長期入院リスクは無視できないけど、満足に保障してくれる民間医療保険はない

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厚生労働省の患者調査などで平均入院日数を調べていると、何年も入院し続けるような超長期入院患者が、ごくわずかに存在することがわかります。

超長期入院は、発生確率が少ないものの、ひとたび発生すれば破滅的な損害を家計に与えるリスクの一つです。

リスクマネジメント上、超長期入院は保険などの相互扶助で対処すべきものですが、民間保険会社は超長期入院に対応した医療保険を販売していません。

就業不能保険や所得補償保険で備えるか、または長期入院の際に受ける損害を少なくする努力をしたうえで、貯金など自力で対応するしかありません。

入院日数の分布

平成26年患者調査「平成26年患者調査閲覧第65表推計退院患者数,在院期間×性・年齢階級×病院-一般診療所・病床の種類別」を参考に、入院日数について調べてみました。

高齢者が入院してもほとんどは60日以内の短期入院となる

高齢者でも長期入院する人は少ないです。以下は、退院患者のうち、入院日数が60日以内で済んだ人の割合ですが…

年令 60日以内の短期入院
20歳未満 98.27%
20代 97.26%
30代 97.10%
40代 95.43%
50代 94.38%
60代 93.91%
70代 92.15%
80代 86.70%
90代以上 81.40%

90代の退院患者でも、8割以上の方が、入院日数は60日以内で済んでいます。

しかし一方で、61日以上入院する長期入院患者は確実に存在することがわかります。

※この記事では61日以上の入院を長期入院、3年以上の入院を超長期入院と呼ぶことにします。

何年も入院する超長期入院患者は確かに存在する

長期入院患者を、入院日数によって3種類に分けて、入院患者全体に対するそれぞれの割合を見ていきましょう。

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年令 2月~18月 18月~3年 3年以上
20歳未満 1.37% 0.00% 0.00%
20代 1.88% 0.00% 0.00%
30代 2.71% 0.00% 0.00%
40代 4.57% 0.00% 0.11%
50代 5.36% 0.17% 0.17%
60代 5.57% 0.22% 0.26%
70代 7.27% 0.26% 0.32%
80代 12.26% 0.50% 0.46%
90代以上 16.14% 0.96% 1.37%

表の中で0%となっているところは、端数処理でそうなっただけであって、実際に一人もいないというわけではありません。

40代以上では、退院患者のうち1000人に1人以上は3年以上入院しています。

3年以上の超長期入院はめったに起きないですが、全く起きないというものではありません。そして一度起こってしまえばかなり大きな損害を家計に与えます。

一家の稼ぎ手が超長期入院する羽目になったら、家庭によってはライフプランそのものを見直す必要すら出てくるでしょう。

超長期入院患者が全体の平均入院日数を引き上げている

先日調べたところによると、高齢者の平均入院日数は概ね1月以上となっていました。

年令 平均入院日数
60~64歳 30.4
65~69歳 29.5
70~74歳 33.5
75~79歳 36.9
80~84歳 41.4
85~89歳 51.8
90歳以上 76.3

ただしこれは多くの人が一月以上入院するということを意味するのではありません。

何年もにわたって入院するような超長期入院患者が、平均入院日数をひき上げているのです。

平均だけを見ていてもこういうことはわかりませんね。

入院が延びるとどんどん保障が薄くなる

入院期間が延びれば延びるほど保障はどんどん薄くなります。

18ヶ月以下の入院は傷病手当金で保障される

例えば、会社員やサラリーマンは、入院などで就業不能になってから、最低でも18カ月の間は傷病手当金を受給することができます。しかしいずれ傷病手当金は打ち切られます。

18ヶ月を超える入院は障害年金で保障される可能性があるが

入院してから1年半ずっと病気で働けないようだと、障害年金の受給資格を得られる可能性が高くなります。

しかし、必ず障害年金の受給資格を得られるというわけではありません。

また、障害年金の受給資格を得ることが出来ても、支給される年金額は、働いていた時の給料に比べてかなり少なくなります

例えば、私の妻が今障害年金を受給できるようになったとしても、障害年金の合計は200万円/年未満です。
今の妻の年収が700万円以上ですから、1/3未満まで年収が減ってしまいます。

入院が長くなれば、たとえ障害年金を受けることができても、家計が受ける打撃はとても大きくなります。

保障が薄いのに働けないと、家計へのダメージは深刻

では、長期入院によって、家計はどれぐらいの損害を受けるのでしょうか 。

月収30万円のサラリーマンと、月間事業所得が30万円の自営業者について、入院年数と家計損害金額(単位:万円)との関係を見てみましょう。

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入院年数 1年 2年 3年 4年 5年
一般企業社員 198 506 935 1,364 1,792
優良企業社員 88 174 603 1,031 1,460
公務員 44 148 276 552 980
自営業(就業不能) 438 866 1,295 1,724 2,152
自営業(就業可能) 78 146 215 284 352

入院中に仕事ができない自営業者は入院によるダメージがかなり大きいですね。5年も入院したら、2000万円以上の損害です。

また、サラリーマンの場合は勤め先によって入院によるダメージが大きく変わりますね。

ところが、超長期入院には医療保険では対応できない

超長期入院はめったに起きないですが、全く起きないというものではありません。

そして、起きてしまえば、かなり大きな損害を家計に与えます。

多くの家庭にとって超長期入院は、リスクマネジメントでとるべき手法を表す下の図でいえば、左上のマスに位置するものとなるでしょう。

※注:この図でいう長期入院は超長期入院を除いたものを指します。
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ところが、超長期入院を入院を保障してくれる民間保険商品はないんですよね。

3年以内の長期入院まで保障してくれる保険商品はあるんですけどね。

2年までのものもありますね。

ただ、ネットで調べられる限りにおいては、家計にとって最も保障が必要な超長期入院を保障する商品はどこの保険会社も売っていないんですよね。

もしかしたら、団体保険など、広く一般向けには販売されていない民間医療保険商品には、超長期入院を保障する商品があるのかも知れませんが…。

保険会社の存在意義は、個人では到底引き受けてくれない不確実性を、個人に代わって引き受けることにもあるはずです。

しかし、医療保険については、生命保険各社はこの社会的使命をどこかに置き忘れてるようですね。

残念ですが今後に期待しましょう。 

長期入院で痛いのは、病院への支払いではなく、働けないことによる収入減

長期入院はダメージが大きいのですが、病院への支払いは比較的小さいです。

ダメージの大部分を占めるのは働けないことによる収入減少です。

入院年数と家計の損害金額の関係を表したグラフをもう一度見てみましょう。

2016-11-05_1633

自営業者に注目してください。

入院で就業不能となる場合に比べれば、入院中に就業可能な場合は、長期入院によるダメージがぐんと少なくて済むことが分かりますね。

両者の差が「働けないことによる収入減少」です。

保険をかけるばかりではなく、入院中でも所得が得られるような手段を真面目に検討することが必要です。

入院しなくても働けなければ大ダメージ

ところで、入院する必要まではないものの、なかなか回復せずにいつまでも働けない、ということもありますよね。

特に、うつ病などの精神性の疾患には、そういったことが起きやすいと思います。

このケースで医療保険は役立たない

こういう場合には、入院していなくても家計は大きなダメージを受けますが、医療保険は全く役立ちません。

医療保険は、入院や手術に対して給付金や保険金を支払ってくれますが、逆に、入院や手術がなければ1円も支払ってくれません。

働けないことによる収入の減少に備えるには、医療保険は不向きなのです 。

働けないリスクに保険で対応するなら、医療保険ではなく就業不能保険や所得補償保険

では、働けないことによる収入の減少に備えるには、どのような保険を利用すればいいのでしょうか。

働けないことを条件に保険金を支払ってくれる保険ですね。

就業不能保険や所得補償保険と言われるタイプのものです。

とりあえず、医療保険は、働けないリスクをヘッジするにはイマイチです。

貯金や入院中の収入確保も大事

家計に襲い掛かるリスクへの備えついて、保険だけを考えてしまうのは短絡的です。

まずは次のようなことを考えましょう。

  • 入院中の就業不能によるダメージを減らす
    • 入院中も就業可能な仕事を持つ
    • 不労所得(資産運用による収入)を確保する
  • コストの高い保険に頼らずダメージに耐える力を蓄える
    • 貯蓄に励む
    • 公的医療保険以外で、自分が利用できる相互扶助を把握しておく

保険はコストがかかります。最後の手段だと考えるくらいでちょうどいいのです。

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