健康保険や国民健康保険など公的医療保険についてわかりやすくまとめた

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日本は国民皆保険です。健康保険や国民健康保険などの公的医療保険には国民全員が加入を義務付けられています。

その割に「公的医療保険がどんな恩恵がもたらすか」を把握している人は少ないですよね。私もそうでした。

でも、民間の保険を選んだり見直したりする前に、公的医療保険の補償内容について把握しておくべきです。

公的医療保険の種類

公的医療保険は、いくつかの制度に分かれて運営されています。

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全て国が音頭を取って運営している保険ですから、どの制度に加入していても保障内容が同じように思えるかも知れません。

しかし、制度ごとに保障内容はかなり違ってきます。特に高額療養費と傷病手当金は差が大きいです。

まずは自分がどの制度に加入しているかをしっかり把握しておきましょう。

※船員保険については加入者が少ないため説明を割愛します。

公務員や学校職員が加入する共済組合

共済組合は公務員や学校職員が加入する公的医療保険です。

全体の7%しかいませんが、一般に最も保障内容が充実しています。

特に高額療養費制度や傷病手当金の付加給付が充実しています。

例えば私の妻と同じ三重県の教職員の場合、高額療養費制度の付加給付などが充実しているため、医療費の自己負担額の上限は一月あたり5000円程度に抑えられています。

また、傷病手当金の付加給付なども充実しているため、病気やケガで働けなくなってからも、3年半はある程度の収入が確保されます。

公務員や学校職員で、民間保険会社の医療保険・就業不能保険・所得補償保険に加入している方は、 必要のない保障を付けてしまっている可能性があります。

今一度ご自身の加入されている共済組合の保障内容を確認し、既に加入している医療保険を見直すことをお勧めします。

ちなみに、妻が公務員である我が家でも、2015年に保険を見直したのですが、医療保険を中心にかなり無駄が見つかりました。

一月あたりの無駄遣いは大したはことありませんが「ちりも積もれば山となる」です。しっかり見直してください。

サラリーマンが加入する健康保険組合

健康保険は給与所得者が加入する公的医療保険制度です。全体の半数以上が健康保険加入者です。

この健康保険を運営する組織には健康保険組合協会けんぽがあります。

この二つでは保障内容が大きく違い、おおむね健康保険組合が協会けんぽを上回ります。

冒頭の図でも健康保険組合と協会けんぽをはっきり区別しています。

保障内容が手厚いことが多い健康保険組合

健康保険の運営を行う法人を健康保険組合といいます。全体の2割強がここに加入しています。

常時700人以上従業員がいる事業所や、3000人以上従業員が集まる同種同業の事業所が設立します 。

健康保険組合では、高額療養費や傷病手当金について、法定給付水準を上回る付加給付を行っていることが多いです。

一方で付加給付を全く行わない健康保険組合もあります。

付加給付を行う健康保険組合は共済組合に次いで保障内容が手厚いです。

法定給付しか行わない協会けんぽ

協会けんぽも健康保険を運営する組織の一つです。

独自の健康保険組合を持たない企業の従業員が加入します。全体の3割近くがここに加入しています。

協会けんぽでも高額療養費制度や傷病手当金の仕組みはあります。

しかし協会けんぽでは法定給付しか行わないため、付加給付を行う健康保険組合や共済組合に比べて保障内容が落ちます 。

最も保障が薄いのが国民健康保険

共済組合や健康保険に加入しない人(個人事業主や無職の方)が加入する公的医療保険制度が、国民健康保険です。各市町村が運営しています。

全体の3割近くがここに加入しています。

高額療養費制度は有りますが、法定給付のみで付加給付はありません。また傷病手当金は有りません

国民健康保険は、傷病手当金がない分、共済組合や健康保険に比べて保障内容が圧倒的に劣ります。

怪我や病気に対する備えとして、民間保険に入る必要性は高くなります。

傷病手当金の代役としての役割を果たしてくれるような保険に加入するといいでしょう。

医療保険よりも就業不能保険や所得補償保険が適していると思います。

国民健康保険組合

実は国民健康保険には市町村の他にも運営主体があります。

健康保険に健康保険組合があったように、国民健康保険にも国民健康保険組合があるのです。

国民健康保険組合は同業の個人事業主事業者が加入する組織です。

市町村が運営する国民健康保険と異なり、国民健康保険組合には、傷病手当金を給付してくれるところもあります

ただ、傷病手当金を給付してくれる場合でも、健康保険のように1年半にわたって給付してくれることは殆どありません。

国民健康保険組合は、市町村が運営する国民健康保険に比れば保障が手厚いですが、健康保険ほどではありません。

後期高齢者医療制度

75歳以上になると全ての人が加入する公的医療保険制度が後期高齢者医療制度です。

保障内容は国民健康保険と大きく変わりませんが、年齢を重ねた分、高額療養費制度などが手厚くなっています 。

公的医療保険の保障内容

公的医療保険の主な保障内容を見ていきましょう。

保険診療費用の7割を肩代わりしてくれる

健康保険や国民健康保険などの公的医療保険の補償で、最も基本的なのは、病院で保険証を見せれば自己負担3割で医療を受けられることですよね。

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自己負担分以外の7割相当については公的医療保険が費用負担してくれています。これを「療養の給付」といいます。

しかし、自己負担が3割で済むのは、原則として、保険診療についてのみです。

保険診療とは

保険診療とは、保険が適用され、費用の一部が公的医療保険から補償される診療です。

厚生労働省によると、病院などで受けた診療のうち、保険診療と認められるのは、以下の3条件をクリアした場合です。

  • 公的医療保険の被保険者(加入者)であることがわかる保険証を持って
  • 保険医療機関、保険薬局(一般的な病院、薬局)などで
  • 疾病または負傷のためと認められる診療を受けた

とはいえ、病気やけがで病院に行った場合、大抵これらの条件はクリアしています。

自己負担の詳細

保険診療の費用のうち、公的医療保険から補償される割合を給付率といいます。年齢別の給付率は以下の通りです。

年齢 給付率 自己負担割合
義務教育就学前 8割 2割
義務教育就学後~69歳 7割 3割
70歳~74歳 ※1※2 8割 2割
75歳~ ※1 9割 1割

※1…70歳以上の現役世代並み所得者に対する給付率は7割、自己負担割合は3割です。

※2…現役世代並み所得者以外の方で、1944年4月1日以前に生まれた方に対する給付率は9割、自己負担割合は1割です。

診療費用のうち公的医療保険から支給される部分は、公的医療保険から入院先の病院に直接支給されます(現物給付)。

診療費用のうち、公的医療保険から給付される部分以外は、私たちが自己負担しないといけません。これを一部負担金といいます。

医療費の自己負担率は3割以下に抑えられていますが、それでも自己負担が膨らみ過ぎる場合に備えて、医療費抑制のための制度がさらに設けられています。

これらについては後ほど取り上げます。

また、この記事では、これ以降、義務教育就学後以降69歳以下の方が医療を受けた場合について話をしていきます。

在宅医療への訪問看護費用も自己負担3割

最近は重い病気でも在宅で医療を受ける人も多いですが、在宅で受ける看護サービスは保険診療ではありません。

しかし、国が指定する事業者から看護サービスを受けたときは、公的医療保険が費用の7割を肩代わりしてくれます。

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これを訪問看護療養費の支給といいます。

その他にも自己負担3割のケースがある

保険診療以外でも、やむを得ない事情があるなど「一定の条件」に当てはまれば、例外的に、保険診療と同程度に公的医療機関から費用が補償されます。

この仕組みを「療養費の支給」と言います。

「一定の条件」に当てはまるのは

  • 保険証を持ち合わせてなかった
  • 労災保険の対象とするつもりで保険証を提示せずに診療を受けたが、労災認定されなかった
  • 就職転職したばかりで、保険証がまだできていなかった

などの保険証を提示できなかった場合のほか、

  • 一定の条件を満たすはり灸マッサージを受けた場合
  • 海外で医療を受けた場合(海外療養費の支給)

などの場合があります。

例えば、一定の条件を満たすマッサージを受けたなら、自己負担は3割で、残りの7割りは公的医療保険から支給されます。

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ただ、療養費の支給を受ける場合、診療を受けた当日は、診療費用の全額を一旦負担しなければいけません。

後日、申請手続きをして認められれば、公的医療保険から診療費用の7割が現金給付され、結果として自己負担が3割になります。

また、請求期限は診療後2年間で、これを過ぎると時効になって請求できなくなります。

保険診療の場合は、最初から支払いが診療費用の3割以下になるので、それと比べれば少々不便ですね。

救急搬送の費用は公的医療保険が全額支給してくれる

ケガや病気で緊急に手当てが必要で、自力で移動できなければ、救急車を呼びますよね。

救急車を呼ぶべきシチュエーションで、やむを得ずタクシーなどを使った場合は、その費用は公的医療保険が全額負担しくれます。

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これを移送費の支給といいます。

ただし、一旦、患者自身が費用全額を支払い後日公的医療保険に請求する形になります。

また、公的医療保険による費用計算は、最も経済的な経路と方法で移動する前提で行われます。

入院費用の一部には、あまり肩代わりしてもらえないものもある

入院時の費用のうち一部については、保険診療としては扱われず、自己負担割合が高くなってしまいます。

入院時の食費の自己負担割合は、2015年現在約40%ですが、2016年と2018年に大幅な引き上げが予定されているので、最終的には80%弱まで上がります。

また、65歳以上で長期入院した場合、食費と病室料金については8割近くを自己負担します。

自由診療や混合診療は原則として保険がきかない

保険診療以外の診療(自由診療)は、原則として公的医療保険から補償されず、診療費全額が患者の自己負担となります。
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混合診療とは保険診療と自由診療を併用したものですが、全体として自由診療とみなされ、診療費用全額が自己負担となります。

例えば、10万円の保険診療に10万円の自由診療を追加した混合診療を受けた場合、以下のようにはなりません。
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20万円全額が自己負担です。
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また、自由診療や混合診療の費用は高額療養費制度の対象ともなりません。

混合診療には特例で保険が少しだけ効く場合がある

混合診療の費用は患者が全額を負担するのが原則です。

しかし、一部の混合診療については、保険診療と共通する部分に対して、公的医療保険から保険外併用療養費例外的に支給されます。

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保険外併用療養費は高額療養費制度の対象となります。

先進医療

国が「安全性や有効性が十分ありそうだ」と期待してはいるものの、まだ科学的に安全だとか有効だとかと言い切るにはデータが不十分な医療を評価療養と言います。

評価療養の場合は、通常の保険診療と共通する部分には保険が適用されて、保険外併用療養費が給付され、保険診療と同じ自己負担割合(通常は3割)で済みます

先進医療には高額なものがあります。

先進医療を選択しなければならない事態に陥る確率はとても低いですが、もしそうなったら、治療費で家計が破たんする大ピンチです。

先進医療に備えた保険には、是非とも入っておくべきです。

患者申出療養

患者申出療養とは、保険診療の対象外である高度な医療を、患者の希望によって、健康保険適用の治療と併用できるようにする制度です。

評価療養との大きな違いは、以下の3点です。

  • 困難な病気と闘う患者からの申出を起点とすること。
  • 保険外併用療養費の対象となるまでの期間が原則2~6週間と短いこと
  • 身近な医療機関でも受診できる可能性が高くなること

その他、安全面への配慮などは、評価療養と同じレベルが期待できます。

また、評価療養と同様、通常の保険診療と共通する部分には保険が適用されて、保険外併用療養費が給付され、保険診療と同じ自己負担割合(通常は3割)で済みます

患者申出療養は先進医療の利用機会を大きく広げる新制度ですが、2015年現在はこれに対応した保険はありません。

2016年以降、患者申出療養に対応した保険商品が出ると思いますので、この機会に医療保険を見直すべきですね。

選定療養

選定療養とは、自由診療のうち厚生労働省が認めた診療の中から、患者が自らの意志で選択したものです。いわゆる「ぜいたくな医療」で差額ベッドが代表的な例です。
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選定療養は、通常の保険診療と共通する診療と、本当に贅沢な自由診療とを組み合わせた混合診療です。

通常であれば、診療費用の全額が患者の自己負担になるところですが、選定療養のうち保険診療と共通する部分は、例外的に、公的医療保険の補償対象となり、保険外併用療養費が支給されます。

選定療養にはどのようなものがあるか把握して、その中に是非とも受けたいものがあるなら、保険で備えておくべきだと思います。

高額療養費制度で保険診療の自己負担額の上限が設定される

保険診療の自己負担は3割に抑えられていますが、それでも、重い病気にかかって長期間入院すると医療費がかさみます。

しかし、公的医療保険にはそうならないようにしてくれる制度があります。

それが高額療養費制度です。

高額療養費制度によって、保険診療の自己負担額には天井が設定され、医療費の負担が際限なく膨らまないようになっています。

月収30万円程度の一般的なサラリーマンの場合、医療費自己負担額の上限が一月当たり9万円未満

だと説明されることが多いです。しかし、これが当てはまらず、一月当たりの医療費自己負担額の上限がもっと少ない金額で済む人も多いです。

つまり、加入する公的医療保険によって、高額療養費制度の手厚さは全く違うのです。

特に公務員や、一部優良企業のサラリーマンは、高額療養費制度が手厚くなっています。

この辺りは以下の記事で詳しく書きましたので、興味のある方は参照してください。

ケガや病気で働けない時の収入を補償してくれる傷病手当金

ケガや病気で就業不能になった時には、公的医療保険から、給料の3分の2が一年半にわたって支給されます。

これが傷病手当金です。

公務員や大企業では、支給期間が2年のところも多く、支給金額も給料の3分の2より多いこともあります。

一方、国民健康保険では、ほとんどの場合、傷病手当金の仕組みはありません。

妊娠出産費用を肩代わりしてくれる

公的医療保険は、出産費用も肩代わりしてくれます。

まず、妊娠中や分娩中の以上については、病気として扱われ、保険診療の対象となります。

一方、正常な妊娠や出産は、怪我でも病気でもないので、保険診療の対象とはなりません。

では、正常な妊娠や出産に対しては、公的医療保険から何も補償されないのでしょうか。いやそんなことはありません。

妊娠や出産に対しては、それが異常なものであろうと正常なものであろうと、出産手当金や出産育児一時金で補償が行われます。

公的医療保険の保障内容を把握せずに、民間保険会社の医療保険に加入したなら、すぐに見直すべし

そもそも、民間の医療保険は、公的医療保険を補完するものです。

公的医療保険の保障内容を把握せずに、民間の医療保険に入っていたとすれば、無駄な保険料を支払っている可能性が高いです。

そもそも、民間保険会社の医療保険は、必要性がとても低いです。

公的医療保険の保障内容を確認せずに加入した医療保険があれば、即刻見直しましょう。

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