HCDコンサルティング(旧・中川勉社会保険労務士事務所FPウェブシュフ)のブログ

Q. 有配当保険は無配当保険より得なの? A. 別に得ではありません…

2016-05-24-profit
生命保険には、契約者配当金が支払われる有配当保険と、そうではない無配当保険保険があります。

例えば、我が家で加入している三重県公立学校職員互助会のグループ保険(定期保険の一種)は有配当保険です。年間保険料は約10万円なのですが、そのうち3万円から4万円が契約者配当金として戻ってきます。

[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]配当がある分お得よね[/bubble]

と妻が言ったことがありましたが、

[bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]「配当があるから得」とは言えません。[/bubble]

配当原資は保険運営で生じた剰余金ですから「そもそも保険料が高すぎただけ」なのです。

配当という言葉にお得感がありますが、別に得をしているわけではありません。

支払い過ぎた保険料が戻って来ただけですから「得した!!」と錯覚しないようにしたいです。

保険の剰余金が発生する仕組みと三利源

保険料の基礎となる予定基礎率の原則に沿って計算されていますが、保険維持のためにある程度の余裕をもって計算されています。

そのため、予定基礎率と実際の確率との間にはある程度の差が生じ、保険会社に予定外の利益をもたらすことがあります。

この差益のことを剰余金といいます。剰余金が発生する原因は3種類に分けられ、剰余金の3利源と言われます。

下の図は保険契約をめぐるお金の流れと登場人物をまとめたものですが、剰余金はこの中の3か所で発生する可能性があります。これを剰余金の三利源といいます。

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三利源がどこなのかを見ていきましょう。

死差益

三利源のトップバッターは死差益です。

死亡保険の場合、死差益とは、予定死亡率よりも実際の死亡率が低くなり、保険金の支払いが予定より少なくなるために生じた剰余金のことです。

上の図で言えば、「保険金」の矢印が予定より細くなって、保険会社の手元に剰余金ができるパターンです。

なお、生存保険では、保険金の支払いが予定より少なくって死差益が発生するのは、予定死亡率よりも実際の死亡率が高くなった場合です。

利差益

利差益も三利源の一つです。

利差益とは、経済情勢が好調であるなどの理由で、責任準備金の実際の運用成果が予定利率を上回ったために発生した剰余金のことです。

上の図でいえば、「利回り」の矢印が予定より太くなって、保険会社の手元に剰余金ができるパターンです。

なお、実際の運用成果が、予定利率を下回ることを逆ザヤといいます。

1990年代後半から2000年代にかけて、逆ザヤによって、いくつかの生保が破たんしまた。

費差益

三利源の最後は費差益です。

費差益とは、予定事業費率よりも、実際の事業費率が低くなることにより発生した剰余金のことです。

上の図でいえば、給料の矢印が予定より細くなって、保険会社の手元に剰余金ができるパターンです。

保険の配当は保険料の払い戻しに過ぎない

剰余金の発生の仕組みと三利源を見てくるとわかりますが、保険契約者に支払われる配当は、当初の保険料が高すぎた分を契約者に払い戻したものにすぎません。

株式の配当のように、事業によって生み出された利益の分配という側面はありません。

[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]保険会社から配当金が支払われても、得をしたというのとは違うのね…[/bubble]

[bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]だから保険の配当には所得税がかかりません。[/bubble]

その年に支払った保険料が減少したものとして処理されるので、生命保険料控除が減って結果的に所得税が少し高くなりますが、配当に税金が課されるわけではありません。

株式の配当とはこの点が大きく違います。

有配当保険の配当タイプ

有配当保険は、配当の仕方によって、いくつかの種類に分かれます。

3利原配当タイプは、死差益、利差益、費差益のすべてを配当原資とする有配当保険です。毎年配当型が多いですが、3年ごとに配当するタイプもあります。

一方、利差配当タイプは、利差益のみを配当原資とするタイプです。5年ごとに配当する「5年ごと利差配当」タイプが主流ですが、「3年ごと利差配当」型や「毎年利差配当」型もあります。

契約者配当金の種類

契約者配当金には、通常配当(普通配当)と特別配当があります。株式の配当にもこのような区別がありますが、内容はもちろん違います。

通常配当(普通配当)は、契約で決められたとおりに、定期的に支払われる配当金のことです。

特別配当は、長期継続契約に対して、通常配当とは別に、契約消滅(保険金支払いまたは解約)時に支払われるものです。

契約者配当金の支払い方式

保険の配当はすぐに支払われるとは限りません。株式の配当とはこの点でも異なります。

積立配当

積立配当方式では、原則として配当金はすべて積み立てられます。

保険契約が終了するか、契約者から支払い請求があったときに、積み立てられた配当が払い出されます。

一旦支払われた配当は、通常は、再度積み立てることはできません。

保険の契約者配当金の支払い方式では最も多い方式です。

保険金買増し

配当金を一時払い保険料として保険を買い増し、保険金額を増やす方式です。

保険料相殺

配当金が保険料の支払い原資として使われる方式です。

現金配当

配当金が毎年現金で契約者に支払われる方式です。

我が家の有配当保険は得なのか

我が家が加入している三重県公立学校職員互助会のグループ保険は、保険期間一年の定期保険です。

毎年8月で契約を更新しているので、8月に契約が終わったものとして、配当金が毎年9月に支払われます。

[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]うちへの配当はどの支払い方式?[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]積立配当でもあるし現金配当でもあるよね。[/bubble]

個人的には、配当金をなくして、最初から少なめの保険料にしてもらう方がありがたいと思っています。

配当金は、支払い過ぎた保険料が戻って来ただけのもの。得をしているわけではありません。

余計な手間がかかっている分、むしろ損をしていると言えるかも知れませんね。

付記:相互会社と株式会社では配当の呼び方が違う

生命保険会社の組織形態には相互会社と株式会社があります。

どちらの形態をとっているかによって、契約者に支払われる配当金の名称が違ってきます。

相互会社の場合は社員配当金といい、株式会社の場合は契約者配当金といいます。

相互会社では配当と言えば社員配当金です。


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