HCDコンサルティング(旧・中川勉社会保険労務士事務所FPウェブシュフ)のブログ

終身医療保険の「保険料は一生上がりません」はメリットではない。若い間は保険料が割高。

連載:医療保険は不要 第26回です。

前回は、定年後に医療保険は必要? という話をしました。

今回は、終身医療保険のCMで有名な「保険料は一生上がりません」にケチをつける回となります。

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終身医療保険は老後の保険料を先払いする医療保険

「保険料は一生上がりません」は、素晴らしくもなんともないものなんですよね。

老後に支払うべき高い保険料を、若いうちに前払いしているだけです。

将来の保険料を前払いすることによるデメリットも大きいです。

定期医療保険の保険料は年齢ととも上がるのが当然

医療保険には終身タイプと定期タイプがあります。

終身タイプは保障が一生続くのに対し、定期タイプは限られた期間のみ保障されます。

定期医療保険の保険料は年齢とともに高くなります。

入院する確率の高い人ほど医療保険の保険料は高くなる

原則として、保険では、保険金が支払われる確率が高い人ほど保険料が高くなります。

保険加入者の一人一人について、(保険料)=(保険金)×(保険金が支払われる確率)という関係が成り立つ。(神戸大学榊素寛准教授の2014年講義レジュメ

保険金支払い確率に応じた保険料のことを自然保険料と言います。

医療保険の保険料は、自然保険料であれば、若い人ほど安く高齢者ほど高くなります。

高齢者ほど入院する確率が高いので、これは当然です。

入院する確率は年齢とともに加速度的に上がる

高齢者の入院する確率は高いですが、その確率が若い人とどれくらい違うのか見てみましょう。

平成26年(2014)患者調査の概況|厚生労働省によると、年齢階級別にみた女性の入院受療率(人口10万対)は以下の通りです。

入院受療率と言うのは10万人のうち入院しているのは何人かを表したものです。

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加齢とともに加速度的に受療率が上昇しますよね。

医療保険の保険料を自然保険料方式で決めると、高齢になったときの医療保険料の上がり方が、ものすごく激しくなってしまうわけです。

保険料も年令とともに加速度的に上がる

自然保険料方式で医療保険の保険料を決めると、85歳以上89歳以下の女性が支払う保険料は、20歳以上24歳以下の30倍程度に設定しなければなりません。

高齢になったときの保険料上昇があまりにもすごいので、そこで定期医療保険の更新をやめてしまう人も多いです。

そのためか、保険料が上がらない終身医療保険が登場しました。

終身医療保険で一生保険料が上がらないカラクリ

一生上がらない保険料のことを平準保険料といいます。

本来は年々上がるはずの保険料を、どのようにして「一生上がりません」な状態にしているかと言うと、以下のような感じです。

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若いうちは保険料が割高。別にお得ではない。

若いうちは自然保険料よりかなり余分に保険料を支払い、その分を老後に回すことで、老後に保険料が上がらないようにしているわけです。

ところで、実際の定期医療保険は、時の経過とともに少しずつ保険料が上がるわけではありません。

1年間なり5年間なり10年間なりの保険期間の間は、保険料は一定です。

保険期間が終わって契約を更新するときに、保険料が上がります。

ですから、終身医療保険と定期医療保険の保険料の関係を図にすると、以下のようなイメージになります。

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かなり高齢まで加入し続けない限り、途中解約すると定期医療保険より損になる

「保険料は一生上がりません」は単なる保険料の先払いです。決して得なシステムではありません。

むしろ若いうちはかなり損なシステムです。

年を取ったときの保険料が安くなるというメリットの裏側に、若いうちは保険料が割高になるというデメリットが隠れているわけです。

終身医療保険に入った場合、若いうちにプールした保険料を使い切るまでは、定期医療保険に入る場合より損になります。

十分に年を取るまでに解約したり、若くして亡くなってしまったりすると、終身医療保険は定期医療保険より損になってしまいます。

「保険料は一生上がりません。」には明らかなデメリットもある

CMなどでは「保険料は一生上がりません。」を素晴らしいことの様にアピールしていますが、実はそんなことはありません。

特に「若い間に終身医療保険を解約すると損をする」のがクセ者です。

保険会社が顧客をつなぎとめるのには都合がいいでしょうけど、我々消費者としては身動きがとりにくくなるだけなので、むしろデメリットです。

このような状態をサンクコストの呪縛といいます。次回にお話します。


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