社会保険である以上、公的医療保険と公的年金には国民全員が原則として強制加入することになっています。
しかし「どの種類の公的医療保険・公的年金に入るのか」は結構ややこしいです。これは教師でも同じです。
特にパートやアルバイトの方が健康保険・厚生年金に加入するかどうかは、ちょっとした働き方の違いで結論が変わってきますので注意が必要です。
サラリーマンがどの保険に加入するかがややこしい
どの保険に加入することになるかをざっくり言うと以下のようになります。
公的医療保険 | 公的年金 | |
---|---|---|
1.正規雇用公務員など | 共済組合 | ※厚生年金 |
2.サラリーマン | 健康保険 | 厚生年金 |
3.自営業者など | 国民健康保険 | 国民年金 |
誰でもわかりますね。
しかし、本当にわかりやすいのは1.3.だけで、2.はとてもややこしいのです。
公務員・私立学校の正規雇用の教職員は共済組合に加入
まず、一番簡単なのが、公立学校の職員を含む公務員や、私立学校の職員が加入する社会保険です。
正規雇用であれば、公的医療保険も公的年金も、共済組合へ加入することになります。
共済組合は職域ごとに設置されていますので、職種に対応した共済組合に加入します。
[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]私はどの共済組合に加入しているの?[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]公立学校の教師で正規雇用だから、公立学校共済組合だよ。[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]正規雇用じゃない場合は違うの?[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]そうだよ。勤務時間などによって、健康保険・厚生年金か、国民健康保険・国民年金に加入することになるよ。[/bubble]
国民健康保険・国民年金に加入するのは「その他」の人たち
次に簡単なのが、国民健康保険・国民年金に加入する人たちです。
以下のような人が国民年金と国民健康保険に加入すると言われます。
- 自営業者
- 無職者
- 健康保険・厚生年金に加入できないパート・アルバイト・派遣の人
これは間違いではないのですが、次のように理解するほうが、国民皆保険が成立した経緯から言っても正しいと思います。
共済組合にも、健康保険・厚生年金にも、強制加入とならない人たちが、国民年金と国民健康保険に加入する
[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]退職するまでは私には関係なさそうね。[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]いやいや夫は国民年金と国民健康保険なんだから関係大アリでしょ。[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]あっ、忘れてた。[/bubble]
強制適用事業所から給料を貰う人は、原則として健康保険と厚生年金に加入
共済組合に加入しない人で、強制適用事業所に勤務して給料を貰う人が、原則として健康保険と厚生年金に加入します。
パートやアルバイトの人には例外もありますのでややこしいです。
強制適用事業所とは
強制適用事業所とは、健康保険と厚生年金への加入が義務付けられる事業所のことです。
健康保険法第三条3、厚生年金保険法第六条によって、強制適用事業所は以下のように定められています。
- 国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所
- 従業員が常時5人以上いる個人事業の事業所で、農林水産業、理美容業(エステ含む)、ホテル業・飲食業、士業、映画・演劇その他の興行事業、宗教事業 等に該当しないもの
正社員は強制加入
強制適用事業所に勤務している人のうち、正規雇用されて給料を貰う人は、健康保険と厚生年金に強制加入となります。
強制加入対象者には年齢制限があり、健康保険は75歳未満、厚生年金は70歳未満です。
一般企業の正社員だけではなく、正規雇用ではない公立学校常勤講師も、健康保険と厚生年金に強制加入です。
法人の役員や社長も、給料を貰っているわけですから、強制加入です。
ただし「従業員が常時5人以上いる個人事業の事業所」の場合、個人事業主は強制加入の対象ではありません。
個人事業主が得るのは事業所得であって給料ではありません。強制加入の対象ではないどころか、どんなに加入を希望しても入れてもらえません。
個人事業主は国民年金と国民健康保険に入ります。
強制適用事業所に勤務するパートやアルバイトなどの短時間労働者がややこしい
強制適用事業所に勤務する短時間労働者の場合、厚生年金と健康保険に強制加入になるかどうかは、とてもややこしいです。
公立学校の常勤講師・非常勤講師も、一般企業のパートやアルバイトの方と同じ基準で判断されます。
所定労働時間と所定労働日数がともに正社員の3/4以上なら強制加入
[img-link url=”https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20131203.html” title=”健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の資格取得及び配偶者等の手続き|日本年金機構”]
によると、
○パートタイマー・アルバイト等として雇用された場合 パートタイマー等が被保険者の対象になるか否かの判断は、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員の労働日数、労働時間等を基準に判断することとなります。
《判断基準》 次の(ア)及び(イ)のそれぞれに該当する場合は、原則として被保険者とされます。
(ア)労働日数 1か月の所定労働日数が一般社員の概ね4分の3以上である場合
(イ)労働時間 1日又は1週の所定労働時間が一般社員の概ね4分の3以上である場合ただし、この4分の3以上の判断基準は、あくまでも一つの目安であって、これに該当しない人であっても、就労の形態や内容等を総合的に判断した結果、常用的使用関係が認められた場合は被保険者となります。(健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の資格取得及び配偶者等の手続き|日本年金機構)
[bubble speaker=”ウェブシュフ妻” imgurl=”/img/wife.png” type=””]なんか複雑なんですけど[/bubble][bubble speaker=”ウェブシュフ” imgurl=”/img/me.png” type=””]
実は最近もっと複雑になってしまったんだ…[/bubble]
平成28年10月からパートやアルバイトの強制加入対象が拡大
平成28年10月の厚生年金保険法・健康保険法の法律改正で、パートやアルバイトの強制加入対象が変更され、拡大することになりました。
社会保険に加入したかった短時間労働者の方にとっては朗報ですね。
ただ、短時間労働者が強制加入対象であるかどうかの判断はさらにややこしくなりました。
「1日または1週間の所定労働時間が正社員の3/4以上で、一月の所定労働日数が正社員の概ね3/4以上」を満たしていなくても、以下の5条件を全て満たすパートやアルバイトの方は、厚生年金と健康保険に強制加入となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 収入が月額8.8万円(年収106万円)以上であること。
- 1年以上勤続する見込みであること
- 学生ではないこと
- 「1日または1週間の所定労働時間が正社員の3/4以上で、一月の所定労働日数が正社員の3/4以上」である従業員(正社員・役員を含む)が501人以上いる企業に勤務していること
このような条件に落ち着いた経緯などは短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大/厚生労働省年金局/平成26年9月18日に詳しいです。
ややこしすぎますが、ファストフードなどでかなり真面目にアルバイトしている方は、社会保険の強制加入対象になりそうです。
任意適用事業所から給料を貰う人も健康保険・厚生年金に加入
ところで、強制適用事業所以外に勤務する人は、健康保険・厚生年金に加入できないのかと言うと、これがそうとは言い切れません。
以下の2条件を満たす事業所は強制適用事業所ではないのですが、
- 農林水産業、理美容業(エステ含む)、ホテル業・飲食業、士業、映画・演劇その他の興行事業、宗教事業などを営む個人事業所
- 従業員4人以下の事業所
厚生労働大臣の認可を受けて、厚生年金や健康保険に加入することができます。(厚生年金保険法第六条3、健康保険法第三十一条)
このような事業所を任意適用事業所と言います。
具体的な加入手続きは「年金について – 任意適用申請の手続き | 日本年金機構」に詳しいです。
任意適用事業所が厚生年金と健康保険に加入することになった場合、従業員と事業主の健康保険・厚生年金への加入は以下のようになります。
- 個人事業主は加入しない
- 正規雇用の従業員は加入
- 短期雇用の従業員については、強制適用事業所と同じ基準で加入するかどうかが決まる
まとめ
働き方を少し変えるだけで、健康保険や厚生年金に加入するかどうかが変わってきます。
特にパート・アルバイトの人は気をつけたほうが良いと思います。
脚注
※公務員・私立学校の正規雇用の職員は共済組合運営の共済年金に加入しているが、2015年10月から厚生年金に一本化される。一本化後も共済組合員の厚生年金関係の事務は共済組合が行う。↑