CFP 試験では資産運用の期待収益率と標準偏差を求める問題が頻出します。その解き方をまとめてみました。
設例
1株1500円の A 社株式を買って1年後に売却する。A社の株価が下表のように予想され、期待収益率を求めよ。なお、A社株は将来にわたって配当がなく、株の売却代金以外の収入は全くなく、税金については考慮しないものとする。
生起確率 | 購入価格 | 売却価格 | |
---|---|---|---|
Aシナリオ | 0.1 | 1500 | 1950 |
Bシナリオ | 0.5 | 1500 | 1800 |
Cシナリオ | 0.4 | 1500 | 1350 |
まずは教科書通りの解説から
この問題を解くためのポイントは、次の通りです。
- 収益金額= 売却価格 - 購入価格
- 収益率(%)= 収益金額 / 購入価格 ×100
- 期待収益率=各シナリオの生起確率と収益率との積を求め、それらを総合計したもの
期待収益率を求める手順は次の通りです。
- 3つのシナリオの収益金額と収益率(%)を求める
- 収益率の平均値を求める
各シナリオの収益金額と収益率(%)を求める
先ほど書いた、収益金額=‥、収益率(%)=‥、を使うと簡単ですね。
生起確率 | 収益金額 | 収益率 | |
---|---|---|---|
Aシナリオ | 0.1 | 450 | 30% |
Bシナリオ | 0.5 | 300 | 20% |
Cシナリオ | 0.4 | -150 | -10% |
収益率の平均値を求める
続いて、収益率の平均値、つまり期待収益率を求めます。
期待収益率=各シナリオの生起確率と収益率との積を求め、それらを総合計したもの
ですから、
期待収益率
=0.1×30% + 0.5×20% + 0.4×(-10%)
=9%
というわけで、期待収益率は9%です。
「こんな問題なんて楽勝!!」と思った方は、この先を読む必要はないかもしれません。
いまいちピンとこないという方は、続きを読むとピンとくるかも知れません。
教科書通りの解説でピンとこない方へ
ピンとこない理由の大半は、期待収益率という言葉がピンと来ないことです。
あらためて、期待収益率という言葉の意味について考えましょう。
期待収益率=収益率の平均
期待収益率とは収益率の期待値のことです。
そして期待値とは平均のことです。(この言い方は少々雑ではありますが、この種の問題を解く限りにおいては、特に弊害はありません。 )
したがって期待収益率とは収益率の平均なんです。
平均=合計÷回数
小学校の算数で習った平均の公式を思い出しましょう。
平均=(合計)÷(個数or人数or回数)でしたよね。
実は、設例に出てきたA社の株価を予想する表には密かに回数が書かれています。ですから、収益率の平均(つまり期待収益率)は、小学校の算数で習った平均の公式で求めることができるのです。
もう一度先ほどの表を見てみましょう。
生起確率 | 収益金額 | 収益率 | |
---|---|---|---|
Aシナリオ | 0.1 | 450 | 30% |
Bシナリオ | 0.5 | 300 | 20% |
Cシナリオ | 0.4 | -150 | -10% |
「回数なんて、どこにも書いてないじゃないか😡」と思うかもしれませんが、生起確率を分数に直すと見えてきます。
生起確率 | 収益金額 | 収益率 | |
---|---|---|---|
Aシナリオ | 1/10 | 450 | 30% |
Bシナリオ | 5/10 | 300 | 20% |
Cシナリオ | 4/10 | -150 | -10% |
- Aシナリオは10回のうち1回発生し、収益率は30%
- Bシナリオは10回のうち5回発生し、収益率は20%
- Cシナリオは10回のうち4回発生し、収益率は-10%
もう、ここまで来れば、収益率の1回あたり平均値を計算すればいいことがわかりますね。
平均=(合計)÷(回数)={30%×1回+20%×5回+(-10%)×4回}÷10=90%÷10=9%