259641909248

離職率の公表は退職支援とセットにするべき

離職率の公表を義務付けるだけでは、従業員がブラック企業から圧迫を受けるのを助長するだけです。

離職率を公表するなら、最低でも、ブラック企業によって退職を妨害されている従業員に対する支援の拡充はやるべきです。

現状でも、労働基準監督署などに相談に行けば、退職を拒むブラック企業から退職するための手助けを行ってくれます。

ただ、このことを知っている労働者は一部に限られます。

離職率の公表を義務付けるなら「退職で困ったときは労基署へ」を周知徹底出来るくらいに広報活動にも力を入れるべきです。

それより何より、労働基準法遵守の徹底から手を付けるのが王道です。


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