先日花巻東・千葉君のカット打法(故意のファール打ち)はバント!!という記事を書いたら、空気を読んだDeNA鶴岡選手が19球粘って三振するファインプレーをしてくれました。鶴岡選手のカットに敬意を表しつつ鶴岡選手と千葉君のカットの違いをまとめます。
鶴岡選手のフォーム
フォロースルーが大きいですね。
確かに止めたバットに当たっちゃったファールもあります。
タイミングがずれて手打ちになったのもあります。
でも、ほとんどのファールは前に飛ばそうとしているため以下のような特徴があります。
- 厳しいコースに来た球を、
- ボールの勢いに負けないようできるだけ速いスイングで
- インパクトの瞬間力を入れ、
- バットのヘッドをしっかり返し、
- フォロースルーも大きい
前に飛ばせるタイミングとスイングスピードでバットを振ったにも関わらず、球威で押されたためにファールになったケースが結構あります。
厳しいコースを攻められたりタイミングを外されたりして、態勢を崩されつつ何とか打ったファールも結構あります。
意識的にファールだけを狙って打っている疑いなどかけられる余地がありません。
プロにはカットをバントとみなすルールが無いので、その時点でカットがバントと判定されることはありません。
しかし、鶴岡選手のファールの打ち方であれば、高校野球現場で繰り返されたとしても誰もバントとは言わないでしょう。
2回戦彦根東戦の千葉選手
5球目に打ったファールは、以下の特徴を併せ持っていました。
- (真ん中高めの)甘い球を、
- ボールの勢いに絶対負けるくらいのスイングスピードで
- インパクトの瞬間力を入れず、
- バットのヘッドをほとんど返さず
- フォロースルーもほとんど無く
意識的にファールだけを狙って打っている可能性がかなり高いです。
しかし彦根東高校戦の千葉君の打撃成績は遊安・四球・遊ゴ・左安・左安。安打を打った場面でも打球が流し打ちの方向にしか飛んでません。
千葉君がよほど非力で、うまくいけば流し打ちくらいはできるものの
- (真ん中高めの)甘い球でも、
- ボールの勢いに絶対負けるくらいのスイングスピードしか出せず
- インパクトの瞬間力が入らず、
- バットのヘッドもほとんど返せず
- フォロースルーもほとんどとれない
ような打撃フォームになってしまうことも多い、という可能性が捨てきれませんでした。
したがってこの試合で千葉君のカット打法をバントとみなすことなど出来ません。
3回戦済美戦の千葉選手
私見では、この試合で「意識的にファールだけを狙って打っている」という打席は無かったと思います。
しかし、この試合の千葉君の打撃成績は右安・空振・三ゴ・右3・中安。
並のプロ投手以上の剛球投手である安楽君からライト定位置より後ろまでとばすスリーベースを打ちました。
内角の厳しい球を巻き込んで打つライナーのファールも打っていました。
- さほど甘いコースではない威力のある速球を
- 速く鋭いスイングで
- インパクトでもしっかり力を入れて
- ヘッドもしっかり返し
- 結果として大きなフォロースルー
こんなスイングを披露してしまったのですから、「千葉君がよほど非力」という可能性は完膚なきまでに粉々に砕け散りました。
準々決勝鳴門戦の千葉選手
ほぼ全てのファール打ちについて以下の4つの条件は満たします。
- ボールの勢いに絶対負けるくらいまでスイングスピードを落とし
- インパクトの瞬間力を入れない
- バットのヘッドをほとんど返さない
- フォロースルーもほとんど無い
安楽君の剛球をはじき返した千葉選手が、真ん中のコースに来た甘い球をこんな打ち方でファールにしたら、ろくにスイングせず意識的にファールだけを狙って打っているものと判断されて当然です。
以前の記事「花巻東・千葉君のカット打法(故意のファール打ち)はバント」でも言いましたが、スリーバント失敗がバッターアウトとされるようになった趣旨や高野連の規則「17.バントの定義」でわざわざカット打法場合のみ別の定義が用意された趣旨からすれば、「得意な球が来るまでろくにスイングせずに故意にファールを打って粘るという戦術」は禁止です。
鳴門高校戦で千葉君の打ったファールのうち何球かはバントと判断されて当然です。
準決勝延岡学園戦の千葉選手
この試合ではファールがひとつもないので、バントとみなされるファール打ちもありません。
第4打席のライナーなど強襲ヒット目前の鋭さです。
井端選手のフォームとインタビュー
最後に現役プロ選手でもトップレベルのカットの使い手、井端選手のプレーとインタビューをご覧ください。
井端選手の場合は
- 狙い球であれば
- ボールの勢いに負けないようできるだけ速いスイングで
- インパクトの瞬間力を入れ、
- バットのヘッドをしっかり返し、
- フォロースルーも大きい
スイングで打つわけです。
でも、狙い球とは異なる厳しい球が来たら、インパクトの瞬間力を抜き、ファールを打とうとします。
そんなこと見た目でほとんどわかりませんがね。
「意識的にファールだけを狙って打っている」のとは明らかに違うので、高校球児が井端選手と同じようなうち方で繰り返しファールを打っても、バントとみなされることなど無いでしょう。
最後に
これは「私基準」で書いた記事です。
私の目では千葉君とプロ選手のカットの違いはこれくらいしか表現できないのですが、目の肥えた審判団にはもっともっと違いが見えるのだと思います。
千葉君のカット打法の一部をバントと判定した審判団も、ある程度文書化できる基準があったのでしょうから、できれば公開して欲しいと思います。
返す返す言いますが、スリーバント失敗がバッターアウトとされるようになった趣旨や高野連の規則「17.バントの定義」でわざわざカット打法場合のみ別の定義が用意された趣旨からすれば、「得意な球が来るまでろくにスイングせずに故意にファールを打って粘るという戦術」は禁止です。