ブロガー・アフィリエイターのための「はじめての青色申告シリーズ」第9回です。
前回(第8回)は、売上の記帳は必ず実現主義で行わなければならないという話をしました。
青色申告では「現金主義で会計処理をしてはいけない」というのがタテマエです。実際、売上の処理は現金主義ではだめです。
しかし、経費については、ほとんどのものを現金主義で処理しても良いことになっているのです。
税務署が抜け道を用意してくれているんです。
現金主義のほうが楽なので、使っていいことろでは使いまくりましょう。
税務署作成の「青色申告の手引き」に「現金主義でOK」と書いてある
税務署作成の「青色申告の手引き」で、「未払経費」「前払経費」についての記述をみると…
未払経費
本年中に実際に支払った経費だけでなく、例えば、本年分の地代家賃などで未払のものは、未払経費として本年分の必要経費になります。
※ 少額な経費については、未払の整理をしないで、実際に支払った金額だけを必要経費にしても差し支えありません。
前払経費
本年中に支払った経費の中に、翌年分以後の期間に対応する部分が含まれている場合は、その部分の金額は本年分の必要経費にはなりません。
※ 本年中に支払った金額が1年以内の期間のものであるときは、そのまま本年分の必要経費にしても差し支えありません。
どちらも「必要経費=実際に支払った金額」と扱って良い旨が書いてあります。
つまり、経費は現金主義で処理してよいという容認規定です。\(^o^)/
もちろん、それが許されるのは、
- 少額な未払経費
- 1年未満の期間に対応する前払経費
だけです。
しかし、個人のアフィリエイターやブロガーの経費は、大抵どちらかに当てはまります。
現金や預金で支払いを済ませたときに、経費を計上すればいいのです。
現金主義で処理しても良い「1年未満の期間に対応する前払経費」の例
6/21に、7/1以降1年分のレンタルサーバー料金20,000円を振り込んだ
この場合、とりあえず料金を振り込んだ日に、以下のように仕訳をします。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
6/21 | 通信費 | 20,000 | 預金 | 20,000 | (取引相手等) |
ですが、20,000円のうち10,000円は来年1/1~6/31の6か月分の料金であって、本年中にはその分に対応するサーバレンタルサービスの提供を受けません。
税務署作成の「青色申告の手引き」に
本年中に支払った経費の中に、翌年分以後の期間に対応する部分が含まれている場合は、その部分の金額は本年分の必要経費にはなりません。
とあったように、本来の発生主義では、来年1/1~6/31分の10000円については、本年の費用とせずに来年分の料金前払債権として処理すべく、年末に以下のような修正仕訳が必要になります。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
12/31 | 前払費用 | 10,000 | 通信費 | 10,000 | (取引相手等) |
通信費のうち10,000円を、前払費用という債権に修正する仕訳ですが、この仕訳を見てもピンときませんよね。
でも大丈夫です。税務署さんがこんな修正仕訳まではしなくてもOKと言ってくれているからです。
税務署作成の「青色申告の手引き」には次のくだりもありましたよね。
※ 本年中に支払った金額が1年以内の期間のものであるときは、そのまま本年分の必要経費にしても差し支えありません。
この例外的補足規定により、サーバー代20,000円全額を現金主義で仕訳して本年の費用としてもOKになります。
20,000円の一部を前払費用に修正する仕訳なんて不要です。
現金主義で処理しても良い「少額な未払経費」の例
アフィリエイターやブロガーの方は、自サイトの表示確認その他の目的で、事業のためにスマホを利用しているものと思います。
スマホの料金の支払いは後払いです。
例えば、12月利用分は翌年1月に支払うため年末時点では未払ですが、既に通信サービスの提供を受けています。
これはまさに「少額な未払経費」です。
税務署作成の「青色申告の手引き」に
本年中に実際に支払った経費だけでなく、例えば、本年分の地代家賃などで未払のものは、未払経費として本年分の必要経費になります。
とあったように、発生主義の考え方からすれば、年末の時点で通信費という費用が発生します。一方で料金は未払です。
仮に、12月分のスマホ料金が8,000円だとすると、年末に以下のような仕訳をしなければなりません。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
12/31 | 通信費 | 8,000 | 未払費用 | 8,000 | (取引相手等) |
通信費が8,000円発生したことが原因で、未払費用という負債が8,000円発生(増加)したことを表す仕訳ですが、ピンときませんよね。
でも大丈夫です。税務署さんがこんなで仕訳まではしなくてもOKと言ってくれているからです。
税務署作成の「青色申告の手引き」には次のくだりもありましたよね。
※ 少額な経費については、未払の整理をしないで、実際に支払った金額だけを必要経費にしても差し支えありません。
この例外的補足規定により、まだ支払っていない12月分スマホ代8,000円は経費に計上する必要がなくなり、未払費用を使った仕訳も不要になります。
「少額とは何円以下か?」が気になる方もいると思いますが、10万円以下の減価償却資産を「少額減価償却資産」と言いますので、私は「少額=10万円以下」と考えています。
経費の計上は作業が少なくて済む現金主義で行うべし
このように、ブロガーやアフィリエイターの場合、ほとんどの経費は現金主義で仕訳をしてもいいことになります。
発生主義より現金主義のほうが事務作業が少なくて済みます。
経費は現金主義で処理しましょう。
計上基準はコロコロ変えずに継続する
ただし、一度決めた経費計上基準はみだりに変更してはいけません。
最初に現金主義で計上することにしたならば、以後ずっと同じ基準で処理を続けないといけません。
なぜなら、所得税法施行規則の第五十七条で、青色申告者は正規の簿記の原則に従うことが求められているからです。
青色申告者は、青色申告書を提出することができる年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額が正確に計算できるように次の各号に掲げる資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引(以下この節において「取引」という。)を**正規の簿記の原則**に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。(所得税法施行規則の第五十七条)
そして、正規の簿記の原則に従うためには、会計記録は継続的でなければなりません。
すべての会計記録が**継続的**・組織的に行われていること(秩序性)(企業会計原則(一般原則) – Wikibooks-正規の簿記の原則)
会計方針をみだりに変えると会計方針が継続的だとは言えなくなります。これでは正規の簿記の原則に従っているとは言えませんね。
青色申告者としてこれはとてもまずいので慎んでください。
次回「はじめての青色申告シリーズ」第10回の記事は
をお送りします。