ブラック企業の特徴として組織的なサービス残業強制があげられる場合があります。しかしそんなのはただの労基法違反企業です。定額残業手当を使えば、固定的な月給以外に1円も払わず合法的に従業員に長時間勤務させることができます。
定額残業代
定額残業代は、固定残業代とも言われ、残業時間に関わらず毎月一定額の残業手当が支払われるシステムです。
実際の残業時間によって計算された残業代が定額残業代を上回った場合に、その差額が支払われるのなら、違法と判断されることはないようです。
[img-link url=”http://www.mibarai.jp/koteizangyou/h240308.html” title=”固定残業代に関する最一小判平成24年3月8日(テックジャパン事件判決) | 未払い賃金・残業代請求ネット相談室”]
私に設定された定額残業代
私はかつて「月額固定給23万円(諸手当込み)」と書かれていた求人広告に応募して、金融営業マンになりました。
実際は23万円は23万○○○○円と端数の分だけ増額されていました。
内訳は基本給12万○○○○円+残業手当11万○○○○円という感じでした。
残業手当は月120時間分で計算されていました。
確かに「月額固定給23万円(諸手当込み)」に偽りはありません。
残業が月に120時間というのは過労死水準なのですが、残業時間の上限は労使協定があれば青天井で、私がお世話になった会社でも200時間くらいに設定されていたと思います。
120時間を越える残業があったら別途残業代が支払われるのですが、超えることなどありませんでした。
とはいっても残業100時間超えは当たり前でしたが。
実際の残業時間に比べて多く支払っている部分で、スーツやかばんその他営業特有の費用をまかなう趣旨もありました。
私には合法的に見えた
私は大学時代に労働法の講義を受けた経験があるので「基本給12万って有り?」と思って時給を計算してみました。
基本給12万○○○○円×12を就業規則から求めた年間所定労働時間で割ってみたら、見事に当時の最低時給をクリアしていました。
次に、固定残業手当11万○○○○円に目を向けました。実際に120時間働いたときに支払われるべき残業代より少ないんじゃないか、と疑ったのです。
先ほど求めた最低時給に残業の割増率1.25をかけた後、固定残業代計算の前提である120時間をかけて、実際に120時間働いたときに支払われるべき残業代を求めてみました。
すると、計算結果は11万円未満。
会社の支給した固定残業代のほうが、実際に120時間働いたときに支払われるべき残業代より多く、問題ありませんでした。
営業の仕事はストレス満載
ところで、金融営業といえば上司からのノルマ必達圧力が凄いです。ノルマ証券という会社もあるくらいです。
ノルマを達成できない月が続くと特に集中して指導されます。
他の社員監視のもと模擬面談⇒ダメ出し
別に単なるいじめではありません。
本人がダメ出しに耐えられさえすれば凄く役に立つのですが、耐えられない人が多いです。
おどおどして余計なダメ出しをクラってさらに精神的ダメージを受けるという悪循環。
ノルマ達成計画の立案⇒ダメ出し
いつもどおりの業務の流れで計画を立てると「それで売れないから改めて考えているんだろうが!!」と怒声が飛びます。
ここで必死で考えることは役に立つのですが…
やはり精神的に耐えられない人が多いです。
耐えかねてやめる人続出
そんなこんなで、私が勤めた会社では、かなりの新卒が半年もたずにトビました。
ある日突然会社に来なくなりました。
しかし、中にはやめるという選択を希望せず、事務職への配転を願い出る人もいるのです。
そのとき壁になるのが、営業職の「基本給12万円+残業手当11万円」という給与体系です。
営業から他部署に移ると給料激減
事務職はほとんど残業が無いので定額の残業手当が支給されませんでした。
月ごとに普通に残業時間を支給してそれに対応した支払を行うというオーソドックスな残業代支給方法です。
すると、営業職なら「基本給12万円+残業手当11万円=23万円」を毎月もらえるところが、事務職になると「基本給12万円」しかもらえません。
さすがにマックのバイトなみの月給12万円はいくら新卒でも受け入れがたいです。
というより、親にパラサイトしていないとこの給料では生活できません。
そういうわけで配転希望者は配転希望を取り下げます。
そして、耐え難い営業職に一旦はとどまるものの、結局はやめていくことになります。
このように、営業職と事務職の基本給・時給を等しくしつつ、定額残業代の支給の有無によって月額固定給には大きな差をつけたことで、営業職従業員の他部門への配置転換は事実上不可能になっています。
やめてもらいたい人に事務への異動命令
営業が辛くなった社員が願い出なくても、会社から事務職への配転命令が出ることもありえます。
残業代の支払い方法が異なるだけで、営業職と事務職の基本給・時給が等しい以上、営業から事務に異動させても、給料の引き下げには当たりません。
どの法律にも抵触する気配がありません。
でも、営業から事務への配転命令は、事実上の給料半減の刑です。月給12万円では親のすねをかじらないと生きられないですから、事務職への配転を命じられた営業職は自主退職の道を選ぶでしょう。
定額残業代を巧妙に使って自主退職に追い込む
このように定額残業代を巧妙に組み込むことで、実績が上がらない社員が自然に自主退職という道を選ぶように仕向けることが出来ます。
定額残業代というと、賃金抑制のための手段に思われがちですが、社員を自主退職に追い込む仕組みの1つとしても使えるのです。多分…
最後に
私@web_shufuは法律の素人です。
その辺の事情はお汲み取りのうえ、本記事の内容を参考に何らかの行動に出る場合は、弁護士に相談の上慎重に行動してください。