ブロガー・アフィリエイターのための「はじめての青色申告シリーズ」第3回です。
前回(第2回)は「アフィリエイトなどの副業所得は、真剣に取り組んでいるなら、事業所得として申告するべきだ」という話をしました。
今回は、事業所得として申告する場合に、青色申告と白色申告のどちらを選べばいいかと言う話です。
ただ、タイトルに書いたように、節税の観点からは青色申告が圧倒的に有利です。
「難しそう」「面倒臭そう」という不安に負けて白色に逃げずに、とにかく青色で頑張りましょう。
アフィリエイト収入を青色申告するメリット
青色申告では、白色申告した場合に比べて税額が大幅に安くなる特典が用意されています。
フリーランス・自営業者はもちろん、サラリーマンが副業の所得を申告する場合も、なるべく青色申告にしたいところです。
青色申告特別控除65万円で14万円以上の大幅節税
白色申告と青色申告では、税金がかかる基準となる事業所得の計算の仕方が、少し違います。
白色申告における事業所得=事業収入-必要経費
青色申告における事業所得=事業収入-必要経費-65万円
この-65万円を青色申告特別控除といいます。
(事業収入-必要経費)が65万円未満なら事業所得はゼロとされます。
(事業収入-必要経費)が65万円以上あれば、青色申告をするだけで事業所得が65万円も少なります。(参考:No.2072 青色申告特別控除|所得税|国税庁)
以下、アフィリエイトによる利益が100万円以下の場合について、白色申告による事業所得と青色申告による事業所得がどうなるかを表にまとめてみました。
アフィ利益 | 白色申告 | 青色申告 | 差額 |
---|---|---|---|
0 | 0 | 0 | 0 |
5万円 | 5万円 | 0 | 5万円 |
10万円 | 10万円 | 0 | 10万円 |
15万円 | 15万円 | 0 | 15万円 |
20万円 | 20万円 | 0 | 20万円 |
25万円 | 25万円 | 0 | 25万円 |
30万円 | 30万円 | 0 | 30万円 |
35万円 | 35万円 | 0 | 35万円 |
40万円 | 40万円 | 0 | 40万円 |
45万円 | 45万円 | 0 | 45万円 |
50万円 | 50万円 | 0 | 50万円 |
55万円 | 55万円 | 0 | 55万円 |
60万円 | 60万円 | 0 | 60万円 |
65万円 | 65万円 | 0 | 65万円 |
70万円 | 70万円 | 5万円 | 65万円 |
75万円 | 75万円 | 10万円 | 65万円 |
80万円 | 80万円 | 15万円 | 65万円 |
85万円 | 85万円 | 20万円 | 65万円 |
90万円 | 90万円 | 25万円 | 65万円 |
95万円 | 95万円 | 30万円 | 65万円 |
100万円 | 100万円 | 35万円 | 65万円 |
このように、青色申告による事業所得の金額は、常に白色申告による事業所得の金額を下回り、その差は最大65万円になります。
この65万円でどれだけの節税効果があるかというと…
まず、所得税が少なくなります。所得税率が最低の5%であったとしても、65万円×5%=32,500円の節税です。
次に、住民税も少なくなります。住民税の税率は一律10%なので、65万円×10%=65,000円の節税です。
さらに、国民健康保険税も少なくなります。
国民健康保険計算機によると、わが伊賀市の場合、白色で所得265万円と申告するケースと、同じ事業内容で青色(つまり所得は265万円-65万円=200万円)で申告する場合とでは、保険税が5万円以上違ってきます。
このように、所得税率が最低税率の5%となる場合、青色申告特別控除のおかげで約15万円の大幅節税です。
沢山稼げば稼ぐほど所得税率が上がりますから、青色申告特別控除による節税効果はさらに大きくなります。
青色申告をしないのは、少なくとも十数万円をどぶに捨てるようなもので、とてももったいないことです。
青色事業専従者給与の必要経費算入
青色事業専従者とは、生計を一にする親族などで、青色申告者から給与を得て青色申告の対象になっている事業に従事している者をいいます。
青色事業専従者に対する給与は全額必要経費にすることができます。
例えば、青色申告をしている人が、自分の奥さんにアフィリエイトサイトやブログの記事を書いてもらい、給料を支払っている場合、奥さんは青色事業専従者となります。
この場合、奥さんに対する給料が全額必要経費として認められます(あまりにも常識ハズレに多額な給料は経費に算入できません)。
白色申告の場合は、事業を手伝っている家族(白色申告専従者)に給料を払っても、全額を経費にするのは無理です。配偶者に対する給料は年間85万円まで、配偶者以外に対する給料は年間50万円までしか、必要経費に算入することができません。
この点でも青色申告の方が税金が少なくて済むようになっています。
参考:No.2075 専従者給与と専従者控除|所得税|国税庁
貸倒引当金の繰入
アフィリエイトでは、成果の発生により報酬が発生し、しばらく後にそれが広告主に承認されて始めて報酬が確定し、売掛金という債権が発生します。
普通は売掛金の回収が出来ないことなど無いですが、アフィリエイトASPが倒産すると、貸し倒れて回収できなくなります。
青色申告では、このような事態に備えて、年末売掛金残高の5.5%の貸倒引当金を積むことができます。
早い話が、年末における売掛金総額の5.5%を必要経費に算入できるのです。
お金が出て行っていないのに費用計上できるのは、節税上とてもありがたいです。
その分所得が少なくなり、節税につながります。
一方、白色申告の場合、アフィリエイトの売掛金に関する貸倒引当金を費用計上するのはほとんど不可能です。
この点でも青色申告が有利です。
減価償却資産の一括費用計上
青色申告の場合、30万円未満の減価償却資産(パソコンなどの備品)については、購入した年に購入価額の全額を経費にすることができます。
一方、白色申告の場合、購入した年に購入価額の全額を経費とすることが出来るのは、10万円未満の減価償却資産に限られます。
この点でも青色申告が有利です。
私も、2016年分の確定申告で、約20万円のパソコン購入代金を一括費用計上しました。
純損失の繰り戻し還付
事業が不調で、(事業収入)-(必要経費)が赤字となり、事業所得ではなく事業損失が出た場合にも、青色申告は効果を発揮します。
青色申告をしていれば、前年の所得から今年の損失分を差し引いて税額を計算し直し、税金が少なくなった分を還付(返金)してもらえます。
白色申告ではこの特典はありません。
純損失の繰越控除
青色申告の場合、事業で出した赤字は、翌年以降3年間の所得から差し引くこともできます。
これも白色申告では不可能です。
推計課税されない
実は、税務署長は、納税者の手元に資料が乏しい場合、「預金通帳からみれば、こいつの収入はこれくらいだから、税金はこのくらい取ってやろう。」という感じで課税することが認められています。
これが推計課税です。しかし推計課税のターゲットは白色申告者のみです。
青色申告の場合は、所定の会計帳簿とそれらの記録の裏づけとなる領収書類がきっちり揃っていますので、推計課税のターゲットとはなりません。
青色申告のデメリットは「少し面倒なこと」だけ
青色申告デメリットは、複式簿記に準拠した帳簿をきちんとつけて、保存しなければならないという義務があることです。
具体的には以下の4つの帳簿・決算書を毎年作成して保存しないといけません。
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 損益計算書
- 貸借対照表
こういう帳簿を作るのは「簿記って何?」な状態だととてつもなく高い壁に見えます。
少し簿記がわかる人でも、初めての年はちょっと手間取ります。私も最初の年に色々躓きました(簿記2級を持ってる割にはドンくさい…)。
しかし今では青色申告作業にとられる時間はせいぜい3日程です。
自作エクセルファイルで青色申告をやってもこの程度の時間で済むのですから、クラウド会計を使いこなせばもっと早くできることでしょう。
青色申告は最初は少し大変ですが、それで税金を毎年十数万円以上節約できるなら安いものですよね。
2014年から白色申告もかなり面倒になりました
先程は「青色申告が面倒で白色申告は楽」であるかのような話をしましたが、白色申告はもはやそれほど楽ではありません。
以前は、白色申告の帳簿の作成義務や保存義務はとても緩かったのですが、2014年度分の確定申告から白色申告でも帳簿の作成と保存が義務化されました。
個人事業主の記帳・帳簿等の保存について|所得税(確定申告書等作成コーナー)|国税庁によると
個人の白色申告の方で事業や不動産貸付等を行う全ての方は、平成26年1月から記帳と帳簿書類の保存が必要です。
対象となる方
事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方です。※ 所得税及び復興特別所得税の申告が必要ない方も、記帳・帳簿等の保存制度の対象となります。
記帳する内容
売上げなどの収入金額、仕入れや経費に関する事項について、取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等を帳簿に記載します。
青色申告で作成する仕訳帳とほぼ同様のものを作らないといけない感じです(記帳方法は複式簿記でなくてもいいみたいですが)。
白色申告と青色申告にかかる手間の差が小さくなったこの機会に、一刻も早く青色申告に切り替えて、10数万円以上の節税効果を手にしましょう。\(^o^)/
青色申告を始めるための手続きは次回エントリで!!
次回「はじめての青色申告シリーズ」第4回は
をお送りします。