子どもにかかる費用は、子どものために直接支出する費用(教育費など)だけではありません。
出産後に保育園を頼れず、就業中断を余儀なくされて生ずる逸失所得(子育てによる逸失所得)も、子育て費用(機会費用)です。
例えば、年収1000万円の方が、子育てのために出産から3年間の就業中断に追い込まれれば、子育てによる逸失所得は3000万円(1000万円×3年間)です。
しかし、こどもを保育園に預けることができれば、就業中断による所得の逸失は避けられます。
この方が保育園を利用することによる利益は、出産からの3年間だけで3000万円です。キャリアの中断を防ぐことで、出産から3年経過後の賃金下落も防げます。
保育園利用による利益は、かなり大きいのです。
このように、保育園の整備で待機児童が少なくなると、子育てによる逸失所得が発生する確率が小さくなります。
このメリットは、女性の収入が高いほど大きくなります。
そして、高所得の女性は、2022年10月から児童手当の特例給付が打ち切られる世帯に集中しています。
所得制限で特例給付が打ち切られる世帯については、全体として、打ち切りのデメリットより、保育園整備のメリットが圧倒的に大きくなるでしょう。
児童手当の所得制限は、待機児童対策とセットで行われる限り、所得制限世帯全体に対して不利益をもたらしているとは言えません。
児童手当の所得制限で浮いた資金を待機児童対策に回すのは、非常に理にかなった、効率的な少子化対策です。
それだけでなく、少子化対策の財源、家族関係社会支出を拡大し、拡大分を現物給付に向けると、子育て財源を効率よく回転させることができるのではないでしょうか。